蛇足・子育てを終えたある父親の話
ん……ああ、久しぶりだな。
本当に生きてたんだな、アンタ。
え?ああ。ウーロン茶だよこれ。
酒はだいぶ前に止めたんだ。
何せ体が資本だからな。
煙草?そもそも最初からやってねえよ。
ああ、うん。まあ……そうだな。
終わりだよ、終わり。
大学出て就職して、真面な男を捕まえて、入籍まで済ませて、子供までこさえた。
ようやく独り立ちしてくれて、やっとお役御免ってやつだよ。
あー、うん、そうだな。
……仕送りとか要らねえって言ってるんだけどな。
だって今のご時世、子育てにはそれなりに金がかかるだろ。
一応、俺だってまだ働いてるし、稼ぎも蓄えも、それなりにはあるんだ。
あー。いやねえ、現場で使える人材とか全然足りないらしくて、賃金を引き上げてでも、辞めさせてもらえないって言うかな。
一昔前みたいに、安かろう悪かろうな人材だけだと、流石に回せなくなってきてる、ってのが大きいんだろうなぁ……
だからずーっと、待遇まともにして次を育てろって言ってきたのによ。
いやホントに、今は何処の現場でも、ちゃんとした人材の取り合いだよ……マジでな。
AIとか自動化でどうこうできるような業種でもない、ってのもあるけ
ど……って、あー、話が脱線したな。
まあ、ともかくだ。
偶に元気な顔でも見せに来てくれれば、別にそれでいいんだよ。
ついでに、孫の姿も見せてくれるなら、いう事なしだ。
……そんなもんだろ、親なんてよ。
ん、幼馴染が今どうしてるかって?
……久しぶりに聞いたな、幼馴染の名前。
えーと……ぶっちゃけ知らん。興味もないし。
住めば都、っていうし、案外外国で楽しくやってるんじゃないか?
今の時代に、スマホも使えない辺境みたいだけどな。
ん、あの教師の方の話も……?
いやそっちも知らんけど。
え、結局他にも手を出してた、人生狂った他の生徒に刺されて……?
はあ……ふーん。よく知ってるな。
反応が薄い、って言われても……いや本気で今更だしなあ……
まあ、死んだなら——社会のゴミが一人消えたなら、それはそれで悪くもねえか。
でも、アンタ……ひょっとして、わざわざそれを聞かせるためにここまできたのか?
え、違う?本題は別。
ああ……何で、娘を育てたのか、ってか。
さあ、何でだろうな。
いや茶化してる訳じゃねえよ。
正直……自分でもよくわからん。
今だから言えるが……托卵が分かった時は、母親共々、本気でぶち■してやろうかとも思ったしな。
じゃあ何で、ってか。
……だから、知らん。
人に語って聞かせるような立派なお題目とかを、べらべら並べ立てるのも、ガラじゃねえしよ。
……愛情。はは、どうだろうな。
繰り返すようだが、べらべら歯の浮くような台詞を吐くのは性分に合わねえんだ。
そういうのは、もう少し気の利いた奴に聞いてくれや。
—―って、もう行くのか?
はあ、ふーん。
正直、面白くも無いって?そりゃそうだろ。
訳知り顔でピーピー喚いてる連中なんぞ、知るか。
別に俺の人生は、悪趣味なアホを楽しませるための娯楽じゃないんだしよ。
あーそうだよ、アホだアホ。
少しは、てめえも人生?省みやがれってんだ、このドアホ。
あーはいはい。気が向いたらまた話相手くらいはしてやるよ。
ほら行くならさっさといけ、さっさと。
……じゃあな。
まあ、どうせ言っても無駄だろうが……あんまり他人に迷惑かけんなよ、アンタも。
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