32. 王宮
馬車で揺られること一週間、俺はやっと王都に到着した。
「ほら、アッシュ君、ここが王都だぞ。それで、あそこに見えるのが王宮だ。凄いだろう、その中でもあの一際高いのがこの国で一番高い塔だ」
「サラ、そんなことより腹が減ったぞ。何か王都名物の美味いもんでも食べようぜ」
一週間も馬車の旅を一緒に過ごしたため、女騎士のサラとはだいぶ打ち解けた。
「まったく、お前という奴は、花より団子かよ。男の子なら背の高い建物など好きだろうと思ったのに」
まあ、普通なら感動するかもしれないが、前世の高層ビルに比べればまだまだだからな。
「安心しろ、王宮ではご馳走三昧だぞ」
「へー、俺ももてなしてもらえるんだ」
「ああ、特別室を用意したから期待していろよ」
特別室にご馳走三昧か、それは楽しみだ。
だが、呑気に楽しんでいられたのは馬車の中だけだった。
馬車が王宮に入り、そして、横付けされたのは、サラがこの国で一番高いと言っていた塔の前だった。
「サラ、もしかして特別室というのは……」
「そうだ、この塔の最上階だ。さあ登るぞ」
「歩いて登らなければいけないのか?」
「当然だ」
残念ながら、この世界にはエレベーターも、エスカレーターもないらしい。
「はあ、はあ、はあ、やっと着いた。どんな嫌がらせだよ」
「そう言うな、ほら眺めは最高だぞ」
確かに眺めはいいし、部屋に備えられた家具なども派手さはないが高級感がある。
「それで、俺はいつまでここに監禁されるんだ」
「……話が早くて助かるよ。とりあえず、エルフ殿の国王陛下への謁見が済むまでだな」
とりあえずということは、謁見の結果次第では長引く可能性もあるということか。
「ちゃんと食事は出るんだろうな?」
「それは贅沢三昧と約束したからな。約束は守るよ」
「まあ、それならいいけどな」
「それじゃあ、すまないが、腕輪を渡してくれるかな?」
「腕輪を? 今更逃げたりしないぞ」
俺は腕輪を外してサラに渡した。
「すまないな。これも仕事なんだ」
「いいって」
サラは扉に鍵をかけて塔を降りていった。
「ヴィー、見てるか? 腕輪を持っていかれちゃったからこっちに来てくれ」
俺は、多分その辺を飛んでいる護衛用ドローンをとおして、こちらを見ているヴィーに話しかけた。知らない人が見れば、盛大に独り言を言う、ただの怪しい人だ。
少し待つと、光の粒がどこからともなく集まってヴィーが転送されてきた。
しかし、俺はそのヴィーの姿を見て絶句した。




