タイムリミット出現
はじめはリクで、次はレナです。
「この時を……この時を待っていた……。二ヶ月も待っていたんだ! 篠桜マナ!! お前はオレっちと勝負しろぉ!!」
「アーチャー!! あんたねぇ……。今はあんたの相手してる場合じゃないんだから、この弓どかしなさいよ!!」
「無理だね~! その矢は〈神滅の矢〉! 神、そして神の契約者のみにきつ~く効く病魔の魔法さ!」
病魔、だとするとこれは触れたら体に以上が……。あれ? だけどボクはサオやソメが居るから大丈夫?
(サオ、ソメ。ボクはこれに触れても大丈夫?)
『さっぱりわからないですね~』
「えっ!?」
サオのもの凄くキッパリと言い切ったその言葉に驚いてつい口に出してしまう。
そのせいで言い合っていた二人が同時にこちらに向いてくる。
「どうしたの~?」
「うるせぇぞお前! っていうかお前には興味ないからとっとと上行け!」
興味ないから、上にいけ?
「えっと、まさかボクは上に行ってもいいと?」
「そういうことだ! オレっちが用があるのはそこに篠桜マナだけだ!」
どういうことだろう。ヘレスティア側にしてみれば、上に行かれる事はマズイのではないのだろうか。
ボクが上に行く事によってヘレスティア王を倒しに行ってこの塔を奪還、再封印する事が一つの目的だ。
それなのにアーチャーのこの少年はボクに上にいけと言う。
――どう考えても罠としか考えれない。
「マナちゃん、一緒に戦ってこいつを倒しましょう」
「もちろん。ウチ達の力が通用するかどうか、判断する機会だからね~」
ボクはルナの柄をしっかりと握り、マナは弓を前へと構える。
その戦闘態勢に移行したボク達を見てアーチャーは一言――。
「あ~。オレっち的に本当に上に行った方がいいと思うぞ? だって、オレっちだったらたぶん、いくらここに篠桜マナが待ち構えていたとしても塔を完全に制御しちまう前に王をぶっ飛ばしに行かないとって思うし」
「「――え?」」
ボクとマナ、2人の声が重なった。
塔を、完全に制御する前に……?
「今ヘレスティア王はこの世界のすべてを洗脳、破滅へと導くために塔を完全制御しようとしてる。完全制御さえしちまえばこっちもんだ。王は世界を混乱に導くのと同時に世界崩落さえできちまうのさ」
「そ、そんな事出来る訳ないです!」
「それができちまうんだよ。なんたってあいつは、絶対悪の力で、『英雄姫』が死んだ時の敵だったんだから……っと、少し喋りすぎたかな?」
アーチャーの言っている事が本当かどうかわからない。だけど、もしこの事が事実なのだとしたら……。
ボクは一刻も早く上に行かなくてはならないと言うことだろうか。
絶対悪。この世にそんな力を持った人がいると言うのだろうか。いや、ユミと渡り合える人がいるのだろうか。神や、悪魔の力を借りるならともかく……。
「さて、お喋りが過ぎたオレっちはともかく、上に行かないのか? 聖地様?」
にやりと、今までにない悪徳な笑みを浮かべて、アーチャーは笑いかけてくる。
真実だという保証は無い。だけど嘘と言う保証も無い。
一体どうするべき――
「リクちゃん」
「?」
ボクがマナへと振り向くと、そこではすでに弓を構えて矢を作り出している姿が見てとれた。
「本当って保証は無いけど、行かないよりかはマシだと思う。リクちゃんなら絶対に負けないって信じてるから……」
強く力を込めた矢をしっかりと握り、弓を構えた。
ボクを信じると言うマナに、ボクが信じずに向かわなかったらそれは裏切りではないだろうか。
ここまで言われてしまったら、行くしかないじゃないか。
「わかりました。マナちゃん、負けないでください!」
ボクはそう言って、走り出し、何もしてこないアーチャーの横を通り抜けて階段を上がって行った。
「さて、これで一対一だな。この時を待ってたぜ!」
「ところで……」
「んぁ?」
マナのその一言に、アーチャーは笑みがこぼれたのが自分でも気がついた。
「あんたを倒したら、別に下に戻っても良いんだよね?」
「ふっ。倒せたらなぁ!!」
★★★★★★★★★★
「さて、2人も言った事だし、わたくし達も行きましょうか」
リク達が行ってから、一向に水の攻撃が来なくなった事を確認したわたくし達はそれぞれどちらの部屋に進もうか考える。
「そうね。私は右に行くからレナさんは左で良いかしら? …………左は元は男湯だったけど……」
「わかりましたわ」
最後の部分、なんて言ったのかわからなかったが、ともかくわたくしは足元に溜まっている水を操りながら左と言われた部屋に入って行く。
部屋に入るとそこはまるで温泉に来た時のロッカーのような物が用意してあって、中は空であったが、ここがお風呂場なのだろうかぐらいは予想がついた。
今でもお風呂があるのだろうかと思い、わたくしは奥へと続く開けっぱなしの扉へと入って行く。
中は湯気は無く、巨大なお風呂場だと言う事が分かるし、ソウナが入って行ったらしき方向には壁があった。上には少し開いている部分があるのでそこから声は聞こえるだろう。
だけど、その壁の奥の方には大きな穴が開いており、2つの風呂場が完全に開通されている事がわかる。
そして、その穴の近くに大きな卵のようなカプセルがあり、さらにその中に人が……。
「え……? カンマ、ですの?」
わたくしがそうこぼすと、ゆっくりと瞳が開く。そして、カプセルが開いて中に入っていた水がすべてあふれた。
「お姉ちゃん、来るの遅いよ」
そういったカンマのその手には、静かに生成される、三叉の槍が出現した。
『む、あれはネプチューンの槍?』
「カイシン、それは本当ですの? それじゃあ、カンマも神使いということですの?」
わたくしは少し信じられないという風に確認する前に、その槍から溢れ出た大量の水と、お風呂場にあった水が一斉にわたくしへと襲ってきた。
(先ほどと同じ魔法!?)
すぐさま水を操って風呂場にあった水でそれに対抗。
互いにぶつかり合った水流が派手な水しぶきを散らして少し静まる。
「カンマ、一体何するんですの!?」
「何するも何も、塔に侵入してきた敵を排除するだけだよ?」
敵……。その言葉にわたくしはかつて湖で戦った自分専属のメイド、風香の事を思い出した。
彼女は、誘われてヘレスティア一員の名付きになったのだ。もしかして、そのとき、カンマも誘われて……?
「嘘……ですわ。カンマも……名付き、ですの……?」
わたくしはそう答えると、ただ頷き、そして……。
「レナお姉ちゃん。今まで病院で聖地の近くに居る人たちの話をしてくれてありがとね? おかげで情報が簡単にとれたよ。一番役にたった時はライコウ殲滅戦の時かな。とても鮮やかだったでしょ? だから……」
カンマは槍を振り上げ、そこに魔力が集中される。同じ属性なため、ダメージを軽減できたり、増えたりできないが、食らえばひとたまりもなさそうだ。
そんな魔法を練っているカンマは……。
「ありがとねお姉ちゃん。もう死んでいいよ」
嘲笑い、槍をふるった。




