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世界は君を忘れている  作者: 赤座翔
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第四章 世界はまた繰り返す①

「ただいま」

 家に帰ると、珍しく母さんが早く家に帰っていて、夕食の用意をしているところだった。カレーのいい匂いが部屋中に漂っている。

「龍馬、あんたあてに手紙が来てたわよ。部屋に置いといたから」

 俺は自分の部屋に戻ると、机の上に置いてある白い紙を手に取った。

 送り主の名前を見たとき、虫唾が走った。成瀬一樹。俺の親友、だったはずの男だ。その存在は、なぜか高月千里とともに俺の記憶から消えていた。そして、彼女を思い出すと同時に彼のことも思い出した。

 書かれている内容は、8時に屋上で待つ、たったそれだけ。

 時計を見ると、7時20分を回ったところだった。今から行けば間に合う。俺は靴を履くと、急いで玄関を飛び出した。

 記憶を取り戻した時は、千里のことで頭がいっぱいで、深くは考えていなかった。そして、零から話を聞いたとき、一樹のついての一つの仮説が頭の中に浮かんだ。一樹が、神なんじゃないかという仮説。考えてみれば、俺が直接千里のことを話したのは一樹だけだった。ほかにも、思い当たる節はいくつかある。何より、俺の一樹についての記憶が消えていて、学校から存在を消しているのが何よりの証拠だ。

 ただ。信じられなかった。信じたくなかった。親友が、俺を裏切って千里を殺すなんて。だから、これから確かめることにした。彼が今でも俺の親友なのか。

 決意を胸に、夜の学校へと侵入した。門は当然施錠されているが、乗り越えようと思えば簡単に入ることができる。

 俺は階段を駆け上がった。腕時計を見ると、7時58分をさしていた。ギリギリの時間だ。

ドアを開けると、そこには一樹の姿があった。

「久しぶり」

 重苦しい空気の中一樹が口を開いたが、とても返事をする気にはなれない。

「単刀直入に聞く。お前が、千里を殺したのか?」

「それは実に答えづらい質問だ。直接僕が殺したわけじゃない。でも、僕のせいで殺されたともいえる」

「どういうことだ?」

「僕はメシアの人間だ。当時メシアは今のように能力者集団ではなく、一種の環境保護団体のようなものだった。そして、組織はある時偶然神の存在を知ったらしい。組織は神を血眼になって探していた。そんな時に偶然現れたのが、高月千里だった」

 彼は淡々と答えた。俺はこみ上げる怒りを必死に抑え込み、聞いた。

「それでお前が組織に千里のことををばらしたのか?」

「ああ。だが、殺すなんて話は聞いていなかった。ただ、利用するだけだと思ってたんだ」

「でも結果的にお前がしゃべったから千里は殺されたんだろ? ならお前も同罪だ」

「そうとらえられても仕方ないな。よし、そろそろ本題に入ろう」

「ちょっと待て、ふざけんな。お前は、絶対許さねえ」

 我慢は限界だった。怒りのまま、こぶしを振り上げた。その突きは確かに一樹の顔面をとらえていた。が、気付いた時にはすり抜け、俺はバランスを崩し倒れこんだ。

「何をした?」

「僕も当然能力を持っている。今のはお前らしくない行為だった」

 俺は立ち上がりもう一度襲い掛かろうとした。だが。

「何度やっても無駄だ」

 一度心を落ち着かせ冷静になり、話を続けた。

「なぜ俺をここに呼んだ」

「親友のよしみで、一つ忠告をしようと思ったんだ。今は敵同士だが、共に過ごした1年は変わらない。どうか、今から言うことを信じてほしい。五日後の午後三時、メシアは大きな行動を起こす。おそらく大量の死者が出ることになるはずだ。そこには絶対に近づくな。お前とは次元が違う戦いになる」

 そういうと、彼は1枚の紙を俺に渡した。

「ここに場所が書いてある。あと、こうやって会うのは最後だ。これからもう親友ではない。敵だ。まあ、言われなくてもわかってるだろうが」

 彼はドアノブに手をかけると、くるっと振り向き、「じゃあな」といって階段を下りて行った。その表情はどこか寂しげだった。

 屋上から見えるのは暗い夜空と明るく光る街。こんな時間にここを訪れるのは初めてだ。

 俺は一樹を信じるべきなのだろうか……、夜空にそう問いかけた。

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