表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Madness Crescent  作者: のるんゆないる
第二章「「ヘルヘイム」に攫われて」
PR
21/53

#20 明日まで雨じゃん!?


 

 自宅に帰ってきてからは、時が流れるのは早かった。

 いつものように風呂に入り、簡単な軽食を摂る。今日はサンドイッチを自作した。

 ふわふわのパンにしっとりとした玉子、ツナのハーモニーは定番かつ王道だ。

 あまり量を作ってはいないが、パンもネタももう少しあるので、明日の朝もサンドイッチにしよう。

 口が大きくないので、食事には時間がかかるが、ゆっくりと平らげて、大きく息を吐いた。


 「ふぅ……。満腹じゃないけど、いっか。こんな時間だし」


 食事を食べ終えたのるんは、一階のソファで寝転がってスマホをぼーっと眺める。

 今週も色々あった。授業のレベルはそうでもないが、他の出来事で脳の処理が追いついてない。

 友人との時間、「ヘルヘイム」での時間、その他と過ごした時間。

 未だ二週間なのに、とても二週間とは思えないほど、情報量が凄まじく濃密なものだった。


 茶々丸に三月まで顕れた。知らないはずの知っている人達。

 まるっきり同じではないが、それでも、別人とは思えないレベルで共通点が多い。

 夢の中に侵食されているような感覚に侵されながら、日々を過ごしている。


 「そういえばこれ……、確か「戯装」につけてって言ってたっけ」


 ポケットにねじ込んでいた追加パーツと呼ばれていたものを改めて見る。

 茶々丸が作ったとされるそれは、精密機械と遜色のない程、精巧に作られているように見える。

 白く、回路のようなものが時折、仄かに光っている。

 ふと思ったが、こんな白いものを付けていたら、生徒会の面々にバレるのではないだろうか。


 (うーん、しまったなぁ。最悪の場合、姫宮さんと一緒に居る時だけになっちゃうかもなぁ)


 下手な行動はしたくない。今は信頼を勝ち取り、不審な行動は避けるべきだ。

 嘘や、虚言、筋の通っていない行動を取ると、信頼というものは一気に失われる。

 そうなると、生徒会から他のコミュニティでも、本当に動きにくくなる可能性が跳ね上がるのだ。

 既に、学校内でもストーカーされている事から、余計に気を使って学校生活を送る必要がある。


 (いやぁ、まさか漆原さんがなぁ)


 後にクラスメイトから聞いた話だが、どうやらのるんのクラスが移動教室だった際に、ヤタノが二階で目撃されていたのだ。

 しかも、彼女はのるんの教室に入って、少ししてから出て行ったという話だ。

 だから、昼休みにご飯がなくなっており、ヤタノとあの会話が出来たことになる。


 (うーん、そう考えるとちょっとゾッとするかも。わざわざご飯盗んで、ご飯を渡すて……)


 そこまでしてでも、話がしたかったのだろうとは思うが、その執念は自分にはないものだった。

 生徒会の面々への距離を今一つ詰めれないのはそういう部分にある。本能的な恐怖心が身体を襲うのだ。


 「気をつけないとなぁ。下手に触れると火傷じゃ済まないだろうし……」

 

 時計はもう間もなく、日付が変わる頃合いだ。外も雨が降り出し、激しい雨音が聞こえてくる。

 そんな中、いきなりインターホンが鳴る。珍しい、普段でも鳴らないのにこんな時間に?

 恐る恐る、ドアチェーンを付けたままドアを開けると、そこには見覚えのある顔が二人立っていた。

 

 「……え?漆原さんと那雲さん?」

 「やほやほ〜。いきなりすんごい雨が降ってきてさ〜。そしたら昔懐かしいお店があったから寄った!」

 「でも此処って……確か如月先生の……、あ!ソウイエバ、のるんさんはご親族とかなんとか……なぁん」


 この雨では、軒先に居ても、雨風が凌げずに、かなり濡れるだろう。

 一先ずドアチェーンを外して、中に入るように促す。引っ掛かった違和感の鎖は外れされぬままに。




 __________________



 取り敢えず、濡れた制服をハンガーにかけてもらい、新品のださ漢字Tシャツを二人に渡す。

 個人的に好きで、目ぼしいものは収集しているのだが、被りはこうやって部屋着にしているのだ。

 ちなみに、今着ているのは「|怒理夢噛取《dream come true》」と書かれたダサTシャツだ。

 ヤタノには「焼肉定食肉抜き」、凪織には「乳の大きさは、態度のデカさ」と描かれているのを渡した。

 各々が凄い顔をしていたが、背に腹は代えられないと言った様子で、諦めて着ていた。

 

 (にしても、かなり制服濡れちゃってるな……、ブレザーから下のワイシャツまで……)


 のるんが二人分の制服を洗濯機に放り込み、温かい飲み物でも出そうと戻ると、凪織の悲鳴が聞こえる。

 何事かと思い、のるんは二人がいるであろう一階メインフロアへと走って向かうと、二人が乳繰り合っていた。

 ヤタノはニマニマと目を輝かせながら、凪織のあちこちを揉んでおり、凪織はなぁん……と嘆いている。

 

 「うわ〜wおっぱいおっきいからか、態度もおっきいねぇ〜」

 「えっ!?ちょ、ちょっと!?なぁにするんですかぁ……なぁんなぁん……」


 色々と目に毒なので、のるんは早々にヤタノを止める。凪織も、そういうのには耐性がないのだろう。

 顔を真っ赤にさせている凪織を庇うようにヤタノの前に立つ。流石にR18展開は自宅で避けて欲しい。

 不機嫌そうに上目遣いでこちらを睨んでくるヤタノに、戦々恐々としながら、のるんは仁王立ちする。


 「そういう関係だったとしても、そういうのはお互いの家でしなさいっ」

 「やだなぁ、これくらいただの友達でもするって〜。それに、揉まなきゃ損じゃん?」


 のるんは白目で凪織を見るも、凪織は顔を真っ赤にさせながら、首を横に全力で振っている。

 首取れないか心配になるほど振っているが、なんとなく面白いからそのまま見守っておこう。


 「本人が嫌がってるし、ボクの居ないトコでやってよね。人の家で乳繰り合わないでもろて」

 「なぁん!?そこは、ちゃんと止めるべきデスヨネ!?あ、いやでも……ボク……わふぅ」


 Tシャツ一枚で見る人が見れば、羨ましがる恵まれた肢体をゆさゆさと揺らしてると、ヤタノは舌打ちする。

 凄まじい嫉みを含ませた視線は、本人ではないのるんですらも、少しだけ怯んでしまう。


 「ま、服貰った上に、洗濯して貰ってるし。今日の所はこの辺にしておきますかぁ〜」

 「た、助かった……えっちい展開はNGなのですぅ……わふぅ」

 

 二人の暴走を止めることが出来たので、のるんはカウンターの奥でお湯を沸かす。

 冷えた身体には温かい飲み物が、一番いいのである。二人とも甘いのは大丈夫だろうか。


 「ココア淹れるけど、珈琲の方が良いとかある?」

 「え〜。珈琲ってインスタント〜?」


 カウンターに寝そべっているヤタノの悪態に、慣れた様子でのるんは頷く。

 

 「そーだよ。豆が無いもん。もしあるなら、淹れてみても良いんだけどね」

 「のるんさんは珈琲、淹れられるんです?……だから、元喫茶店の此処に……?わふぅ」

 「じゃあココアかなぁ〜。良い豆仕入れたら、今度は美味しいの飲ませてよね?」

 

 実際に淹れたことはない。でも、淹れられる気もしている。

 散々、夢の中で淹れていたのだ。最初こそ出来なくとも、キャッチアップはそれなりに出来る。


 (珈琲の豆って、何処で売ってるんだろう?売ってるのを見掛けたら、買ってみようかしら)


 幸い、設備は全部揃っている。詳しそうな人がいれば、色々聞いてみようか。

 今日の所は、3人分のココアを淹れて、カウンターに座る二人に差し出す。

 ちゃんと洗って綺麗にしてあるマグカップは、何処にでもあるような家庭的なものだ。

 猫と犬と狐の絵柄が描かれていて、可愛らしいなと思って、たまにのるんも使っている。


 「おっ、このココア、結構甘みの強い奴じゃん。ぼくこれ好きなんだよねぇ」

 「ぼ、ボクも好きですよっ。甘いのも苦いのも、好物ですから……わふぅ」


 この後も、暫くの間、三人で服が乾くまで世間話をしていた。

 気になる所は多々あるが、ツッコんでいては空気が悪くなる可能性が高い。


 (触れない方が良いよね。此処に来た理由も、此処を通った理由も)


 まず、凪織もヤタノも家はこの周辺でも、学校からの帰り道でもない。

 雨宿りできる場所もほぼ無く、此処に来ようとする意思がない限りは来る場所ではない。

 それに、傘を持っていなかったと言う割には、預かった服は濡れていなかった。


 (多分、鞄の中には傘があるか、もしくは、そもそもこの近くに何か用事でもあったのか)


 意図や目的が読めない。少なからず、友人や仲間の所に行きたいと考えている。

 そんな選択肢もあるが、それは考えにくい。たかだか一週間程度の仲だ。


 (気をつけないと。呑まれるわけには行かない。ちゃんと見定めて、考えなきゃ)


 のるんは、温かいココアをちびちびと飲みながら、雨が止むまでの間、二人と話していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ