勇気
里山までは充電も兼ねて歩いて行くことにした。フローは飛んで行こうってごねたけど、オプオプ博士がいないと困るかも?だし。
改めてこの世界を歩いてみると、僕達の世界とはやっぱり違いがある。一番の違いは植物かな?
基本的に土に埋まっていない。ほとんどが歩いている。不思議。あと、昆虫の類が一匹もいないな。
「ね、フロー。魔王になるかも知れない外来種ってどういう事?」
「あー。お前らの世界でもよ、天敵がいないと無双する生き物がいるだろ?異世界ごとに生態系が違うから、元の世界では大した事ない奴が別の世界だとむちゃくちゃ強くなる時があんだよな」
「で、転移する時に上手いことバブがかかると、手に負えなくなる。そいつらを分かりやすく魔王って分類してんだ」
「昔は神に近い存在の魔王もいたけどな、ほとんど勇者が倒したからな」
「バブ?バフじゃないの?オプオプ博士わかる?」
「アロハさん。意味合いとしては近いのですが、バフは一時的な能力アップで、バブとは永続的なそれを指します。更に重ねる事も可能との事ですが、実例の記録は過去に1件のみと信憑性に乏しい情報です」
そうなんだ。僕にはかかって無いのかな?気がついてないだけとか?
「そろそろ里山に着くぞ。一応警戒しろ」
フローが宙に浮かんで、僕もそれに続く。里山はさほど大きくなくて、これならすぐに見つかりそう。デカイ生き物探せばいいんでしょ?
「フロー、あれ。大きな生き物いるよ」
あれ?隣におじさんがいて手をふってる!
「フロー、大変!おじさんが襲われてるよ」
「あたしも確認した。行くよ!アロハはバナナ凍らせておきな!」
「おーい!助けてくれ。こいつ底なしなんだよ」
あれ?おじさん、なんだか襲われてるって感じじゃないな…それに…
「オプオプ博士?あれってバカデカイけどさ、ハムスターだよね?」
「はい。ネズミに形状が酷似している点と白ベースに黄土色の短い毛に覆われている点、尾の短さから適合率98%、ほぼ確実にゴールデンハムスターです」
人的害意は無さそう。ってフローが降りていった。
「おい!おっさん。テメー宝くじの当選者だろ?テンプレ無視して何してんだ!」
「そんなの知らないですよ。てか、あなたエルフ?何でジャージ?夢壊れるな」
「んなこたぁどうでもいい!動きやすいんだよ」
「それよりそいつ、お前が連れて来たのか?生き物は禁止って黄色い本に書いてあったろ」
「オレがこっちに飛ばされた時に付いてきちゃったんだよ。それに。元々は小さかったんだよ。餌食べる度にでかくなって。困ってるんだ」
「変なバブがかかってるね。かわいそうだけど、駆除するよ。下がってな」
フローが指パッチンのポーズを取る。あれは危ない。
「ちょっと待ってくれ。娘の大切な友達なんだよ。こいつを倒すなら、オレはオレの大切な者の為に…あんたらと戦わないといけない!」
おじさん、なんだかかっこいいセリフだけど…なんだかちょっとズレてるな。
「フローさん。落ち着いて下さい。襲って来ないのならば、対処方法を考えましょう。アロハさん。冷凍バナナをフローさんとおじさんにお裾分けして下さい」
「糞AIがそう言うなら、一旦矛は収めてやる。良く見りゃカワイーしな」
ふぅ。これで一旦落ち着くかな?僕はバナナの冷却温度をマイナス8度に調整した。




