↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくだい!~僕の大学は魔法研究が必修です~  作者: 浅野エミイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/29

第27話

「励ます言葉かぁ……。三蔵、聖職者志望なんだし、何か思い当たるんじゃないのか?」


「私か? えーと……」


 俺は後ろを歩いている三蔵に話を振ってみた。それを聞いていた本能寺先輩も前から口を挟む。


「聖職者志望でも『ほい』と出るものじゃないと思うぞ? 人を励ますのって、難しいからなぁ」


 先輩でも難しいか。まずは『自分だったらどんな言葉を掛けられると嬉しいか』を考えないといけないかな? うーん、俺が今掛けられて嬉しい言葉ねぇ……。


「イケメン、とか?」


「山道で『よっ! イケメン!』って言われたいのか? 君は」


 本能寺先輩の鋭いツッコミ。確かにすれ違いざまにそんな言葉を掛けられても微妙だ。ましてや山道でそんな声掛けをする人間の感性はなんというか……相当変だろう。


「でも、思いついたのなら言われたいのだろうな……」


 三蔵がぼそっと呆れたようにつぶやく。え? 俺の本音、山道で『イケメン!』って言われたいこと決定? 何気なく言っただけなのに! 俺がただの変人みたいじゃないか。


「お、俺はともかく……三蔵はないのか? 山道で言われて励みになる言葉」


「『ご精が出ますね』とかか?」


「山登りは仕事じゃないぞ、仏門女子」


 うーん、難しいなぁ。三蔵は後ろのほうにも話を振り始めた。


「智里先輩や閂先輩、柊、宇佐美は何かあるか?」


「そうだな……僕は『お疲れ様です』かな?」


「それもやっぱり仕事みたいですよー?」


 柊が言う。仕事みたいな感じじゃなくて、相手を励ます言葉。しかも山で歩いているときーー? 


「山道ではすれ違うときに『こんにちは』って言うって聞いたことがあるよ」


 宇佐美さんが思い出したように言うと、閂先輩が笑った。


「こんにちはー! か。確かに山歩き自体が黙々となってしまうからな。声をかけられるだけで励まされるところはあるか」


 挨拶ね……。なんだか「やっほー!」に通づるところはある気がするけども。


「だけどそもそも『やっほー』って言葉にどう言った意味があるんだろう?」


「言われてみれば謎だな」


「君たちは言葉の意味もわからずに使って、このパラレルユニバースムに転移したということか?」


 俺と三蔵の言葉を聞いていた本能寺先輩が驚いたあとにそのまま黙り込んでしまう。多分、先輩本人も『やっほー』の意味がわからないからだろう。


「意味がわからないなら、後日調べてみるがよい。大学には図書館があるわけだし、ネットで論文などを検索してもよいだろう」


 助教はそう言ったところで足を止めた。


「さぁ、皆の衆! 到着だぞ!」


「うわぁ……」


 俺は山頂の風景に言葉を奪われる。下のほうには雲海。そして、目の前には大きな杉の木が堂々とそびえていた。


「すっごい老木だね!」


 柊が目を丸くするが、宇佐美さんは少し元気なく言った。


「だけどこの木……元気がなさそう……」


「もしかしたらふもとの自然破壊や観光資源として使われていることを嘆いているのかもしれないな」


 智里先輩がぼそりとつぶやくと、閂先輩も無言でうなずく。歩いてくる途中、落石もあったからな。確かに木や山自体に元気がないのは悲しいな。


「だけど雲海はすごいな。絵になるよ」


 本能寺先輩が気を取り直すようにみんなに言うと、少し場が和む。


「そうだ、写真を撮らないか? せっかくだし」


「ここだと自撮りみたいな感じになるけど、大丈夫かな?」


 柊がスマホを構えると、全員画面に入るように詰めて並ぶ。


「うまく入ってる?」


 宇佐美さんがたずねると、柊はシャッターを切ろうとする。


「うん、大丈夫そう! はい、チーズ!」


 カシャッ。音が小さく鳴ると、柊はスマホを全員に見せる。柊の周りに集まると、全員で確認だ。


「山って感じがあまりないな」


「くろっち、仕方ないっしょ。全員の姿を入れるとこうなっちゃうの!」


「記念になったし、いいんじゃないかな?」


「柊、あとで私にも送ってほしい」


 宇佐美さんと三蔵が色々言っているそばで、3ぼーず先輩たちも自分たちの研究であるスマホやラジオの電波の確認だ。


「山頂だが、電波なしだな……」


「むしろ山頂のほうが電波ないものではないだろうか?」


「それもそうだな。鉄塔より高いんだし」


「皆の衆、少しいいだろうか?」


 わいわいやっているところで、漁火助教が2回手を叩く。


「今回は我の研究の手伝いとしてやってきてもらったところなのだが……MPの変化があるか、調べさせてもらってもよいかのう?」


 そう言えばそうだった。今回の目的はそこだ。


「あのう、私はMP使ってしまったみたいんなんですが……」


「そう言えばそうだったのう。だが、全員データは取らせてくれ。本能寺くん、データの書き留めを頼めるか?」


 そう言って助教は、本能寺先輩とともに俺から順に、また血圧測定機みたいなものでMPとHPを計測し始める。


「……うーん」


「俺の数値、どうですか?」


「MP60、HP80だな。元の数値はMP60、HP120だ。つまり、山登りでHP40は削れているが、MPは増えていない……」


「ということは……善行や滝行をしたところで、HPだけしか変わらずにMPは増えないってことなのか」


 三蔵の言葉に、俺は唖然とした。


「えぇ〜! 何のために登ってきたのさ!」


「データを取るためだよ。仮説を立てて、結果を集計・分析する。それが研究というものである」


 柊がぶうたれたところで、漁火助教が研究の趣旨を伝える。


「……大学の研究って、難しいね」


 柊の横で、宇佐美さんが苦笑いする。その横で、三蔵や智里先輩のデータも計測していく。


 結局全員のデータを見た感じ、全員がMPに変化はなさそうだった。宇佐美さんは途中で魔法を使ったが、それを加味しても変わりはなかった。


「宇佐美くんは魔法を使ったことで、善行になり、MPが増えるという可能性も考えたのだがな……」


 俺たちも残念だったが、なによりも仮説とは違う結論になった漁火助教のほうががっかりしている様子だ。


 全員の集計が済むと、助教は測定機をしまい、みんなに声をかける。


「さぁて、登ったからには今度は下山だ! まだまだ道は長いぞ!!」


 そうだった。山登りは帰り道がある。だけども俺は、この山頂の風景をもう少しだけ堪能していたい……。こんな場所、なかなか簡単には来られないだろうし、このメンバーで山を登るなんて機会は初めてだったからな。でも、ゆっくりしている暇はない。なぜならまた長時間歩かないといけないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。