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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第三章 七千年越しの贈り物と海の姉弟
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神に見放された少年

忙しい期間が続いていて、あまり更新できていなくてすみません。なんとか二ヶ月更新されていないタグはつけられないように頑張ります!



 襲いかかってきた水流の魔法は水を壁にする事によってすべて防ぐ。畳み掛けてカンマは魔法を放つのに対し、わたくしは攻撃する魔法を発動する事ができなかった。


「くっ」


 水と水が激しくぶつかり合い、この階層を水浸しにする。


「あははは! 姉さん、操られている時よりも魔力が上がったんじゃないの?」

「当然でですわ! 神様は、心から願えば必ずそれに答えてくれるんですの!!」


 水浸しとなった階層で、カンマはその水から槍を作り出し、針千本かのように鋭い刃が襲ってくるのを、水を使って移動する。


「神様? そんなの、神に愛された子しか願いを聞いてくれないに決まってるでしょ? 姉さんは神様に愛されてるから、そんな事が言えるんだね。羨ましいよ。〈大洪水〉」


 ふるわれた槍から、もはやここは海と隣接していると言っても言いかのようなほどの海水が姿を現し、すべてを飲み込んで襲ってくる。


「そんなこと、無いですわ! 神様だって、ちゃんとそれぞれの民の話を聞いてくれていますわ! 〈ウォーターハザード〉!」



 ――ザ、バァァァァァン!!!!



 2つの魔法のぶつかり合いは、到底天井には着かないだろうと思っていた天井にまで被害が及び、このフロア全体を覆い隠して行く。わたくしとカンマも当然その海に飲み込まれて行くものの、水を操って息がしっかりとできるようにしてハープに魔力を通す。


「〈聖槍〉」


 カンマはその手に持っている三叉の槍を構えると、それを投擲するかのように投げてきた。


「キャァ!」


 海の中に広がる赤色の液体。

 自分の腹部が切り裂かれていることを今更ながらに気がつき、押さえて膝をつく。

 目の前まで迫ってきたその槍を操った水圧によって防ごうとしたのだが、操っていた水がほんの少しも槍の動きを阻害せずに自分の体を傷つけたのだ。


「どうして、こんなことを……するんですの……?」


 深く傷ついた傷口を魔法で癒しながら、どうして? と自然と戻ってきた槍を手に取ったカンマを見据える。


「あははは。じゃあさ、どうして僕は……こんな体で生まれてきたんだろうね?」


 カンマはそういうと、上に着ていた患者服を乱暴に脱ぎ去った。

 そして、わたくしはそのカンマの体を見て驚きを隠せなかった。


「そ、それ……なんですの……?」


 カンマの体は包帯だらけ。しかもその包帯が腐り|《、、》始めていて、包帯がない場所には本来生きている人間にはあり得ないだろう黒ずんでいる肌があった。海の中に居るからか、一層肌が黒く見えるが、それがただ黒いだけでなく、まるで触ったら肌が崩れ、指が沈むのではないかと思う腐敗した肌であった。


「生まれたときからあったほくろのようなもの。それが成長していった結果さ。理不尽だと思わない? 赤ちゃんだった僕が何をしたと言うの?」


 一度、しん……、と訪れる静寂。そして、カンマは「あはは……」っと乾いた笑い声を残して、叫んだ。


「ふざけるな!! 僕が何をした!! 生まれたばかりの頃に何をしたと言うんだ!!」


 その声とともに、カンマが急加速をして接近してくる。

 怒り狂ったカンマの斬激が飛んでくるのを、水を使って槍ではなく自分を当たらない範囲まで動かす。

だがそんなことを見据えていたカンマが追撃とばかりに襲ってくる。


「確かに前世では悪の道に走ったかもしれない。だが今の僕にそんなのが関係あるか!? 人は死ぬと地獄で罪を償う!! そしてすべての罪を償ってから始めて全ての記憶と性格を消去して転生させるんだ!!」


 カンマの怒りの感情が高まっていけばいくほど、その槍がまがまがしく闇の力を得てわたくしを追い詰めていく。

 こちらは一度も攻撃できていない。防ぐための攻撃はしたが、実質カンマにあたらないように気をつけているのだ。いくら敵であろうと、実の弟に向ける刃など……。

 そう考えていたところで、槍がとうとうわたくしの足を狙うち、床へと縫い付けた。


「あぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」


 あまりの激痛に悲鳴をあげ、動かそうにもその槍が床を突き刺したままで動こうとすればするほど斬れていく。


「それなのに神は僕にこんな病を押し付けた。許されるわけないだろ? これのお陰で僕の道が途切れたんだ! これのせいで親から見捨てられ、明るい未来を閉ざされた!! すべて、姉さんだけを見るようになってしまったあの親にさぁ!!」

「か、カンマ……わたくしは……」


 自分は見捨てていないと、そう口にするよりも早く、カンマが槍をグリグリと動かし始めた。


「あぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」

「わかってるよ。姉さんは僕の味方だった。だから、あんな男達の元から離れてヘレスティアに誘うつもりだったのに……それを拒んだ!」

(さそ……う……。まさか、風香!?)


 自分の専属メイドであった彼女は、わたくしを確かにヘレスティアへと誘った。

 だが、それを拒んだせいでわたくしがカンマを裏切ったなんて……ッ!


「だからさ、姉さん。ここで死んで。王に生き返らせてもらおう? そしたら、姉さんは僕の味方」

(あぁ……わたくしは……)


 そういったカンマは、わたくしの上にまたがると、やがてその槍を振り上げ……。


「二度と、僕を裏切らない姉さんになってよ」

(ほんの少しも、(カンマ)の事をわかっていなかったんですのね……)


 三叉の槍が襲いかかってきた。







 真っ赤に染まる視界。


「ごふ……。なん……で……。あと数十分は病気が進行しない目安なはずなのに……」


 カンマが、槍をつくよりも先に口から血を吐いた。その量は一度で貧血を起こしそうなほどなのに、彼はそれをなれているのか、すぐさまその原因を探る。


「誰だ! 誰がこんな事を――!!」


 そうして探した先には、なぜかこの部屋に充満している黒い靄のような物があった。それはわたくしや、カンマすらも包み込んでいる。だがわたくしにはなんの被害もない。一体これは何……。


 そう考えていたところで、カンマの後ろに一人がその場に居た。

 黒い靄を出しており、それを纏った少女。ソウナの姿が……。

























「ごぼ? ごぼぼぼぼぼ。ごぼぼぼぼぼぼぼぼ」


「水の中で何を言っているのかさっぱりわかりませんわーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」


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