31. 馬車
パッカラ、パッカラ!
俺は女騎士と王宮に向かう馬車に乗っていた。
なぜこんなことになっているかというと、簡単にいえば俺はヴィーを王様に会わせるための人質だ。
王様からの褒美という名の要求をヴィーは丁重に断ったのだが、それで許してくれるほど女騎士は甘くなかった。
ヴィーが申し出を断ると、彼女はスッと片手を上げた。それに合わせて兵士が武器を構え俺たちに突きつけた。
「エルフ殿、それは国王陛下に対する不敬ですぞ」
ヴィーの答え次第では俺たちを殺す事を辞さない構えだ。
まあ、いざとなれば転送で逃げる事は可能なのだが、それをすれば、この国に住めなくなってしまう。俺だけならともかく、家族全員となるとその選択肢を取ることができない。
「ヴィー、王様が折角くれるというのだから、もらっといたほうがいいんじゃないかな。あははは」
『アッシュがそういうなら、そうしようかしら、仕方ないわね』
「謹んでお受けします。だそうです」
「それはよかった。賢明な判断だな」
女騎士がゆっくりと手を下ろすと兵士たちは構えを解いた。
ふー。危機一髪大逆転といった感じだ。だが、まだ油断はできない。
「ところで、エルフ殿は王宮へ転移できるだろうか?」
『可能だと思いますが』
「ならば王宮へ直接転移していただこうか、こちらから馬車で移動するよりはよかろう」
確かに、ヴィーが転移できるようになるのを待ってから、ここを出発するよりは、はるかに効率がいい。
王都まで馬車で一週間はかかるらしいから、その間、時間も稼げる。
『わかったわ、そうします』
「それでは我々はこれで戻るとしよう」
問題を先送りした感はあるが、なんとかこの場は収まった。
「ああ、それとエルフ殿との連絡役として、アッシュ君は我々と一緒に来てくれ」
「え! 俺?」
「君以外、連絡が取れないのだろう?」
確かに彼女がいう事はもっともなのだが、もっともな理由をつけて人質にされたとしか思えない。
そんなわけで、王宮へ向かう馬車に乗っているのだが、女騎士と二人っきりというのはなんとも気まずい。
「先程は手荒な真似をしてすまなかったな」
気まずい雰囲気が続くなか、突然女騎士が俺に頭を下げた。
俺が面食らっていると、彼女はなおも続けた。
「兵士たちの手前、甘い対応はできなかったんだ」
「まあ、騎士様の立場なら仕方がなかったのでしょうね」
本来、彼女の立場なら俺に頭を下げる必要などないわけだから、謝ってくれたということだけでも、彼女はそれほど悪い人ではないのかもしれない。
「そういえば、まだ名乗っていなかったな、私はサラだ。サラ・フォーティン。女性近衛隊に所属している」
「女性の近衛隊があるんですね」
「女性の王族は、男性では警護できない場面も多いからな」
「女性の王族って、そんなにいらっしゃるんですか?」
「王族は男性より女性の方が多いぞ(国王陛下のせいで)」
今、空耳が聞こえたような気がするが、案の定王様は女好きで、どんどん后を増やしているということなのだろう。
「だが、まあ、今回は大丈夫だろう」
「なにが大丈夫なんですか?」
「村で聞いた話によるとエルフ殿はかなり美人だが、スレンダーな体型をしているそうじゃないか」
ヴィーは、胸はそれなりにあるが、全体的にみれば、エルフらしい細っそりとした体型だ。
まあ、本当はエルフでなく宇宙人《バルクァン星人》なんだけど。
「国王陛下は、どちらかといえば豊満な女性を好まれる」
王様はデブ専ということか、ならばヴィーが王様に好かれることはないだろう。




