↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第三章 七千年越しの贈り物と海の姉弟
30/39

永遠の夢 1

視点はソウナさんですよ〜。



「あら。誰もいないじゃない」


 私は元女湯があった場所へと足を踏み入れると、何も無い状況に少し拍子抜けをした。誰もその場におらず、奥の方を見てみても物1つない。よく調べればここから死角の場所に何かしらあるだろうが、特に魔力も感じないので誰もいないという事は確信できる。

 しかも、魔力は隣の風呂場から感じ取れる事ができて、レナと敵らしき相手の声が聞こえてくる。その内容によると、どうやら敵はレナの弟というカンマらしい。


「でもここからも水が出てきたのよね。一体どうして……」


 というところで気がついた。ここの風呂場は確か上の部分が開いていた。そこから水が漏れだしたのかもしれないと。そうすると、反対側の風呂場に敵が居るという事になる。

 ただ、それだけでは隣の風呂場と同様、同じ量の魔法水で攻撃する事などできるはずも無い。そう考えた私はさらに奥へと進んで行く。


 すると、この風呂場と、隣の風呂場が開通していた場所はそこだけではなかった。

奥の方へと言ってみると、なぜかそこには大きく開いた穴があった。

 そこからは簡単に隣の風呂場へと通る事ができそうな物であり、これならば確かに隣から魔法を発動してもこちらの風呂場からも同じ量の水を通す事ができそうだ。

 そう考えた私は、その穴から身長に顔を出そうとしたその瞬間。


「なっ!?」


 大量の水が押し寄せてきた。まるでこの階層を覆い尽くすような感じの量だ。とっさの判断で私は床を蹴って上へと退避。水の中では息ができないのでまだ埋まっていない上へと空気を求めに飛び出した。


「すぅ、はぁ。すぅ」


 ごぼぼぼ……。


 大きく酸素を吸った後、私は満タンになってしまった部屋の中を泳ぐ。

 水が音を阻害するので音をたてずに進む事ができ、隣の部屋まで侵入した。

 そして、そこではレナが槍を構えた少年に教われているところだった。このまま行くとレナがさされる。と言ったところで、少年の槍がレナの足を床に縫い付けた。


 さすがにこのまま行くとまずい。何やら少年が発狂しているようだし、殺しかねない。


(メルム。この海全体を病魔で包みなさい)

(よ、よろしいので? そんな事をすれば、あの少年の病気が……)

(違うわメルム。操るのよ、あの黒ずんでる何かの病気を)

(え!?)


 中で目を丸くするメルムに、私は企んだ笑みをして、周りに浮かんでいるスフィアに魔力を送った。

 すると、次々と黒い霧を生み出すスフィア。それの浸食率の速度は目を見張るほどで、数秒で全体を包んでしまった。

 だがそれを二人は気がついていない。少年は正気を失っており、レナはその少年に釘付けになっている。

 そして……。少年が槍を振り上げたその瞬間。



 ――少年の病気を進行させた。



 とたん、少年は血を吐いて元凶を探した。私は既に後ろへと漂っている。

 そして私は言ってやった。



「ごぼ(あら)? ごぼぼぼぼぼ(ごめんなさい)。ごぼぼぼぼぼぼぼぼ(お邪魔だったかしら)」

「水の中で何を言っているのかさっぱりわかりませんわーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」


 という訳でレナに突っ込まれたのであった。

 仕方ないじゃない。水の中で貴方達みたいに息ができる魔法なんて使えないんだもの。

 少年――つまりは状況的にこの人がカンマなのだろうけど――は、すぐさまその場から退避し、海全体を充満している黒い霧がこの病気を進行させているのではないかと判断。魔法で出した海水をすべて消し去り、元通りの部屋へとなった。

 そして、カンマの狙い通り、黒い霧は無くなっている。それは私が海水を媒体として、黒い霧を浸食させていたからだ。


「さて、これでやっと息ができるし、喋れるわ」

「く……。お前、一体何をした! あの黒い霧はなんだ!」

「こちらが答える義理は無いわ。……と言いたいところだけど、教えてあげなくも無いわ」


 私はその手にディスの剣を持ち、魔法を発動する。


「〈風土雷火〉。私に勝つ事ができたらね」


 風が舞い、床を揺るがし、雷と火の粉が散る。

 水に対抗する魔法は私は持っていないし、量で攻めたら少し危ない目にあわせてしまうかもしれない。


「ふざ、けるなぁ! 〈スピュリゥエンタ〉!」


 光を纏った槍が水を巻き上げ、カンマは槍を投擲してきた。

 私はそれを華麗に避けると、もう一度魔法を発動する。


「〈クロック・ファースト〉」


 バトラーの時と同じコンボ。だけどあの時と違うのは、私が一段と強くなり、前よりももっと強くなれる事。

 だけど、私は〈クロック・ファースト〉をすぐに解除する。

 そこからはゆっくりと、〈風土雷火〉で強化して行く。私自身の体力は正直無いままなのだから、魔法でそれらを強化するためだ。だからほんの少しの〈クロック・ファースト〉でいい。


「さて、投擲した槍は向こうに行ってしまったけど、どうやって戦うのかし――」

「槍ならここにある」


 私は少し目を開く。投擲したはずの槍が手のうちにあった。

 遠慮なしに槍をふるってきたカンマに、私は剣で横にはじく。

 三叉の槍なために挟まれると梃子(てこ)の原理で持って行かれてしまう。


「少し、神の使い方が乱暴じゃないかしら!」

「大丈夫さ。これは僕の道具に過ぎないからね!」


 ――ガ、キィン!!


 ひときわ大きな金属音が鳴り響き、私は槍をはじき飛ばす。


「ッ! 〈レインレーザー〉!」


 私がもう一度剣を振るうよりも早く、カンマの魔法が貫いてくる。

 まるで光の光線のような水の魔法を後ろに跳躍して回避。さらに追撃してくるところに、横槍が入った。


「〈ウォーターウェーブ〉」


 水の魔法が間に入り、すべてを防ぐ。


「あら、レナさん。別に防がなくても自分で防げていたのに」

「わたくしの勝手ですわ……。それより、カンマはわたくしにやらせてもらえないですの?」


 自分で? そういった私は、首をかしげる。

 唯一の血のつながった弟であるカンマを、自分で傷つけるつもりだろうか。


「お願いしますわ……」

「…………現実的じゃないわね。そもそもさっき思いっきりやられてたじゃない」


 自分に家族はもう居ないけど、もし相手が父親だったのなら、というのは想像できる。そして、私は傷つけられなかった。いくら悪魔が救っていたとしても、実の父、フェデルを攻撃する事なんて、できなかった。



 ――あのとき、リクが背中を押してくれなかったら。



「それでもやるの?」

「えぇ。わたくしが、いえ、自分の身内の事は、ちゃんと身内で決着をつけなければいけませんわ……。それが、わたくし、レナ・ルクセルですわ!」


 強いのね。レナは。


 私はそう思い、構えていた剣をおろす。だが。


「でも、支えて貰えると、助かりますわ……」


 ちょっと照れくさそうに言うレナに、私は少しだけ頬を持ち上げた。



「カンマの槍は私が防ぐわ。攻撃は頼んだわ、レナ・ルクセルさん?」

「えぇ。わかっていますわ。頼みますのよ、ソウナ・E・ハウスニルさん」



 こんな組み合わせ、まず無いと踏んでいたけど、案外行ける物かもしれない。



「お前ら、調子に乗るなよ! Dii(ディー) Consentes(コンセンテス)! 〝ネプチューン〟!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。