マイナス30度
「アロハみたいな異世界人は基本的に気の総量が多いんだよ。設定ベタだけど。それでも魔族とかエルフには敵わないけどな」
「気の相性があるから何でもかんでもって訳にはいかねーけど、異世界人は癖がないし、そのAIの解析機能があれば大概はいけるんじゃね?」
フローが嬉しいことを言っている。オプオプ博士もまんざらでもなさそう。
その日から僕の魔法修行が始まった。敵はいなくても、覚えて損はないだろう。
修行をしていて気がついたのだけど、どうやら僕は加熱系統よりも、冷却系統の魔法が合っているらしい。冷めた性格に合っているのかな?
フローは加熱系統が得意で太陽並みの熱量を扱えるとか。
僕はどんなに頑張っても絶対零度、すなわちマイナス273度位が限界だろうか?
オプオプ博士に聞いてみる。
「絶対零度より低い温度って扱えないのかな?」
「物理学的な考えだと難しい。温度を下げるってのは分子の運動を遅くすることと同義なんだよ。分子運動を完全に止めることは出来ないからね」
「極めれば時間も止めることも出来るのかな?」
「時間そのものを止める事はおそらく出来ない。でも、対象に流れる相対的な時間を遅くすることは出来るよ」
「熱とエネルギーは別物だけど、僕らが扱う位なら同義と考えても差し支えない範囲」
「認識としてはひと昔前のファンタジーだから、深く考えないほうが良いよ」
「とりあえず、マイナス30度を目指しましょう」
「何で?」
「バナナで釘が打てるようになります。武器にはなりますよ」
なるほどね。オプオプ博士がいて良かった。深読みし過ぎても面白くないから、雰囲気重視でやろう。
晩御飯を食べた後も僕は修行の為に表に出る。夜はフィジカルトレーニングに当てている。体力も大事。
「オプオプ、今日は満月だよ。この世界にも月の満ち欠けがあるんだね」
湖の周りをマラソンしていると、人影が見えた。
ものすごく綺麗なエルフ。少し同級生のニコに似ている…ニコやクラスメートは元気かな?
次の朝、朝食を食べながら尋ねる。
「ね?フロー。この辺りに他にもエルフって住んでいるの?昨日湖畔で見かけたんだよ」
「…さぁ、どうだろうね。あたしはここ数年は同族に会ったことはないよ」
フローの言葉に少しだけ含みを感じる。エルフ同士って仲が悪いのかな。
「あとさ、この世界にはダンジョンとか、冒険者ギルドって無いの?お約束の奴」
「あるよ。ダンジョンの最下層にはドラゴンもいるぞ。ちっこいけど」
「ギルドも一応あるけど、クエストは草刈りとかばっかだぞ」
「おい!トンガリ。マジで異世界スローライフさせるのか?」
オプオプ博士…どんどん口が悪くなるな。
確かにこのまま退屈なのもなんだかな。暇潰しにダンジョン散策でも行くとするかな?
「ダンジョンに行っても在来の魔物に手を出すなよ。基本絶滅危惧種だぞ。外来種なら良いけどな」
そんなこと言われても困るな。オプオプも区別はつかないだろうし。
「僕もオプオプ博士も、在来種と外来種の区別出来ないよ。フローも一緒に来てよ」
「あ?仕方ねーな。酒も残り少ねーから…外来種駆除でひと稼ぎすっか」
よし。なんだかんだでダンジョン攻略に出発!魔法の修行の成果を見せる時だ。




