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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第四章 闘争
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おしゃべり悪魔

リクからマナへと視点を変更します



「はぁ……はぁ……はぁ……」


 もう何階を登ったんだろう。未だに頂上が見えそうも無い階層で、しかも同じような構造が続く物だから胃にくるものがある。


「一体、どうなっているんですか……」


 長い白銀の髪を下に垂らし、膝に手を置いて方で息をする。

 ずっと同じような牢獄が続いている階を何階もあがっているのだから仕方が無い。


『リクよ。まさかとは思うが、これは敵の魔法だってことは……』

「それだったらルナ気づいてるでしょ?」

『まぁ、そうなのじゃが……』


 ボクがわかっているように、ルナにもわかっているはずだ。

 瞳にはルナによる加護で魔法の粒子が見えるのだから、粒子が見えていない以上、魔法は使われていない。本当にこんな階が何階も続いていると考えるしか無い。


「それにしても、なんでこんな作りにしたんでしょう?」

『当時、塔は魔法によって階層を転移していました〜。階段でまずあがるような事は考えていなかったからこんな設計になったんだと思われます〜』


 のんびりと語るサオに言葉に、ボクは肩を落とした。

 とてもはた迷惑な事である。階段があった事に感謝するべきところなのだろうか。


『でも、そろそろ三十階に到達しても良いと思うぜ! 何せここまで身体強化魔法ぶっ通しで来たんだからな!』

「三十階だったら何かあるんですか?」


 ツツの言葉に、ボクは条件反射で返しながら上の階。三十階へと到達すると同時に、なぜかソメが返してきた。


『この階は私にとって一番興味がある階』


 なんで? そう聞いてしまったボクは、ソメにそこの部屋の中を見てみてと言われて開けた。


 あけて……しまった……。



 中は当時のままで残してあるのか、釣り竿に三角木馬、(ムチ)、棍棒、大量の水でも入れたのか、人が四人は頭まで疲れそうな大きな釜に、超機械的な椅子、何か四角い石のような物に、その近くには、上に正座で座ったら痛いであろう三角に尖ったのが五、六列ありそうな床があったりと、その他にもいろいろとあったりした。


『はぁ……はぁ……。す、少し寄ってイかな――』



 ――ボクは問答無用ですぐに閉めた。



『あぁ!?』


 ソメの悲痛の叫び声。

 絶対に入れないように〈パーフェクト・クリスタル〉で完全に凍らせ、直接に扉などに触られないように完璧に封印したのであった。


 この部屋には何も無かった。以上!


「さぁ。先に行きますよ」

『迅速的行動じゃったのぅ』

『しかも封印しましたし〜』

『時にはソメの性癖につきやってやんねぇとダメだぜ?』

『いや、ここはりくの『行動』はとうぜんのことだと』

『ね〜。何でもいいから早く上行かないの?』


 ソメの性癖……どうにかならならないかな……。

 神様達に気づかれないよう、真剣に悩みながら牢獄がようやく終わって階段を上っていった。

 いや、神様達から見てみればとてつもなくバレバレなのだが。



★★★★★★★★★★



 背中に直接生えている炎の翼をはためかせ、この狭い通路と壊れた牢獄の間を不安定に移動する。


「クソっ、やっぱ格子が邪魔だな!」

「それはウチも同感だけど、ね! 〈ファイア〉!」

「お前は炎使えばほぼ無視できるだろうが!」


 アーチャーはそんな事を言いつつも、器用に鉄格子の間を縫うようにして矢をこちらへと届かせている。おかげで翼を操る力も弱ませれない。


「あぁもう鬱陶しい!! 〈デビルボウ改〉発動! 行くぞおらぁ!!」


 どす黒くなったその弓から放たれた矢はすぐに黒く染まり、まるで炎を飲むかのような黒い魔力の波を放ってきた。

 一目であれはまずい物だと感じ、すぐに後退。炎の壁を生成してその魔力の波を断つ。


「ちっ。そんな炎貫通してやるぜ!」


 3つの矢が放たれ、そのうち一本以外炎の壁にあたるが、貫通する事はできなかった。だが、他の一本が別の通路を通ってこちらへと迫ってくる。


「〈炎花鳥〉!」


 その矢とぶつかり合ったが、炎の鳥の矢は、その黒い魔力がすべて食い尽くし、襲ってくる。


「なに、あれ!?」


 再び炎の壁を作るが、先に作っていた炎の壁が完全に黒く染まり、矢が襲ってきた。


「くっ! 〈黒炎〉!!」


 黒い炎はその矢を燃やそうと放たれる。

 そこでようやく矢は止まり、黒い魔力も消える。


「やっと止まった。それがあんたの魔法?」

「あぁそうだぜ。すべては……すべては篠桜マナ、お前専用に作った魔法だぜ!!」



 …………は?



「この悪魔の魔法は炎を喰らう! 特にお前の炎の魔力を感知して喰らう! 悪魔はやっぱりさすがに喰えなかったが、使わないお前の魔法はすべて喰える事がわかったぜ!」


 自信満々に答えるアーチャー。そんなアーチャーにウチは呆れるばかりだった。


「えっと……それ言わなかったらウチわかんなかったんだけど」

「…………」

「…………」


 沈黙。

 そしてきっかり十秒。


「しまったぁ!? く、クソ! またしてもおれっちはぁ!」


 おしゃべりの対策まではできなかったらしい。

 にしても厄介な。ウチの魔力に感知して喰らうなんて。


『彼の一途な想いに答えなくてよろしいので?』

「なんで!? というかそういう意味じゃないでしょ!?」

『まぁ冗談はよして、シャドウデビルの力を借りるしかありませんね』

『いくらでも使ってよ』

「使うのにはためらいは無い。無いんだけど……」


 アーチャーの悪魔の力がかなり増幅されている。

 ただ使うだけじゃ、勝る事ができない気がする。


「ウチの魔力だけを使っちゃいけないだなんて、なんてやりにくいの」


 なら、レナのときみたいに設置型魔法を設置して……だめか。ウチの魔力に反応するんだった。何か手は……。


「ねぇ。あんたどうやって悪魔の力を強くしたの? 自分自身が強くなるならわかるけど、どう見たってあんたの場合は悪魔が強くなってる」

「そんなの、教える訳ねぇじゃん。王がこの体のほとんどを悪魔にしてくれたなんてなぁ」


 体のほとんどを……?


「な!? そ、それ、何言ってるかわかってるの!?」

「ははっ。今は最高に気分がいい。悪魔の体はお前への怒りを感じれば感じるほど強くしてくれる!」


 狂ってる……。なぜヘレスティア王はそんな事ができるのか。

 アーチャーは、それで良いのだろうか。


「あんた、それ、間違ってるよ」

「間違ってる? 何が間違っているというんだ? 事実、今おれっちはお前に善戦している!」


 矢筒に入っているすべての矢を取り、すべて放つ。それぞれ生きているかのように飛んでくるのに対し、ウチは黒い炎の壁を作る。


「〈ブラックフレアウォール〉!」

「ははっ! 篠桜マナ! お前の悪魔の力は何の成長もしていない事がわかるぜぇ! 〈スフィア〉!」


 アーチャーのあたりに複数の丸い玉が現れる。

 不用心にそのスフィアに手を入れ、中から取り出したのは魔法矢。それも複数。


「悪魔って成長できるの!?」

『できるよ? ただし、自分よりも強い個体を倒した場合のみだけどね。それ以外でできるとすると、仕える王に力を授かったとき。そして、契約者である人間を取り込んだときのみだね』


 取り込む?

 シャドウデビルにそう聞き返す。


『どうやら、アーチャーは力を授かったのと、人間を取り込んだの2つをしたみたいだね』


 2つをして、相性の悪さで押されてる。なら、こちらが少しでも悪魔の力を得れば良い話。

 (さいわ)い、既にウチは神とも悪魔とも契約している。


「ねぇシャドウでビル」

『ん?』






「ウチの左目、いらない?」


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