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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第三章 七千年越しの贈り物と海の姉弟
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謎の敵

キリさん視点です。



「と言う訳だテメェ等。即行で終わらせてやる」


 気配は完全に消えている。後を追おうとしてもまったく分からない。

 声は聞こえているだろうから別にこれで良しとする。

 ここ大広間全域に雷撃を放てば一撃で倒せる。魔力は多く使うけど……まぁ今の俺なら問題ない。


「さて、んじゃやるか」


 魔力を込める。それは除所に増幅されていき、その拳に集まってくる。

 ミカヅチの魔力をとことん使っているために、その雷は黒く染まっていき、黒い稲妻となって拳の内に抑えきれなくなって放電し始める。

 しまいには暗闇だと言うのに白い光に相反する黒い光が俺の拳を囲むように丸く構築されて、かなりの高電圧になる。辺りにあった鉄類。例えば蝋燭立てや、シャンデリアなどがその高電圧に浴びせられ、同じく黒い稲妻を帯び始めてしまった。


「――ッ!?」


 そのあまりに高圧電で、近づけない稲妻に驚いた敵は冷や汗を垂らし、その身を隠せなくなっていた。

 俺はその姿が見えていたけど、どの道もう一人も倒すつもりなのだ。大広間全体に放てば倒れるだろ。


「行くぜぇ? 耐えてみろよ!! 〈爆雷黒陣〉!!」


 雷は全域に広がる。

 この大広間全てが黒い雷によって感電し、柱についていた電球や、シャンデリアなどが一時的に光を放った。

 だがすぐにショートし、また暗闇へと戻る。


 その後、静寂がこの空間を漂う。


 何の反応も無い所を見るとたぶん一撃で仕留めたんだろうが、ここでそのまま確認もせずに上にあがると後で追ってこられそうだから探す事にする。

 雷の手応え的に、ここからあまり離れていなさそうな所だった。

 近くに居たからあの雷から逃げられなかったのだろう。とは言ってもこの部屋全域に放ったんだからどこに逃げても意味は無いが。


「っと、リク達には当たってねぇっだろうな」


 何も考えずに放ったので当たったかもしれないと言う心配はあったが……。


『リクたちは大丈夫だろ? だって、魔法を無効化する事が出来るんだし、何よりそこまでのんびりしてないと俺は思うんだ』

「ま、それもそうだ。あいつ等の事、よくわかってんじゃねぇか」

『べ、別に分かってるわけじゃない! 誰だって見てれば分かるような事を言っただけだ!』


 ……弄るとおもしれぇな。ミカヅチ。ルナやツキが感じていたドSの感覚が良くわかる。

 元々俺はSだからメチャクチャ楽しい。リクには劣るが。


「にしても……いねぇな」


 確かに手応えのあった場所はここだったはずだ。

 俺は初めに居た地点から二番目に近い柱の裏を見てみるが、誰の姿も見えなかった。

 直撃したとは思うが……まさか逃げれたのか?


 その時、背後から殺意を感じ取れた。


『! キリ後ろだ!』

「わかってるっつの!」


 俺は振り向きざまに迫っていた刃を受け流し、カウンターで拳をつきだすがそれを見事避けられて敵はまた暗闇の中へと逃げ去る。


「うわぁ。めんどくせぇ」


 見えるからいいものの、見えない奴なんてこれは不利としか言いようがない。ハンデどころでは無いな。


(あいつ、こんな暗闇で素早く動くとか反則にもほどがあるじゃねーか)


心の中で愚痴を言いながら、俺は再度魔力を練る。たぶん全域だとさっきみたいに不意打ちを喰らう。確実に本人に当てる必要がある。


『所でキリ。さっき雷で電球とか光ったが、明るくできるんじゃないか?』

(ダメだな)

『どうしてだ? 明るくなったろうに』

(明るくする事に対しては賛成だが、さっきの雷で全部ショートしちまいやがった。線が切れて、もう二度と光らねぇよ)

『??? 要するに、もう二度と使えないと言うことか?』

(まぁそういうことだ)

『人間界の文化はややこしいなぁ』


 ここまで話した後、俺はハッと目を見開いた。

 電球の線が切れた。それはもう二度と使えないと言う事。

 だけど、その線を覆っている電球を使えば……?


(ミカヅチ……お前ナイスだぜ!! さすが俺と契約した神だ!)

『は、は? 何か思いついたのか?』

「おっしゃぁ! 行くぜぇ!! 〈雷黒爆陣〉!」


 俺は魔力を先程よりは絞って、雷を電球やシャンデリアへと向けて放った――パリィィィンッ!!

 一斉にはじけ飛ぶガラスの音。たぶん、金は相当な物になると思うが俺は何食わぬ顔で気にしない事にした。何よりこの塔は戻るのだから。


(よし、後は俺の感覚次第だな)


 俺は目を閉じ、耳をすませた。

 静寂の音が続き、何も感じない。

 俺の体をいつの間にか纏っている〈雷迅〉は蒼白く光り、俺の居場所は知らされる。隠れもしていないので当然だ。


『お、おい。目を閉じたら何も聞こえなくは無いか? 雷を放って使う電磁感覚機関もお前は無いんだし……』

(まぁ静かにしてろよ)


 俺の一言で、ミカヅチも静かになる。

 何の動きも見せない俺に、痺れを切らしたのか、はたまた暗殺の機会と踏んだのか、敵は動いた。

 床は先程割った電球やらのガラスが待っている。だから、空中からだ。

 敵は次々と柱を音も無く蹴り、俺に近づいてくる。


 そして俺へと到達しようとしたその時――。


「バレバレだ」


 俺の瞳は紫に光っただろう――。



 ――ズガァァァンッ!!!



「ぐ、が……ッ!」


 敵は空中で静止、次の瞬間には後方へと思いっきり吹き飛ばされて行った。

 敵を殴り飛ばした俺はと言うと……。


「ふぅ。やっぱこりゃぁ魔力を半端無く喰うな」

『空間を割ったんだ。当然だろう』


 空間を割った。その事によりその空間を元に戻そうとする力が働き、密室のはずのこの部屋に大嵐のような風が吹きあれる。

 それによって敵に呻く時間を許さず、その体も引き寄せようとする。


「く……ッ」


 一生懸命柱にすがりついたり床に小刀を突き刺して耐えようとしているけど除所にこちらへと寄ってくる。

 ここまま待ってると、本当に空間に取り込まれてしまうので、俺は近寄る。ちなみに俺は魔眼のおかげで風に吹き荒れる事は無い。何より俺が割ったんだし。


「さてと、もう一発行っとくか? 何か言いたい事はあるか?」

「…………」


 何も喋らない敵。何も言うつもりは無いか。


「ンじゃ、終わるまで寝てろ。〈雷剛拳〉」


 俺の拳が、敵の腹部に到達するのと同時――。



 ――敵はその場から弾けた。



「な――ッ!?」


 次の時には、目の前には誰もいない。だが、後ろから接近する殺意に気がつき、俺はその場から飛び退いた。

 刃が俺の服を切り裂くが、肉までは届いていない。


「そんやぁ、2人居るとかリク言ってたな。まさか魔法によってすでに作られてたか?」


 魔法生物、と言う事だったのだろうか。先程攻撃したのは。

 だとすると、相手はまだたくさんいると考えた方がいいな。さっきに雷でやられなかったのはなぜか分からないが。全域に放ったのに手応えがあったのが一つ。


「まさか、悪魔の能力か?」


 これまであった奴はどれも悪魔つきだったから、まさかとは思うが。


「だとすると本体捜さねぇとめんどくせぇ」


 俺が動かなかったからか、敵がまた俺へと目がけて攻撃してくる。

 だけど俺はその姿を完全に目視して、下顎を殴り飛ばし、ついでに顔に巻きつけていた包帯を解く。その奥には何も無い。ただ黒い液体のような物があるだけだ。


「やっぱり、な!」


 俺はそのまま腹を貫き、ドバァッと黒い液体を散らせた。すると、ツンとした匂いが漂った。


「なんだこれ? インクか?」


 貫いた俺の腕にはその敵の黒い血のような物がべったりとつき、インクの様な匂いが充満した。

 俺が貫いたからか、敵は姿を保てなくなり、バシャァッと、まるで個体が液体になったかのように爆散した。

 おかげで俺の体がずぶぬれだ。黒い液体により。


「うわっ、くっせぇ!」

『俺、中に居てよかった……』


 ミカヅチが安堵している。外に出してやろうか。


「さて、ここは片付いたな。たぶんこの階にはいないだろうし、先進むか」


 もう辺りに気配は感じない。一番初めに捉えた奴はそのまま空間へと閉じ込められていった。ひび割れた空間も元に戻った。

 後は……。


「やべぇ。これぜってぇ匂い付いた」

『微弱な雷で匂いの元を経てば良いだろう? 少しだけ時間掛かるが』


 そうするしか……無いのか……。

 俺は一番弱い電気属性で体をビリビリさせながら、次の階に上がるための階段を捜し始めた。


何故キリさんが柱を蹴りながら飛んできた時に気づけたかというと、敵が風を斬る音です。

なんでそんなのわかるかって? しよ(それ以上いけない

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