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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第四章 闘争
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偽りだらけの母親

視点がミュアからリクへと変わります〜。


今回は一週間以内に更新できたぁ♪



「ほぼ順調に進んでおります……。引き継ぎも終えました……」

「そう♪ それじゃあ私はそろそろ行くわ♪」


 楽しそうな笑顔を崩さない少女に見える母親、赤砂カナに向かって報告をする。

 私が考えている彼女の性格は、表向きは天真爛漫で自由奔放、冷淡無情。多くの人間はそう思いがちだろう。


 でも、私はそうは思わない。

 現世を生きている時の神〝クロノス″としての仕事は、この世界が壊れないようにするために、行動する事。あらゆる未来を見ては、世界が壊れないルートを進ませる事だ。

 彼女はその仕事を半ば放棄するような事が多々ある。そのため、他の神々に怒られては、笑って誤摩化すような事もする。


 なぜ半ば放棄するのか。なぜ笑う事しかしないのか。


 彼女は強い人だ。彼女は誰よりも人を愛している。彼女は世界よりも人を優先する。


 彼女は人を頼らず、すべて自分でやろうとする。


 天真爛漫なんて嘘だ。いつでも生きている者の事を考えていて、真実を伝えず、それでいて相手が一番生きていけるルートを辿らせる。


 自由奔放なんて嘘だ。いつでも仕事をしていて、人の生存に脅威となる物は排除。自分の思ったようにするような行動なんてして生きている事は出来ていない。唯一出来たとすれば、それは立鮮を捕まえて結婚、子供を授かった事だろう。


 冷淡無情なんて一番の大嘘だ。人が大好きで、大好きでたまらなくて、それゆえに笑顔を振り撒き、生きる道を教えてくれる。そして何より、我々ロピアルズメンバーの全員の名前を熟知していて、誰かが死んでしまえば、人知れず涙を流しているだろう。人が死んだ後に彼女に会えば、必ず涙の跡が残っていた。

 親友だった真陽が死んだ時も、彼女は声を出さずに大粒の涙を流したのだろう。


「……本当にするのですか?」


 それ故、私は事前に聞いていた彼女の作戦に大反対だったのだ。


「ええ♪ 何かあるかしら?」

「私は認められません。立鮮様がなんと言うか」

「事前に言ってあるわ♪ そしたら、普通に作戦に賛成してくれたのだけど?」

「ですが……ッ!!」


 尚も食い下がる私に、カナは背中を見せて歩き出した。



「【霊魂喰い(ソウルイーター)】狭間(はざま)千里(せんり)」



「!?」


 私は、追いかけようとした足を止めた。


「貴方が私に好意を抱いているのは知っているわ。ありがと。でもね? この作戦だけは変えられない」

「か、カナ様!」


 止めようとした。でも、止める事は出来なかった。

 私が初めて好きになって、立鮮が居たために諦め、それでも一生を彼女に尽くそうと心に決めたその時から、彼女の好きなようにさせたいと思っていたために、尚更悔しかった。


「それじゃあ、行ってくるわ♪ 【侵入者(カメレオン)】のミュアちゃん♪」


★★★★★★★★★★


 今、何階なんだろう。

 もう階数を数えるのもやめて、襲ってくる幻魔や悪魔を薙ぎ払っていた。

 そんな疑問をよそに、階段を上りきったところで広い空間にでた。

 天井を支えるために中心から正六角形の方面にそれぞれ柱があるような部屋だった。

 今居る階段の反対側に大きな扉があって、そこ以外には特に何もなかった。


「こんな広い場所なんて、初めてかも」

『ここから先は特殊な空間じゃ』

「どういう事?」


 ルナの話では、ここから先は特殊な部屋で、本来、英雄姫達が住んでいた頃には無かったはずの物だと言う。

 つまりここから先は、世界の中心。その操作をするための神聖の場所であるみたいだ。


「そっか。壁が壊れたりしちゃった時に、何か影響ある?」

『特には無いから安心せい。ただ、特殊というのは、神族、魔族の力がほとんど元通りなのじゃ』

「それって、つまり……」

『妾達の力は現界では弱体化するのじゃが、ここでは完全に力を引き出せるという事じゃ』


 ボクの目には、普段魔力が無い場所では見えないはずの魔力粒子が大量に見えるので魔法が一段階強くなりそうな予感はしていた。


 そうしていると――ドゴォォォォオオン!!!!


「何!?」


 上の階から爆発音がした。ボクよりも先に入った人は居なかったはずだが、もしかして仲間割れだろうか? 違うと思われるが、一体何が?

 それを確認するためにも、ボクは扉に向かって走っていった。

 近くまで来ると、その扉が人、一人分と通れるくらいには開いていた。

 走るスピードを維持して、縫うように扉を超えて階段を上がると、上のフロアに近づくほどにやけに熱風を感じるようになってきた。


『い、いきなりあつくなってきました』

『おぉ! 丁度いい熱気だぜ!』


 シラがたじろぎ、ツツが喜ぶ。

 そうしてボクが次のフロアへとたどり着いた時……。


「〈ブレイクダウン・ライフマジック〉」


 淡々として魔法を発動をする人が放った魔法によって、その場に崩れた人間という構図を見る事になってしまった。

 しかも、倒れた人はボクと同じ白銀の髪をしていて、ショウで姿を見なかった人。


 ボクの妹、赤砂ユウだった。


 そしてそのユウに向かって白刃を持つ黒く光る刀を構え、今まさに殺そうとする人物との間に、ボクは〈インフィニットゲート〉を使って入り、その刀をルナで受け止める。

 甲高い金属音がし、鍔迫り合いが始まった。


「……あ、おはようリクちゃん」

「白夜さん、一体何をしているんですか!」


 叫び声と同時に刀を押し返す。

 あまり力を入れていなかったのか、白夜は押されるままに刀を引いて、バックステップで距離をとった。


「お……にい……ちゃ、ん……?」


 後ろで微かな声がする。


「ユウ、もう大丈夫だから。ちょっと待ってて」


 すぐにでも助け起こしてやりたい所だが、白夜相手に背を向けられない。

 白夜がどれだけ強いのかは、以前戦った時は実力差がありすぎてわからなかった。だから、今回も油断せずにしっかり観察する。


「……そんな警戒しなくても、ユウちゃんを助け起こす程度ならすればいい」

「感動の再会で、仲間ですから信用したいところですけど、それだけ魔力粒子が剣に濃く集まり始めていたら信用できませんね」

「…………。……やっぱり、魔力粒子が見えるのは厄介」


 白夜はため息をつき、魔力をおさめる。そして刀を鞘にしまうと、振り返った。


「……上の階で待ってる。……準備ができたなら追ってくれば良い」


 白夜はそう言うと、扉を開けて階段を上っていった。

 本当に行ったかどうかを確認した後、ボクは初めてルナを鞘に戻してユウに駆け寄った。


「ユウ! しっかりして! 大丈夫!?」

「ぁ……。きちゃ……たの……。……にいちゃ……ゴフッ」


 口から血が溢れ、ユウの着ているボロボロの服に新たに染み渡る。ボロボロの服からは無数の斬り傷があり、下の肌ごと斬られて血が滲み出ていたようだ。


「〈ルナ・キュアー〉。コレで少しは良くなると思うんだけど」


 発動した魔法によってユウから出る血は塞がった。しかし、別の物が塞がっては居なかった。


「何、これ? 魔力が永遠と……」


 ユウから、本来使っていないときは出てきては行けないような魔力が流れ出続けている。このままだとすぐに魔力切れを起こしてしまうのではないだろうか。


「ルナ、コレはなに!? 一体どうしたらいいの!?」

『おそらく、先ほどのシヴァの特殊魔法じゃろう』

「白夜さんがやったって事はわかってる! どんな魔法? 解除する方法は!?」


 ボクは焦ってその方法を聞く。だが、帰ってきた言葉は残酷だった。


『この魔法は、かけられた人物の魔力を破壊する魔法じゃ。解除する方法は無いのじゃ』

「え……? そ、それって、どういう事……」


 そう冷や汗を垂らしながら質問すると、ルナは重く苦しい声で答えた。







『壊れた壷を直す事なぞ無理じゃ。ユウは、もう魔力を持たない一般人と同じ、という事じゃ』







「そ、んな……」


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