20. シルバニヤ
「アッシュちゃんお帰り!」
ママがいつものように、外から帰ってきたアッシュお兄ちゃんに勢いよく抱きついたの。
「うあ! マヤさん、お帰りの挨拶で抱きつくのはやめろってば」
アッシュお兄ちゃんはやめてと言う割には嬉しそうなの。
まったく、二人でイチャイチャしちゃって、私はおかんむりなの。
「あ、シヤ、ただいま」
「……」
だから、アッシュお兄ちゃんが話しかけてきても無視しちゃうの。
本当は、私がアッシュお兄ちゃんとイチャイチャしたいのに、それはいけないことなんだって。そう、お婆ちゃんが言ってたの。
なんでも、お婆ちゃんはママの教育に失敗して、それを悔やんでいたの。子どもにはまだ早いと、男との付き合い方を教えてこなかったことを。
だから、その分シヤには小さいうちから教えてくれるんだって。
でも、だからって、アッシュお兄ちゃんと仲良くなり過ぎちゃいけないって、ひどいと思うの。だいち、ママは、いつもアッシュお兄ちゃんとイチャイチャしているのに。
「シヤちゃんのママはね、あの、ど腐れと別れればアッシュ君と結婚できるの。でもね。シヤちゃんとアッシュ君は何があっても結婚できないのよ。だから、アッシュ君と仲良くし過ぎちゃ駄目なのよ」
「なんでママはよくて、シヤはダメなの?」
「それはね、マヤとアッシュ君は本当の親子じゃないからよ。でも、シヤちゃんとアッシュ君は本当の兄妹でしょ」
わけわからないの、本当の兄妹だと結婚できないなんて。
ママだけアッシュお兄ちゃんとイチャイチャして、結婚もできるなんて。私もアッシュお兄ちゃんとイチャイチャして、結婚したいのに。ずるいと思うの。
ちなみに、「ど腐れ」というのはパパのことで、お婆ちゃんはいつもパパをそう呼ぶの。
そのアッシュお兄ちゃんなんだけど、最近ちょっと様子が変なの。
今まで、教会の日曜学校のある日は、めんどくさそうにしてたのに、今はうかれているの。
隣のルルちゃんとの仲が進展したのかと思ったけど、ルルちゃんの様子を見る限りそれはなさそうなの。ルルちゃんのアッシュお兄ちゃんを見る目は冷え切っていて、むしろ、グレイに熱い視線を向けていたの。
それならイザベラちゃんと付き合い始めたのかと思ったら、それも違ったの。イザベラちゃんは相変わらず喧嘩腰で、アッシュお兄ちゃんに突っかかっていたし、アッシュお兄ちゃんもうっとうしそうにしていたの。だいたい、お尻を叩かれて喜ぶ人を義姉と呼びたくないから、二人が付き合っていなくてよかったの。
それなら、アッシュお兄ちゃんは、なんでうかれているんだろうと思っていたら、その答えは、シヤが熱を出して寝込んだらわかったの。
シヤが病気で苦しんでいたら、アッシュお兄ちゃんが、美人なエルフのお姉さんを連れてきてくれて、そのお姉さんが、治癒魔法でシヤの病気を治してくれたの。
どうやら、アッシュお兄ちゃんは、教会の日曜学校に行くふりをして、エルフのお姉さんと会っていたようなの。あれだけの美人なら浮かれる気持ちもわかるの。
お尻を叩かれて喜ぶような人とは雲泥の差なの。エルフのお姉さんなら義姉と呼んでもいいと思えるの。




