勇者
「先生。父が昨日、異世界に転移してしまったんです。多分有馬君とおんなじで…」
とりあえず、先生には報告しておこうと思う。何かしらの知恵がもらえるかも知れないしね。
「皐月のお父さんも?流行ってるな。先生も新婚旅行は異世界に行ったよ。あの橙色の海は綺麗だったな。写真見る?」
うわ。先生呑気だな。わたしは困っている状況を説明した。
「誰か異世界に詳しい人いないですか?コールセンターに問い合わせてもらちが明かなくて…」
やっと先生が真剣な顔になってくれた。
「それなら…校長先生に聞いてみるといい。あの人、元勇者だから」
「ガチの人だよ。20年以上前の話らしいけど、校長室に当時の装備とか飾ってあるよ。ヘンテコな生き物もいるから面白いよ」
そういえば、校長室って入った事ないな。後で相談しに行こうかな?助けになるかもしれないしね。
「ありがとうございます」
先生は全く頼りにならなかったけど、校長先生が元勇者なら異世界の事詳しいはず。
落ち着かないまんま午前中の授業が終わった。そういえば、お弁当忘れちゃったな。まぁ良いか。
校長室行こ。ちょっと緊張するけどドアを叩いた。
「失礼します。校長先生、相談したい事が…」
「おー。君が皐月さんだね。担任から聞いているよ。座りなさい」
先生、伝えてくれてたんだ。使えないとか思ってごめんなさい。
「おおよその事は聞いたよ。まずは、この剣を見てごらん。魔剣だよ。魔王にトドメを刺した剣だ」
「もちろん、私1人の力で平和を勝ち取った訳ではないよ。最高の仲間のおかげさ。特に魔法使いのエルフがね…」
話長いな。英雄なのはわかったから、早く本題に入らせてくれないかな?
「もうダメかって諦めかけた時、『諦めたら、そこで試合終了ですよ』って勇気の言葉が聞こえたんだよ」
「勇者ってのは職業じゃないんだ。自ら勇気を奮い立たせる人。仲間に勇気を与える人」
「それが皆、勇者だ」
いや、そんな事聞きに来たんじゃ無いのに。キメ顔されても困るよ。失敗したかな?AIに聞いたほうがましだったかも。
「校長先生、ごめんなさい。そろそろ本題に…」
「いや~、すまない。私の英雄伝説を聞きたい生徒は久しぶりだからね。少し興奮してしまったようだ」
「最後にこれだけは…」
キーンコーンって嘘?始業のチャイムが鳴っちゃったよ…
伝説なんて求めてないよ。わたし、今泣いてもいいかな?




