ユミの書斎
視点リクちゃんに戻ります。
キリに一階の敵を頼み、ボク達はレナの案内の元、二階へと来ていた。
二階は確か姫様、もといユミの部屋だったはずだ。
その階丸々ユミの部屋だったからかなり印象に残っている。十階までしか行かなかった訳だが。
ボク達が階段を上がり、二階の床を踏むと、そこは他の階と繋がっている魔法陣の横だった。つまり、ユミの部屋の扉の前だった。
すぐそこに上へと上がる階段があるので、ここは無視をしてそのまま先へと進んでも良いかもしれない。
……でも。
「なんだろう。少し不思議な魔力を感じる……」
「リクさんも感じましたんですの。わたくしも、この階へと来るたびに感じておりましたが、何が元なのかさっぱり分からないですわ」
先頭を歩くレナがそう言うと、最後をついてきていたマナがこの階へと到着する。
「さっぱりって、調べたりしていないの?」
「一応調べはしましたわ。しかし、そこの扉がどうやっても開きませんの」
指を差した先にあるのは扉。この空間にある扉と言えば、ユミの部屋へと入るための扉しかない。その扉が開かなければ確かに調べる事なんて出来やしないだろう。
確かに、ボクがその扉を見ても奥から何かしらの魔力粒子が漏れ出しているのが分かるけど扉は堅く閉ざされているのがわかる。魔力粒子がびっしりとその扉に張り付いているからだ。
「ですので、この階に敵はいませんわ。先に進みますの」
レナはそう言い、上の階へと向かうために歩きだした。ボク達もそれに従い、先へと歩きだし、扉の前に通った時だった――カチリ。
「?」
ボクは不意に足を止め、その扉を見る。
「どうかしたのリク君?」
ソウナが止まったボクを不思議に思って声を掛ける。その声でボクが止まった事に気がつかなかったレナも止まって振り返る。
「どうしたんですの? そこは鍵が掛かってて入れないですわよ?」
入れない。確かに鍵が掛かってて入れなかっただろうけど……。
先程の音は一体何だったんだろう……。
そう思ったボクは、その好奇心からか、その扉に手をかけた。
――ガチャ。
「「「え?」」」
扉のドアノブが、ボクが力をいれて動かしたように下へと動き出した。
これで扉はロックされていない。腕を押すと、扉はまるでボクを招くかのようにゆっくりと開いた。
そして、感じた事のある魔力粒子が部屋から大量に漏れ出した。
「うわぷっ」
中から風が吹かれたかのように感じながら、部屋の奥を見てみる。
暗くて中までは全て見る事は出来ない。だけど、しっかりと七千年前の部屋を保ったままである。
「う、嘘!? どうして今更この扉が開くんですの?」
どうして開いたのかさっぱりなレナ。だけど、ソウナやマナは一つの答えを導き出したようだった。
「これは……」
「誘ってる、んじゃないかな~。リクちゃんを~」
しかもそれだけじゃない。扉を開けて分かった。この魔力粒子はどこかで感じた事のある粒子だ。たぶん、電光王国であった人の。
でも誰だ? 普通の人間なら七千年なんてとてもじゃないが生きて入れない。悪魔だと言っていたシャインかもしれないけどあの人は世界を渡り歩いているのではなかったか? では誰が?
ボクは分からないまま、心臓を鳴らしながら奥へと入って行く。たぶん、今行かなかったらもう二度と会えなさそうな気がするから。
ボクは部屋の奥までくる。
ユミの書斎だ。本来なら彼女が面倒ながらもイスに座って仕事をしているような場所だ。
だけど今回は違う人がその書斎の机の前に立っている。顔はこちらを向いていないので見えない。だけど、その人の背中だけで、誰がその場に立っているのか、ソウナが予測をつけた。
「まさか、そこに居るのはイヴさん?」
「え? イヴさんって、地下一階で決闘の立会人をしていた、あの?」
机の前に立っている人は、いろんな機具をつけている。後ろから見るだけなら、頭、肩、腕、背中、腰、もも、足、その全ての完全装備がされている。決して鎧などと言えるような物ではなく、機械と言うのが一番似合っているだろう装備だ。頭の上には天使のような輪があり、背中の機械には六対の翼が展開、翼の下の機械や足の機械はまるでブースターが出るかのような装備で、腰回りの機械は小型戦闘機を出しそうで、肩からはミサイルでも放ちそうな機械が浮いている。
ソウナが呼びかけた事により、ずっと立っていた髪の長い女の人が振り向いた。
ボクの記憶では茶色だったはずのその瞳は普通の人の白目と黒目が逆転して光を帯びているが、地下一階で見たイヴの顔そっくりであった。
「お待ちしておりました。リク様、ソウナ様、マナ様、キリ様……はおりませんね」
その声はボク達が過去に言った時と変わらない、淡々とした機械質の声。イヴの声をまったくと言っていいほど同じであった。
ボク達の名前を呼んだ所を見ると、本当にあの時あったイブなのだと感じる。
「後で来ると思うよ~」
「そうですか。ですが、用があるのはリク様ですので、他の御方は居てもいなくても変わりません」
「あら。私はそう思わないわ。この中だと私が一番関わりがあったと思うのだし」
イヴはソウナの言葉を聞いた後、しばし目を閉じた。
「それも、そうですね。少しぐらいは挨拶した方が良いかもしれませんね」
少しだけイヴは微笑んだ。ボク達が過去に行った時はいつでも無表情だったイヴだが、今こうして会った後、笑うなんてまったく考えていなかったのでボク達は驚き包まれる。約一名は何が何だか分からず……。
「え、えぇっと……一体、誰ですの? この御方は……?」
「貴女とは初対面でしたね。私はイヴ・アンゲルスと申します。ソウナ様は知っておられると御思いですが、他の人はまだ知らないでしょうから一応言っておきます。私は人ではなく戦闘型アンドロイド。機械人形ですからあしからず」
「へ!? イヴさんって、機械で人形なの!?」
「肯定ですマナ様」
ボクが質問するまでも無く、マナが驚くと同時に質問してくれた。
イヴが人間ではない事に驚きだったけど、疑問が生まれる。
「機械って……魔力持っているんですか?」
ボクがそう聞いた。初めてイヴと会った時、魔力も、魔力粒子も感じなかった。だからこそ今感じているこの魔力に疑問を持ったのだ。
「持っていません。戦闘する時は、魔法は使わず、この身にある武器を持って無力化します」
「え? じゃあ、どうしてイヴさんから魔力を……?」
ボクがそう言った時だった。
――イヴの腰の機械から、一つの武器が現れた。
一体その小さい機械のどこに入っているのか全く分からないほどの剣が現れ、イヴはその剣を両手で横に持った。
「私の主。ユミ様から、リク様へと」
「え?」
イヴが持っているその剣。
その剣は、光を帯び、天使の羽のような柄の剣。
「あ、これ……」
この魔力を知ってる。部屋から流れ出ていた魔力は、この剣だった……と言う事?
「受け取り下さい。リク様。エンジェルスソードは、魔を払う聖剣。持っているだけでも、その恩恵を受けられます」
ユミの第一の剣であるエンジェルソードは、鞘に入っているだけでも、十分なほどに光に身を包んでいた。




