17. 隠れ場所
「それでどうかしら?」
「なにが?」
ヴィーに尋ねられたが、なんのことだかすぐに出てこない。
「アマデウスを隠せる場所よ」
ああ、そうだった。そういう話をしていたんだった。脱線して他の話に夢中になり過ぎて、本題を忘れていた。
しかし、この巨体を隠せる場所となるとかなり限られてくるな。その辺の洞窟ではとても入れそうにない。
「そうだ、近くに湖があるんだが、湖の中なんてどうだ」
宇宙船なら水中でも大丈夫だろう。
「そこは一度候補にあげたんだけど、思いのほか水深が浅いのよ。アマデウスだと船体上部が水面から出てしまうわ」
首や尻尾は隠れても、背中の部分がポッコリ出てしまう感じか。
「湖の真ん中に急に島ができたらまずいよな」
「そりゃそうよ」
あそこはナカ湖だからナッシーと呼ばれそうだな。そういえば、この語尾の「シー」ってなにを意味しているんだろう?
「ねえ、ちゃんと考えている?」
「あ、いや、なら、海はどうだ?」
俺は行ったことがないが、この星にも海はあるらしい。シー繋がりで咄嗟に海と言ってしまったが、悪くないのではないだろうか。
「海は、ちょっと距離が遠過ぎるわ。見通し距離なら数百キロはいけるけど、途中に障害物があるなら、転送できるのはせいぜい数十キロよ」
そういった制限もあるのか。
「そうなると他の場所で、この巨体を隠せる場所となると……」
俺は頭を悩ませたが、すぐには適当な場所が思い当たらない。
「別に船体を隠せなくても、人が来ない場所なら構わないわよ」
「人が来ない場所か……」
魔の森とかあればな……、というか、異世界なのになんでないんだよ! 普通定番だろう。
まあ、ここで怒っても仕方がないよな。あ、怒るで思いついた。
「火山があるんだが、そこはどうだろう?」
火山って、怒っているイメージだよな。
「え? 火口の溶岩の中は勘弁してよ。溶けはしないだろうけど、長くいると傷みそうだわ」
「いや、火口の中じゃなく、その周辺は有毒ガスが発生するから誰も近づかないんだ」
たとえ有毒ガスが発生していても、気密の高い宇宙船の中にいれば問題ないだろう。
「それはいいかも。一度行ってみましょう。アマデウス、地図を出して」
ドームに、表示されていたアマデウスの3D外観図の代わりに、周辺の地図が表示された。俺はそれを確認し、今言った火山の位置を指し示した。
「この辺だな」
「アマデウス、そこに向かって」
地図上に表示された緑の印が、火山に向けて移動し始めた。この速度ならあっという間に到着するだろう。
「今、どれ位の高さを飛んでいるんだ?」
ブリッジには窓がないので、外の様子がまるでわからない。
「ええと高度は五キロ位だね。外の様子を見る?」
彼女は手元の端末を確認しそう答えた。
「見てみたいな」
俺がそう答えると、今までただの壁だったドーム全体に外の様子が映し出された。
「おお、これは! 浮遊感が凄いな。まるでシートだけで空を飛んでいるようだ」
「気分が悪くなるようなら言ってね。慣れないと酔う人がいるのよ」
「ああ、そうだろうな。俺は大丈夫だが」
高所恐怖症の人には、とても耐えられないだろう。
程なくして目的の場所に到着すると、彼女は端末を操作して、眼下の様子をドームに映し出した。
「有毒ガスが発生していると言われたけど、植物が枯れている様子はないわね」
「近づくと硫黄臭いだけで、そこまで濃度は濃くないんじゃないか」
「これなら、船体が腐蝕する心配もなさそうね」
「着陸するのに、あの岩影なんかどうだ」
「万が一、人が来ても岩が邪魔になって見つかり難そうね。アマデウス、あそこに着陸して」
ブリッジのドームに映された眼下の景色が、段々と迫ってきて、より詳細に様子がわかるようになってくる。
「あら!」
「どうかしたのか?」
降下の様子を見ていた彼女が突然声を上げた。なにがあったのだろう?




