29. 村長2
「クソッ! ガイのノロマめ!」
折角うまく盗賊たちを誘い出したのに、ガイのノロマが来る前に、美味しいところを全てあの女に持って行かれてしまった。
本当なら、あの女が盗賊に捕まって、そこに現れたガイが情けなく盗賊に痛めつけられ、女がガイに幻滅したところで、わしが颯爽と盗賊を成敗し人質と女を救い、女は俺に惚れ村人どもはわしに感謝する計画だったのに。
全て水の泡だ。
逆に、盗賊と通じていたんじゃないかと疑いの目を向けられる始末だ。
「お父様!」
「なんだイザベラか。部屋に入るときはノックくらいしなさい」
「それについてはすみません。以後気をつけます。ですが私はお父様に文句を言いに来たのですわ」
「文句?」
「お父様に任せておいたのに、あの女の人気がますます上がったではないですか。しかも、悪魔でなくエルフだったなんて、悪魔だと言いふらしていた私の信用はガタ落ちです。どうしてくれるんですか」
別にわしがあの女を悪魔だと言い出したわけではないのだが。
「あの女がエルフだったのは、わしとしても想定外だったからな」
「とにかく、あの女をこの村から追い出してくださいね」
「ああ、わかった、なんとかしてやる」
「そうですか。それでは私はこれで失礼しますね」
イザベラはわしから言質を取ると、そのまま部屋を出ていってしまった。
まったく、あの女のせいでイザベラにまで文句を言われてしまったではないか!
どうにかしてやりたいところだが、相手がエルフではな。あの魔法を使われたら、国の軍隊でもないと太刀打ちできないだろう。
国……。そうだ、村から追い出せればいいなら国に押しつけてしまえばいいではないか。盗賊討伐の功績で表彰されるからと、王都に送り出してしまえばいい。国王も珍しいエルフなら喜ばれることだろう。




