第10話 図星
テレビの前に座り、コントローラーを手に握る。
画面ではキャラクターがダンジョン内で、派手な戦闘を繰り広げていた。
でも、俺も凪葉も、どこか上の空だった。
「……あ」
俺のキャラが、雑魚のゴブリンに負ける。
「……遥斗、弱い」
「うるせー」
「…………」
少し、沈黙が流れる。
「──でも、妊娠してなくてよかったな? ちゃんとゴムしてるとはいえ、ちょっと俺も不安だったし」
間を埋めるように、何気なく言ったひとこと。
「……あのさ、遥斗」
「ん?」
凪葉は、画面を見たまま言った。
「……エッチできないあたしと一緒にいても……やっぱり楽しくない?」
「え」
思わず凪葉を見る。
凪葉はコントローラーに視線を落としていた。
「なんでそうなる」
「だって」
凪葉は、少し困ったように笑う。
「最近、遥斗、あたしとエッチすることばっか考えてるじゃん」
「…………」
あまりに図星だった。
「あたしが先に誘ったのは悪かったけど……」
言葉に詰まる凪葉。
少しの沈黙。
それから凪葉は、小さく言った。
「……ごめん。あたし、もう今日は帰る」
「送るよ……」
「今日はいいよ。──またね」
俺の顔を見ないまま、凪葉は部屋を出ていった。
ドアが静かに閉まる。
部屋には、ゲームの待機画面の音だけが残った。
──それきり。
凪葉は、俺の部屋に来なくなった。




