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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第三章 七千年越しの贈り物と海の姉弟
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大広間



 中は暗かった。電光王国で見たような明るさが無く、蝋燭やシャンデリアには何一つ火は灯っていなかった。

 だけど、何も見えないかと聞かれると、そうでもない。

 あの時あった転送魔法陣の場所から淡い光が流れ出ており、かすかだが、暗さに慣れれば部屋を見渡せるようなぐらいには光が灯っている。


「あの光。まさかとは思うが、復元したら転送できるんじゃねぇか?」

「でも、どうやって復元するの? あの時の魔法陣なんて誰も覚えてないよ?」


 魔法は基本、想像力と魔力さえあれば発動できる。それと同時に、発動された魔法には自然と魔法陣が描かれている。これは無意識に本人が書いており、そして発動する。そして、同じ魔法を他の人がやるならば、その魔法陣をマネしなければならない。別に現代の魔法をマネしたければ見て似たような物を作ればいいが、昔の魔法は複雑で協力だった事もあり完全にマネしなければできはしないだろう。


「でも、あの魔法陣以外にどこか上がる所あるの? 階段とか」

「え? 魔法陣で上に行くつもりだったのですの?」


 レナは意外とばかりに驚いていたが、ボク達にとってはこれが普通だ。電光王国の塔と同じだと聞いていても、階段を見た覚えは無かった。一度も使っていないので場所は知らない。たぶんどこかにある事にはあるのだろう。もし塔まで責められたらその魔法陣で敵が上に攻めてくるだろうから。


「レナさん、階段がどこにあるか知ってます?」

「ええ、知っていますわ。操られていても、意識はありましたから」


 レナは「こっちですわ」と言うと、前を歩いて先に行く。

 シャンデリアに火を灯して明るくして進みたかったけどそれでは目立つ行動となってしまうために断念する。暗視が出来るのは今いるメンバーならキリだけだし、ボクは魔力の粒子を見たり、反応を見て先を進む事にする。

 大広間は大きな柱が支えており、この部屋の隅をこの暗さでは見渡せない。扉を見つけるのも困難だけど、レナはその中を軽い足取りで歩いていく。そしていつしか、それほど時間がかかっていない時に、ボクの視界の端で魔力粒子が揺らいだ。


「!」


 気づいた事に気づかれたとわかった敵は、すぐさま隠密行動を解除。身を乗り出し、音を消して迫ってくる速度に合わせながら、ボクは腰のルナを居合で振り切った――ガキンッ!


「チッ」


 舌打ちをした謎の敵はもう片方の手に持っていた逆五角形の何かを突き出してきた。だがその前にソウナの防御魔法がその攻撃を防ぎ、キリが即座に雷を纏った拳をそれにぶつけた。

 ドゴォンッ!! と、もはや人間が出す音ではない爆発音を響き渡らせて敵を吹き飛ばした。


「ぐっ」


 敵は床を引きずりながら、必死に受け身を取ったところで、マナが魔法を放つ。


「〈爆焔過流〉!」


 魔法陣が同時に五つ現れ、上下左右の四方に別々の魔法。それらを統合した大きな魔法陣がそれら全てを融合させて特大の全域放火魔法が放たれた。


「なッ!?」


 その大きさに驚いた敵は即座に柱の影へと逃げたがマナが放った範囲は前方の全て。その柱ごと大広間を焼き尽くすかのような炎の渦が前方全てを巻き込んだ。

 さすがに柱の後ろも無事では無いとわかったのか、防御魔法を発動させてその身を防いだ。

 マナが放った魔法によって柱が壊れたり燃えたりする事は無かったが、それでも影になっている部分も無事では無いほど満面無く黒い焦げが広がったのだろう。先程よりも敵が飛んだ方向の視界が一段と悪くなっている。


「うわぁ……。お前、今の結構魔力使わねぇか?」

「ううん。今のURUだからほとんど使っていないよ~」

「この二ヶ月で友達が化け物染みて帰ってきましたの……」


 防御魔法は完全に破壊されているのが魔力粒子で見てわかり、それでもまだ敵の魔力粒子が働いている所を見ると、まだ気絶していない事が分かる。

 でも、それともう一つ。別の魔力粒子が見える。まさかこれは……。


「みなさん、もう一人いるかもしれません」

「え? 敵は2人いますの?」


 きょろきょろと探して見るが、今の所見てとれない。まだ来てないのか、それとも魔力が見えない隠れ方をしているのか。


「まぁいいだろ。そんやぁテメェ、いきなり奇襲とかいい度胸してるじゃねぇか!」


 不服そうにしながらキリは大広間に反響させるけど、相手から返事は帰ってこない。会話をする気は無いのか。名付きの人達は結構おしゃべりが多かった気がするけど、この人に限ってはそうでもないのかな。

 もしくは名付きではなかったのか。


「ったく、答えねぇとか。なぁあいつ俺がブッ倒してやるからお前ら先にいかねぇ?」


「ここで別れますの? 戦力分散はあまり得策ではない気がしますの。仙ちゃん神様と契約していないですし……」



「はい?」



「うん~?」



「ん?」



「はぁ?」



「え?」




 ポカーン……。




 ボク達、全員が口を開けて驚いた表情で止まってしまった。

 それを隙と見受けたのか、柱に隠れていた敵は身を乗り出して、その場から魔法を放ってきた。

 雷系統の魔法の様だが、その雷に向かってキリが前に出る。


「テメェ、よく見てやがれ。ミカヅチィ!!」


 キリはそう叫ぶと同時、右手を握る。すると今まで感じていなかった神霊の力を感じるようになって行き、その拳から黒い雷が発せられた。


「〈黒雷〉!」


 拳を振るうと共に、黒い雷を放つ。それは迫って来た雷とぶつかりあい――バチィンッ!

 音と共に雷は消え去り、黒い雷がつきぬけて行く。慌てて敵はそれを避けると、もう一度隠密行動をしてその場を離れた。


「チッ。まったく気配感じねぇ。あいつまさか【暗殺者(アサシン)】とかじゃねぇだろうな? いや、【暗殺者(アサシン)】は風香か。それに見た所男、だったよな」


 暗視が仕えるキリはやっぱり見えていたのだろう。でもここでいつまでもここに居る訳にはいかないし。


「それじゃあ、早く行きましょう。キリさん、たぶん二対一になると思いますけど、大丈夫ですよね?」

「望む所だ」


 キリは笑いながら拳を握る。やっぱりキリは戦闘中には笑っているのが普通っぽい。

 それじゃあ、とボク達はレナを先頭にして走り始める。上の階はまだまだたくさんあるんだから。


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