第3話 7500年前
私はチーズの本を読んでいると、育美が海老マヨネーズを食べながら聞いてくる。
「最近どうしたの? 本とか読んじゃって」
「ちょっとね。色々影響を受けてね」
「まあ勉強するのはいいことよ」
「なんか紀元前6000年ごろには、もうチーズが作られていたらしいよ。それに紀元前5500年ごろのポーランドで、穴の開いた土器が見つかってね。調べたら乳製品由来の脂肪が残っていて、チーズ作りに使ったんじゃないかって。だって」
「へえ。どんなの?」
「ポーランド中北部のクヤヴィ地方で、こし器のような土器に乳脂肪の痕跡があったんだって。チーズ作りの証拠としては、世界最古級なんだって」
「土器?」
「素焼きのボウルに小さな穴をたくさん開けたものみたいよ」
「なるほど。それで水分を抜くんだ」
「ちょっと」と私は部室の外にいる人を呼ぶ。
スーツの男性がやってきた。
「これが欲しい。作りなさい」と私は命じる。
「1~2週間かかります」とスーツの男性。
「そんなにかかるの? 1週間でなんとかしなさい」
1週間後、古式の土器らしきものが出来上がった。
その土器で作られた乳製品が、牛乳なのか羊乳なのか山羊乳なのかまでは、はっきりわかっていない。
なので普通に牛乳で作ってみることに。
牛乳を適温にし、レンネットを入れ、固まったら切る。
固まった牛乳を、穴あき土器に入れる。
重力によって、乳清が穴から流れ出る。
一方、固まりは土器の中に残る。
そのまましばらく水分を抜く。
しばらくすると、フレッシュチーズが完成だ。
「おお、出来た出来た」
「そりゃ出来るでしょ」と育美。
「美味しいね」
「そりゃ4時間以上かけて作ったからね」
◆◆◆
一方、マヨネーズの絵美と塩の健司は、いら立っていた。
「トマトの由衣は、なぜ報告に来ない」と絵美。
「負けたから俺たちの元に来れないんだろ」
「ご報告申し上げます。試合後、加奈子が由衣を勧誘していました」とアスパラガスの信二。
「なんだって」と絵美。
「加奈子め」と健司。
「では私が行くしかないだろう。加奈子に恐怖を与えてやる。信二、付いてきな」
「はい」
2人が加奈子の元へ向かった。




