27. バルツァン
「そうですか。この耳を見られてしまったなら仕方がありません。もう、何も隠す必要はありませんね」
「なんだ、何言ってやがる?」
ヴィーが凄んだので盗賊も少し警戒したようだ。
「盗賊ども覚悟しなさい!」
ヴィーは盗賊の手を振り払うと、両手を上げ叫んだ。
「カモン! バルツァン!」
バルツァン? 彼女はバルクァン星人だったはず。聞き間違いだろうか? それとも本当はバルツァン星人なのか?
疑問は、十分の一秒後に解決した。ゼロコンマ一秒の早技で、彼女の全身は鎧? で覆われたのだ。
その姿はまるでザリガニ。それともセミだろうか。両手は巨大な鋏状となっていて、それをダブルピースサインのように上げていた。
「フォッフォッフォッフォッ」
うん、まるでどこぞの宇宙忍者だ。
「なんだ?! この化け物!」
盗賊が腰の剣を抜き彼女に斬りかかる。
「危ない!」
俺が叫んだ時には、盗賊が振り下ろした剣は彼女を斬り裂いていた……ように見えた。
「フォッフォッフォッフォッ影分身」
斬られたと思われた彼女の姿は消え、すぐ傍に姿を現した。
幻影魔法! いや忍法か? ん? 忍法?
「なんだと?!」
盗賊は何が起きたかわからず、一歩引いて様子を窺っている。
「フォッフォッフォッフォッ転送」
盗賊に捕まっていたシスターと子どもたちが光に包まれ姿を消した。
転移魔法! ああ、転送ね。転送。
「どこに行きやがった!」
人質が消えて盗賊たちは右往左往している。
だが、それは村人も一緒だった。
「子どもたちが消えたぞ?!」
「心配ないさ。子どもたちなら彼女が転移させただけだ」
「転移? 魔法なのか?」
そう、そう、魔法に見えるよな。
「父ちゃん!」
「ママ!」
子どもたちの声が、村人の後ろの少し離れた場所から聞こえてきた。
「サク坊!」
「ルル!」
子どもの親たちは声のする方に振り返り、子どもたちのもとへ走っていった。
「クソッ!」
「フォッフォッフォッフォッ光輪スラッシュ!」
盗賊が動揺しているうちに畳み掛けるように彼女の攻撃は続いた。
彼女が振り下ろした右手から放たれた光の輪は、空中で幾つにも分かれ、盗賊の武器を次々と切断していった。
ほ! 盗賊が八つ裂きにされた血みどろの地獄絵図にならなくてよかった。そんな光景見たくもない。
それにしても、あれは自分が縦割にされた技じゃないのか!
というか、これは光魔法ではないとしても、光線兵器だよな。まさか丸鋸の刃が光っているだけの物理兵器じゃないよな。
「な!」
武器を破壊された盗賊たちはかなりのショックを受けているようだ。このまま投降してくれればよいが。
だが、そう簡単にはいかなかったようだ。
「野郎ども、相手は一人だ。全員で飛びかかれ!」
あーあ、悪あがきをしなければ痛い思いをしなくて済むのに。
「フォッフォッフォッフォッ火炎弾」
彼女は両手を盗賊の方に向けると、その鋏の間から火のついた無数の石礫を発射した。
「あ痛たたた! あ熱ちちち!」
彼女の立て続けの攻撃により、盗賊は完膚なきまでに叩きのめされ、村人によって拘束された。
「クソッ! 村長! 話が違うじゃないか!」
「なんのことだ?」
「貴様が、その女と引き換えに、ガイって奴を痛い目に合わせろと持ちかけてきたんだろ!」
「そんな事実はないな」
村長と盗賊の言い分は真っ向から対立しているようだ。
「本当にないのか?」
「あるわけないだろう。所詮、悪党どもの戯言だ。誰だわしを疑っているのわ!」
「俺だが」
「クッ! ガイじゃないか、なんだ今頃現れやがって、もっと早く来い!」
「これでも走ってきたんだがな。それで、俺はなんで呼ばれたんだ?」
「そんなの知るか!」
そもそも父と盗賊は接点がない。盗賊の証言が嘘だとすると、盗賊が父を呼び出した理由がわからない。
そうなると村長が怪しく思えるのだが、村長が盗賊と取引したという証拠はどこにもない。
「ヴィー、どうにかならないか」
「嘘発見器ならあるけど、この世界では認知されていないから、本人に否定されたら水掛け論になるだけね」
彼女は装着していたバルツァンを転送で送り返し、今は普段の格好だ。
「そうか、なら仕方ないな」
「あー、でも村長が盗賊に会いに行ったかどうかならわかるかも」
「そんな方法があるなら試してくれないか」
「いいわよ。じゃあ一緒にいきましょう宇宙へ」
「え? 宇宙へ?」




