33. バルーン星人
塔の最上階に閉じ込められ、通信用の腕輪も奪われた俺は、ヴィーに転送で来てもらうことにしたのだが、転送されてきた彼女の姿を見て、俺は言葉を失った。
「お待たせ、アッシュ」
「……」
「あれ? どうしたの?」
「ヴィー、大変だ。転送事故を起こしてるぞ!」
「え? 転送事故? 何か変?」
「明らかに太って見えるぞ!」
「あー、それなら事故じゃないわ。実際に太ったのよ」
「太ったって、一週間でそこまで太れるか?!」
「一週間もあれば簡単よ。体に含まれる空気の量を増やせばいいだけだから」
言っている意味がよくわからないのだが、バルクァン星人は俺たちとは体の作りが違うのだろうか?
「空気が増えているだけだから、体重は増えてないのよ」
「それって、風船が膨らむような感じなのか」
「まあ、そんな感じね」
「バルクァン星人じゃなく、バルーン星人じゃねえかよ!」
「風船星人って……。あれ、もしかしてアッシュたちはできないの?」
「できません」
「そうなの……体の構造が違うのかしら? それにしたって、風船星人はひどいわ」
どうも彼女は、風船星人呼ばわりされるのが大変不本意なようだ。
「それはともかくとして、どうしてそんなに太ったんだ」
「だって、この体型なら王様から好かれることもないでしょ」
「あれ、ヴィーは俺とサラの会話を聞いてなかったのか?」
サラと俺が会話をしていた時に、また、温泉にでも入っていたんだろう。
「王様はデブ専なんだぞ。それじゃあ逆効果だ」
「サラの発言はブラフよ。私たちを油断させるために嘘をついたのよ。だいたい、王様のくせにデブ専なんてありえないでしょ」
「俺にはサラが言っていたことが嘘だとは思えなかったけど」
「偽情報を流すのは諜報の常套手段よ。安易に信じては駄目よ」
まあ、軍人のヴィーがそう言うならそうなのかもしれないが。
「そうなのかな……」
「それにしても彼女、私情を挟まず、任務に誠実で好感が持てるわね」
軍人のヴィーと騎士のサラ、似たような立場で通じるものがあるのだろうか?




