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第7話 日本にチーズがあったのか

塩の健司やマヨネーズの絵美らを倒し、加奈子たちは平穏を取り戻していた。


「なんかすっかり平和になったね」と育美。


「あいつらなんだったのよ。まあ、また来ても倒すだけだけどね」


「そういえばさ、昔日本にチーズっぽいのがあったらしいじゃん」


「えっ? そうなの」


「なんでも蘇(そ)っていうものらしいよ」


「なになに……文武天皇(在位期間:697~707年)の時代に、蘇が作られた最初の記録があるって。平安時代、貴族階級の間で乳製品が広まったが、武士の台頭により廃れたと。なんてもったいない」


「そんな昔なんだ」


「製法が不明であることから完全な復元はできない。延喜式(えんぎしき)や政務運営に関する事例を掲げた、政事要略(せいじようりゃく)によると、蘇を作る方法は、乳を一斗煎じて、一升の蘇が得られる(原料となる乳から1/10の蘇が得られる)としか記載されていない。要は牛乳を煮詰めれば近いのが出来るって事ね」


「でも他になんらかの手が加えられたんじゃないかって書いてあるね」


「どうやら数時間煮詰めるみたいね。ちょっと」と私は外に待機しているスーツを着た男性を呼ぶ。


「蘇が食べたい。作りなさい。とりあえず牛乳1リットルで弱火で煮詰めなさい。ちょくちょくかき混ぜるのよ」


スーツの男性が調理に入る。


「聖徳太子や藤原道長が食べていたかもなんて話がでてるわね」


「それ本当なの?」と育美。


「さあ、あくまで食べていたかもってぐらい。藤原道長は、蘇に蜜をかけて食べる蘇蜜煎(そみつせん)を好んで口にしていたらしいけど」


「まあ、限られた人しか食べられないものだったらしいから、有名人は食べていたかもね」


そんな話をしながら数時間煮詰めると、牛乳が塊になってきた。


それをラップでくるみ、冷蔵庫で冷やした。


「あ~もう。ずいぶん時間がかかるわね」


「あんたなにもやってないじゃん」


「指示したでしょ」


しばらくしてようやく完成した。


「これが蘇というものか」


「なんかチーズっぽい匂いがするね」


私も嗅いでみるが、確かにチーズっぽい。


さっそく切って2人で食べることに。


「なんかちょっと甘い」


「美味しいけど、もう少し味が濃ければ」と育美。


「なら、しょうゆをかけるべきだな」


いきなり、しょうゆ派の北斗がやって来て言った。


「なにあんたやる気?」


「いや今日は挨拶にきただけだ」


「ふん。いつでも相手してあげるわ。チーズこそ最強だもの」


「塩の健司やマヨネーズの絵美を倒したぐらいでいい気になるなよ。今度こそ俺が勝つ」


「あんたたちほんと仲いいよね」と育美。


「「よくない」」


そういうと北斗は去っていった。


なにしに来たんだろ。


「まあ育美、蘇にいろいろ付けて食べましょう。何が合うか研究よ」


「ほいきた。海老なんてどう?」


「甘いものの方がいいと思うけど。いちごジャムとかはちみつとかでも試そう」


「結局これはチーズなの?」


「チーズではないんじゃない。でも日本の昔にあった、乳製品。もしこれが武家社会でも受け入れられ廃れなくて発展していたら、日本の乳製品は……まあ考えてもしかたがないか」

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