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11、酒の神からの依頼


 園辺食堂は、五百円あれば腹一杯メシを食って、たらふく酒も飲める。しかも店主の橘さんは、酒の神に愛されている鬼なので、うまい酒が店に集まっている。


 「三輪殿、これは……うまいですな」

 「そうですね。あ、橘さん、もう一杯酒を下さい」

 「はいよ」

 「わたしも、もう一杯」


 純野さんも、気に入ったようだ。表情はあまり動かないが、雰囲気が柔らかい。


 「ああそうだ、三輪さんにガイラルアッヴァーンさんと純野さんよ。もし、暇があるならちょっと頼まれてくれないか?」

 「何をですか?」

 「解子姫とくこひめからの依頼なんだが、今年の酒米を守るために、台風神サブローの進路を変える手伝いをして欲しいんだ」

 「……台風神サブローって、かなり強くありませんでしたか?」

 「そっちは、解子姫がなんとかするさ。酒と武の神だからな。君らには、くっついてる眷族の二柱を足止めして欲しい」

 「今、二柱って柱で数えましたよね?」

 「はっはっは。まあ、例年は卜部に頼んでるんだが、今年は用事があるみたいでな。悔しがってたよ」

 「なんで悔しがってたんですか?」


 橘さんは、ニヤリと笑った。


 「解子姫は、酒の神だぜ?」

 「うん。わたし達、引き受ける。まかせて」


 純野さんが、勝手に引き受けた。酒に目が眩んだみたいだ。


 「それと、こちらからもしばらく暮らせる位の金も出す。移住してきたばかりで、いろいろかかるだろ?……三輪さんも、どうせオケラだろ?」

 「……ぐむっ」

 「左様ですな。三輪殿、私は引き受けようと思う」


 まあ、仕方ないか。


 「僕は弱いんで、ほぼガイラルアッヴァーンさんと純野さんが、がんばって下さいね」

 「わかりました」

 「うん。まかせなさい」


 周りが超常の戦力だと、僕がいる意味はあまりない気がする。卜部さんの用事が終わったら、少し稽古つけて貰おうかな。


 「三輪さんよ。卜部みたいに何でも拳で言うこと聞かせなくて、いいんだぜ」

 「はあ。まあ、やってみます」



 純野さんを造って利用しようとしてた相手は、また手出ししてきそうだ。信濃に居れば、確かに表立って大兵力を導入はしないだろう。しかし、信濃にもデンキパイロットは多数入り込んでいる。僕が強くなっていた方が、いい筈だ。



 「へえ。三輪さんが、そういう顔しているのは珍しいな。……悪くないぜ。さあ!引き受けてくれた礼だ。解子姫の酒を、飲め!たらふく飲め!」



 解子姫の所へは、三日後に着けばいいとのことなので、うまい酒をたらふく飲んだ。腹ごしらえするだけの筈だったが、遅くまで飲み食いしてしまった。

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