第4話 クラスメイトの広志君
授業が終わると、加奈子のクラスに違う制服の女性がやって来た。
「真奈美」
「加奈子、久しぶりね」
真奈美は加奈子の親戚である。
「この前は世話になったわ」
「いいえ。大したことじゃないわ。あなた対決しまくってるんですってね」
「別にしたくてしてるんじゃない。勝手に勝負を挑まれてるだけ」
「1人で対決してるの?」
「そう。うちの学校だと私1人だけだからね」
「そうなの?」と言うと、真奈美は奥の席にいる男子生徒を見る。
「ちょっとそこの君、こっちに来なさい」と真奈美が言う。
呼ばれたのは広志という目立たない男子生徒だ。
「あなたこれ食べなさい」と真奈美がさつまいもの焼き芋を出す。
「えっ、なんで僕が食べなきゃいけないんですか」と広志。
「いいから食べなさい」
「食べれない。僕はさつまいもアレルギーなんで」
「本当に?ではこっちを食べなさい」と真奈美は里芋の煮っころがしを出す。
「うっ」
「どうしたの? 早く」
広志が走って教室を出ようとする。
しかしスーツの男が広志を捕まえた。
「どういうこと?」と私は真奈美に聞く。
「この人からは、じゃがいも派の匂いがするわ」
「広志、まさかあんた」
「違う。僕はじゃがいも派ではない」
「だったらさつまいもと里芋を食べなさい。そしたらこのじゃがいもをあげるわ」と真奈美。
「インカのめざめ!」
「広志なんでじゃがいもの区別がつくの?」と私が聞く。
「しま……たまたまだよ」
「じゃあこれもつけるわ」と真奈美。
「ノーザンルビー!」
広志が屈した。
「あなたじゃがいも派だったのね。なんで隠してたの」と私が聞く。
「僕は目立ってはいけないと思ったんだ。加奈子さんのように試合に巻き込まれたくない」
「隠れ派閥ってわけね。まあ黙っておいてあげるわ」
「ありがとう」
そこへ他校の生徒がやってきた。
「マヨネーズの絵美!」
「チーズの加奈子。あなたに試合を申し込むわ」
「あなた自らやってくるとは」
「試合はタッグマッチで1品勝負よ。わかりやすいでしょ」
「タッグマッチですって」
「3時間後体育館で勝負よ」
「わかったわ」
マヨネーズの絵美と男子生徒が出ていく。
タッグマッチかあ。
「広志、一緒に戦うわよ」
「さっき黙っててあげるって言ったじゃないですかあ」
3時間後満員の体育館で試合が行われる。
「これよりタッグマッチが行われます。そして1品対決です」
会場が大いに盛り上がる。
「チーズ・じゃがいも対マヨネーズ・アスパラガスです」
「すごい対決だ」
「この勝負はわからないわ」
会場がどよめく。
3人の審査員が席に座り勝負が開始した。
「まずはマヨネーズの万能さを見せてあげるわ。使うアスパラガスはハイパーウェルカムよ」
会場がざわつく。
「チーズは最強だってことを証明してみせるわ。使うじゃがいもはキタアカリ」
「キタアカリだって? 男爵やメークインじゃないんだ」と会場の声。
茹でたアスパラガスにマヨネーズを、焼いたじゃがいもにチーズを。
両者がにらみあったままだ。
「審査員、教頭の和雄の結論はチーズ。とろりと溶けたチーズとじゃがいもの相性がすごい」
「審査員、校長の誠之助の結論はチーズ。同じくチーズとじゃがいもの見事なハーモニーだ」
「審査員、真奈美の結論はチーズ。満足感が違うわ」
「3対0でチーズの勝ち」と司会者。
マヨネーズの絵美が呆然としている。
「ちくしょう。こんなのは認めない」
「ふっ。マヨネーズが万能なのは認めるわ。でも1点特化ならチーズに勝てるわけがない」
2人が走って退場した。
「広志、よくやったわね」
「僕が望むのは平穏です」
「なあにまた勝負になったら頼むわね」
◆◆◆
「なに、マヨネーズの絵美が負けただと? あの面汚しが。俺が行くしかないな」
塩の健司が乗り込むのを決めた。




