14.猿夢Ⅱ
(ここは………!)
ゆたかが目を開けると昨夜と同じ電車に乗ってることに気付く。
(昨日と同じ電車……なら、あの車掌も………毛むくじゃらの動物の腕、人じゃない獣の五本指……)
これまでの情報をまとめ、結論を出す
(これは"猿夢"か!!)
ゆたかはいつか見た怪談を思い出す。
("猿夢"……いくつか話はあるが、大筋として共通している点は"アナウンスが流れ、そのアナウンスに従って殺される。そして、猿夢で殺された人間は現実でも死ぬ"というよくある怪談………
ただし、"現実でも死ぬ"という点は予測でしかない…がもしもの時のためにその前提で考えるか…)
思考を終え、体を動かそうとするが首より上しか動かない。
(体は動かないか……でも昨日と違って首は動かせる!)
車内を見回し、様子を確認する。
(乗客は全員座っていて開いた席はない……あとは壁や天井から吊り下がっている広告がないくらいか……この猿、中々配慮ができるじゃねぇかよクソッタレ!)
心の中で冗談と毒を吐いていると、ついにアナウンスが流れ始める。
『次はえぐり出し〜次はえぐり出し〜くたばるお客様はご準備くださ〜いキキッ』
「ッッッ!!」
アナウンスが流れ終わると同時にゆたかから見て左側にある後方車両から昨日の車掌が乗り込む。
そしてその後ろから数匹の小さな猿が続く。
(車掌の赤い顔…ニホンザルか?けどニホンザルにしては毛の色が濃い………)
車掌について考えていると再びアナウンスが流れる。
『まもなく、えぐり出し〜えぐり出し〜キキッ』
そのアナウンスが流れ終わると、小さな猿2匹が最端の乗客によじ登る。
その猿たちの手にはギザギザの付いたスプーンが握られている。
『くたばれ下等種族キキキッ』
「「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!!!!!!!!」」
「ッッッッッ!!!!!」
絶叫と共にその乗客の目がえぐり出される。
目があった場所から血が噴き出し、車内に血の臭いが漂う。
ゆたかはその凄惨な状況とその乗客の形相から目を背ける。
『キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキッ』
ゆたかが再び目を向けると、車掌と猿たちの足元には4つの目玉が転がっていた。
(あの猿1列ずつ殺しているのか!?)
ゆたかと同じ向きに座っていた被害者を確認しようとする瞬間、再びアナウンスが流れる。
『次は活け造り〜次は活け造り〜くたばるお客様はご準備くださ〜いキキッ』
目玉をくり抜かれた乗客の隣に座っていた2人に中華包丁を持った猿が群がる。
『まもなく、活け造り〜活け造り〜キキッ』
「ッ!やめr」
『くたばれ下等種族キキキッ』
「「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ゴボッゴボッ!!!」」
「クソッ!」
『キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキッッ』
乗客の体に包丁が突き立てられ、各部位が切り落とされる。
そして、乗客が座っていた場所に肉片が綺麗に盛り付けられる。
「クソックソッ!何か!何か手は!?」
『次はすりおろし〜次はすりおろし〜くたばるお客様はご準備くださ〜いキキッ』
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「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ゆたかが叫んだ時、そこは電車ではなくベッドの上だった。
「はぁ……はぁ……あれ………?俺はなんで叫んで……何か悪い夢でも見たか……?」
「うるせぇんだよ!このクソガキが!」
ゆたかが困惑していると、ゆたかの部屋に男が怒鳴り込みゆたかを殴る。
「………………………………」
「なんだその目は?あ゙ぁ゙?喧嘩売ってんのか!?」
「喧嘩なんか売ってねぇよ。はいはい朝から叫んですみませんでした」
「それが親に対する態度かこのクソガキが!!!」
矢木 力巴羅はゆたかにひとしきり暴力を加えると満足したように部屋を後にする。
入れ替わりでだいすけが応急処置キットを持って入る。
「ゆたか大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫、気にすんな」
「分かった。でも手当てするからじっとしててね。」
「りょーかい」
だいすけは手当てをしながら謝る。
「助けてあげられなくてごめんな………お兄ちゃんにもっと腕っぷしがあれば良かったのに………それにお兄ちゃんのせいで………………」
「知性を筋力に吸われた哀れな生き物なんだからわざわざ勝とうとしなくていい。それに兄貴のせいじゃないから気にすんなって」
「そう…………でもあのゴミ虫共はいつか必ず殺すこの世に生まれてきたことを後悔させて地獄が生温く感じるほどの苦しみを与えてぶっ殺してやる……………」
「あんなゴミのせいで兄貴の人生をふいにする必要はねーよ、もったいない」
だいすけは泣きながら抱きつく。
「ゆたかってば、ホントにいい子!」
「はいはい、手当てが終わったんなら朝飯食いに降りるぞ」
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「ハンドシグナルなら俺も1つ知ってるのによ…」
みんとはそう言って手を叩き、2、OK、遠くを見るジェスチャーを続けて行う。
「パン
ツー
まる
見え」
「YEAAAH !」パシ!ピシ!ガシ!グッ!グッ!
「何やってるのよアンタ達……………」
みんと達がふざけている所に登校してきたゆたかが来る。
「おはよ…………」
「おはーって、アンタ酷い顔じゃない」
「あー今日もあんま眠れんくてな…まぁでも大したことないさ」
「そーなの?まーなんかキツかったら言いないさいよ?」
「はいはいありがと」
体調を少し盛るゆたかにしょーごはふと思い浮かんだ疑問をぶつける。
「今日も悪夢見た?」
「そんな感じ。作久田、そんなこと聞いてどったの?」
「いや、ちょっとね…………」
しょーごはゆたかを見つめながら考える。
そんな中、みんとはゆたかにこっそり話しかける。
「ねぇ、その傷って………」
「あぁ、これは気にすんな。体調が悪いのとは関係ない」
「でも……」
「大丈夫だって、そっちは朝の占いで最下位だった時くらいの感覚だからさ」
「それってめちゃくちゃ大事じゃん!!!」
「お前にとっての朝の占いはノストラダムスの予言かよ……」
ゆたかは朝の占いで最下位だった時のような憂鬱気分で1日を終える。
そして、また夜がやってくる。




