23. 村で
ヴィーと一緒に暮らし始めて3か月が経った。彼女はもうすっかり家族の一員だ。
耳が隠れる帽子も用意して、エルフ……じゃなく宇宙人《バルクァン星人》であることを隠し、村を出歩くようにもなった。美人の彼女はあっという間に村でも人気者だ。
まあ、中には彼女のことを気に入らない者もいるようだが。
「ちょっとそこのあなた! 余所者のくせに村で大きな顔をしないで!」
村でヴィーと買い物をしていたら、彼女にいちゃもんをつける奴が現れた。村長の娘イザベラだ。
「え? 別に顔は大きくありませんが?」
「確かにヴィーは小顔だな」
「そんなこと言ってないでしょ!! 言葉も通じないなんて、だから余所者は駄目なのよ!」
「他所から来たってだけで邪険にする方が駄目だと思うが」
「うっ! だいたい、なんでアッシュはその人をかばうのよ?!」
「そりゃあ一緒に住んでいて、もう夫婦みたいなもんだし」
「家族でしょ! 夫婦は言い過ぎよ」
「えー、でも、あれだけベタベタしていたらもう夫婦でいいんじゃ?」
「ベタベタしてない! ちょっと可愛がっているだけじゃない!」
「もういいわ! 二人はそういう関係なのね。よくわかったわ」
そう、そのとおり。……って、そういう関係って、どういう関係だ? ヴィーの言っていることがわからないイザベラは何か誤解してないだろうな。
「ふん! いい気になっているのも今のうちだけよ。あんたたちなんか、もうすぐ酷い目に遭うんだからね!」
イザベラは負けた悪役のようにそう言い残すと走り去っていった。
「なんだったのですか?」
「ヴィーが美人だからやっかんでいるだけだろ」
「そんな、美人だからなんて、当然のことなのに……」
彼女が美人なのは彼女にとって当然のことであるらしい。結構ナルシストなのか?
そんなことより、イザベラの捨て台詞が少し気になるが、イザベラが俺たちに危害を加えることはできないだろう。なにせ、ステルスモードの護衛用ドローンが、常にヴィーの頭上を旋回しているのだからな。
そんなことがあった数日後、俺とヴィーはまた村に来ていた。いつものように買い物をしていたのだが、どうも何か違和感がある。
「ヴィー、いつもより俺たちを見る視線が多くないか?」
「特にお化粧も衣装も変えてないし、いつもどおり美人だけど?」
彼女がなにも感じないなら俺の思い過ごしかと思ったら、そこに嫌がるイザベラを引きずるように連れたシスターアリアが現れた。
「ほら、イザベラさん、ヴィーさんに謝りなさい」
シスターが嫌がるイザベラを無理矢理前面に押し出した。
「私は悪くないもん!」
イザベラは謝るどころかそっぽを向いてしまった。
「シスターアリア、ヴィーがイザベラに謝らなければならない理由がわからないのだが、彼女はなにをしたんだ?」
あるとすれば、前回いちゃもんをつけてきたくらいだが、そんなことでシスターが出張ってくるとは思えないが。
「私はこの悪魔に取り憑かれたアッシュや、騙されている村人の目を覚まさせようとしただけよ!」
イザベラはヴィーを指差し、彼女が悪魔だと断罪した。きっと、俺たちがくる前に村中に言いふらしていたのだろう。そのせいで村人の視線を集めていたわけか。
「この子はまた! 悪魔なんていないと言っているでしょ!」
シスターにしては珍しく強い口調だ。きっと、教会にとって悪魔は、存在そのものを否定するほどの禁忌なのだろう。
「だって、ルルがそいつは普通の人間じゃないって言ってたし」
ルルはヴィーがエルフだと知っている。まあ、本当は宇宙人《バルクァン星人》だが。エルフのことは他の人には黙っていようと約束したのにイザベラに喋ったのか! だが、よくよく考えると俺も家族に喋っているから、約束を破ったのは俺が先か。
「それに、村が滅ぶかもしれないのはそいつのせいだから!」
おいおい、ヴィーが悪魔で、村を滅ぼそうとしてるって? いったいどうしてそんなことを思ったのやら。




