↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくだい!~僕の大学は魔法研究が必修です~  作者: 浅野エミイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/29

第6話

「い、おい……」


「ん……」


「起きろ、黒巣っ!!」


 ゴチンッ!!


「わっ、三蔵!? いってぇ……」


 今度は頭突きかよ、最悪だな。この女は!


「ようやく起きたな。早速だが、一大事だ」


「は?」


 ゆっくり起き上がると、そこには入学式に見たドラゴンよりも大きく、様々な動物の身体が合体したような獣がいた。


「な、なんだよ! これ!!」


「うおー!! グリフォンだ! 初めて見た~!!」


「ぐりふぉん……?」


 興奮する柊に、怯える宇佐美さん。


 ここはどこだ? まだ元の世界は明るかったのに、この世界は真っ暗だ。本当にレベル1のパラレルユニバースムなのか? その割には入学式のときに飛ばされたところより空気が重い。目の前のグリフォンだって、教授たちが倒したドラゴンより強そうなんだが……。


「これと戦うのか?」


「いや、まずはこの世界を知ることが第一だ。ぐりふぉんだかなんだか知らんが、無視しよう」



 三蔵のやつ、大物かよ。このモンスターを無視して異世界研究? 俺たち殺されない?


「あーっ! なんでスマホ置いてきちゃったかなぁ~? グリフォン撮りたかった!!」


 柊、お前もか。写真なんて撮ってる場合じゃなくね? これ見て怖がってる普通の人間は、どうやら宇佐美さんと俺だけのようだ。


「い、移動するなら早く行きましょう! ぐりふぉんさん、こっちをすごい目でにらんでる……」


「グオオオッ!!!」


「…………」


 グリフォンの雄叫びに、俺たち全員固まった。マジかよ! 殺る気満々じゃねーか!!


「お、おい、このままだと俺たち死ぬぞ!」


「そのようだな」


 だからなんでお前はそんな平然としてるんだ、三蔵! 柊も残念そうにしょぼくれているだけだし……。ともかく何とかしねぇと!


「おりゃあっ!!」


「シャアアッ!!」


「いやあぁっ!!」


 俺が落ちていた石を投げつけると、グリフォンはその大きなくちばしでこちらを突く。宇佐美さんが泣きながら俺の胸に飛び込んできて、攻撃をなんとか回避したのはいいが、そのせいで地面に後頭部を打ちつけた。


「どうやらこれは……」


「使うしかないみたいだね! 魔法っ!!」


 ふたりの変人が喜び出した。こんな状況でよく魔法とか言ってられるな。俺たちが魔法を使えるかどうかだって、まだ確実じゃねーってのに。なんてお気楽なんだ。


「じゃあ、ボクから行くよ! こんな時のために、中学高校で呪文を考えてた甲斐があった!」


 だからお前はちゃんと勉強しろよ……。しかもその位置に立たれると、パンツ見えるぞ。


「そうだ、文字数確認しないと! MPに限りがあるんだった。え~っと……1、2、3、4……」


 悠長なことに、両手を広げて呪文の文字数を確認する始末。そうこうしている間に、グリフォンがこちらに飛んでくる。


「危ないっ! 『風よ! 竜巻を起こせ!』」


「グワアッ!!」


 三蔵が呪文を唱えると、見事竜巻が起こる。そのせいで空を飛んでいたグリフォンが少し身体を傾けた。


「やったぞ!!」


「喜んでる場合じゃねえだろ! まだ襲って来るぞ!」


 なんとか宇佐美さんと一緒に立ち上がると、今度は柊が前に出た。


「三蔵サンに負けられないからね! ボクも行くよ! 『炎よ、燃えろ』~!」


 柊が人差し指を突きさして呪文を唱えると、火がポッとつき、一瞬で燃え尽きた。


「あれ?」


「……燃えたな」


 三蔵が真顔で柊の肩を叩く。


「えぇ!? そういうことなの!?」


「MPを無駄にしただけだ。何か触媒になるものがないと意味がない。それか相手に直接攻撃するか」


「難しいな、魔法って」


「楽しく会話してんじゃねーよ! このままだとケガするぞ!」


「ひっ! ケガ!?」


「あ、宇佐美さんはちゃんと守るから」


「何? 黒巣、君は私たちと宇佐美を差別するのか?」


「ひっどー!」


「いや、そういうわけじゃねぇけど……」


 お前らゴキブリ並みに強そうだから、と一瞬思ったが、絶対口に出せない。女の子をゴキブリ扱いは自分でもないと思う。でも生命力はそのくらいありそうだよな。


「ごほん、ともかく私は11、柊は7MPを使った。大体あと5回しか攻撃できない。宇佐美、戦えるか?」


「戦う……? 私がですか~!? はう……」


「宇佐美さんっ!」


 まずい。宇佐美さん気を失っちまった。一番MP高いのに……。くそ、どうする? 三蔵も柊もまだ戦えるが、5回の攻撃で倒せるのか? こんなやつ。


 仕方ない。ここは……。


「三蔵、柊。宇佐美さんを頼む」


「黒巣? 何をする気だ?」


「最終手段に出るだけだ」


「最終? え!? ボクたち終わるの!?」


「とりあえずダメージを与えて逃げる!! 行くぞ、『空気中のガスよ』!」


「ガス?」


 ふたりが不思議そうな顔をするが、俺は気にせず続ける。


「『チリチリと散る火花で爆発を起こせっ』!」


 呪文を唱え終えると同時に、大きな爆発が起きる。


「グアアアッ!!!」


 俺たちも爆風で吹っ飛ぶが、グリフォンの目にも小石が入ったようだ。敵は俺たちを置いて、向こうへと飛び去っていく。……なんとか危機回避ってところか。


「……今のは?」


 宇佐美さんを抱えながら、三蔵がたずねる。柊も何が起こったのかわかっていないらしい。


「さっき投げた石……あれは石じゃねぇ。石炭だった」


「だから?」


 柊、やっぱりお前は中学からやり直しだ。俺は頭をかいて説明する。


「石炭がそこらへんに落ちてるってことは、少なくてもある程度のガスがあるって思ったんだ。密閉空間じゃなかったから博打だったけど、ラッキーだった」


「ほう、やはり私の目に狂いはなかったようだな」


「……なんだよ」


「MPの消費は29。しかも直接攻撃じゃないから3倍にはならない。よく考えたな」


 三蔵がにこっと笑う。ちくしょう、坊主でも無駄に顔がいいせいで、ドキッとするじゃねぇか。こいつは仏頂面よりも笑顔のほうがいい。


「うん……きゃ、きゃあっ! あれ? 三蔵さんに柊さん? さっきのぐりふぉんは?」


「黒っちが倒したよ。逃げてった」


「え、えぇ!? あ、あんな強そうなのをひとりで? 黒巣くんって、すごいんですね!」


「い、いやあ……」


 宇佐美さんに手を握られ、照れると、三蔵・柊両人が俺に詰め寄る。


「なんだ、黒巣。私たちが褒めたのと、宇佐美が褒めるのは違うのか?」


「黒っちって、もしかして胸の大きさで差別してる? さいってー」


「お前らな……。それよりもうここにはいたくねぇだろ? 井戸探せよ」


 少なくても魔法が使えるかどうかってのは確認できたんだ。もうこんな危険な場所にいる必要はない。さっさと帰りたい。


 だけど帰るにはこの世界と元の世界をつなぐ謎の井戸がないと……。井戸はどこだ?


「あのさ、黒っち……」


「言うな、柊。わかってる」


「どうするか、だな」


「どうしましょう!?」


 俺たちは途方に暮れていた。ここに井戸はない。どんなに見渡してもないのだ。


「もしかして俺たち、HPがなくなるまでこの世界にいなきゃいけない……とか?」


「はわ~……」


「あっ! うさみん!」


 宇佐美さんがまた倒れる。彼女、MP高いのに、これじゃあ戦力にならないな。しかし本当にどうすりゃいいんだ。教授たちや天利先輩じゃないと転移魔法は使えないし、習ってもないし……。


「へぇ、期待の新入生あらわるって感じだね!」


「だが、天利先輩には毎回困らされる」


「あの人、自分がなんで留年してるかわかってないからな」


「3ぼーず先輩!」


「……まとめるな」


 智里先輩がメガネを直しながら不機嫌そうに言う。本能寺先輩もうなずいているが、閂先輩だけ笑顔だ。


「ま、いいじゃん。オレたちチームなんだし」


「祝は黙ってろ」


 本能寺先輩がドスの効いた声でつぶやくと、閂先輩はしゅんとした。


「なぜ先輩たちがここへ?」


 俺たちの疑問を、三蔵がまとめて質問すると、智里先輩がため息をつきながら教えてくれた。


「天利先輩は留年している。それは知ってるな」


「まぁ……新歓の席で言ってましたから」


「あの人、転移魔法が苦手なんだよね。ここ、レベル1の世界じゃなくて、レベル20だから」


「……は?」


「よく生きてたな。俺たちが気づいて命拾いした」


「まさかこんな目にあったのって、天利先輩のせい~!?」


「柊、そんな声を出すな。天利先輩のおかげで、私たちは貴重な経験ができたのだから」


「三蔵、お前、ポジティブすぎて怖い」


「それじゃあ、オレたちと一緒に、元の世界に戻ろう!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。