26. 盗賊
いつものようにヴィーと村で買い物をしていると、教会の方から男が叫びながら走ってきた。あの男は村長の下働きのビリーさんだったか。
「大変だ! 教会に盗賊が!」
教会に盗賊? あの教会に金目のものなどあっただろうか?
「シスターと子どもたちが人質にされている!」
なるほど、人質を取ることが目的で教会を襲ったのか。そういえば、今日は日曜日で、教会には日曜学校に来た子どもたちがたくさんいただろう。俺はヴィーが一緒に暮らすようになってからは、教会の日曜学校にはいっていないので難を逃れることができている。
「村長が今、子どもたちを解放するよう交渉しているのだが、盗賊は子どもたちの解放の条件として代わりにヴィーさんとガイさんを要求している」
「え? 私?」
盗賊たちは美人な彼女に目をつけたのか。この心配があったから、始めは彼女のことを誰にも秘密にしていたのだが、それは彼女に寂しい思いをさせることになった。
このまま寂しい思いをさせるよりはと、リスクを承知で彼女とみんなの交流をすすめたのだ、だから、これは想定内だ。
「わかりました。私が教会に行きます」
臆することなく彼女は急ぎ教会に歩き出した。
盗賊の目的は彼女を傷つけることではないはずだ。それなら彼女は盗賊に拘束されても転送ですぐに逃げられる。
わからないのは盗賊たちがなぜ父のガイを連れてくるように言ったかだ。
まあ、危なくなったら父も転送してもらえばいいか。
教会に着くと、村長を始めとする村人たちと、シスターと子どもたちを人質に取った盗賊たちが、教会の前で対峙していた。
「あなたたちすぐにシスターと子どもたちを解放しなさい。目的は私なんでしょ!」
「おお! これは話に聞いていた以上の上玉じゃねえか。何言ってるかわかんねえけど、とりあえず、お前はこっちに来い。子どもたちの解放は男の方が来てからだ」
盗賊どもの中央にいた親玉だと思われる男が、彼女を値踏みしながら手でこっちに来いと指図した。
「お前たち、父さんに何をする気だ!」
「まあ、頼まれたんでな、ちょっと痛い目を見てもらうだけだ」
「頼まれたって、誰にだ?!」
盗賊たちがチラリと村長の方を見ると、村長は少し慌てた様子だ。まさか、村長が頼んだわけではないだろうな?
「そんなこと言えるわけねえだろう! いいからお前はこっちに来い!」
「やめてください! あ!」
盗賊が彼女を無理矢理連れていこうとしたため、彼女が抵抗し、その拍子に彼女の帽子が地面に落ちた。
「え?!」
そこにいた全員が、彼女の長く尖った耳を見て息を呑んだ。
「おいおい、エルフだと! これは、とんでもないものが出てきやがったぜ」
「えーと、彼女はエルフではありません」
「何言ってやがる。その耳を見りゃ一目瞭然だろ」
うん、うん、と頷く一同。でもね違うんだな。
俺が言っていることは本当で、彼女はエルフでなく宇宙人《バルクァン星人》なのだから。




