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再び模擬試合

「それじゃあ、次に私の魔法を見せるわね。ここだとあまり大きな魔法は使えないけれど」


 母さんはそう言いながら、少し離れた位置に火と土の壁を発動した。手前に火壁、奥に土壁となるように配置している。共に1メートルほどの厚さがある。


「これは私が得意としている魔法で『大氷槍』《だいひょうそう》っていうの」


 母さんが頭の上に片手をかざすと、先端の尖った長細い氷が形成され始め、一瞬にして母さんの体よりも大きなサイズへと成長した。

 かざしていた手を先程発動した壁へと向けて振り下ろすと、それに伴って凄まじい速度で氷の槍が射出される。


 大氷槍が手前の火壁に当たると、その大きさを削られていく。一回りほど小さくなった後に土壁へと至り、耳を劈くような衝突音とともにどちらの魔法も砕け散った。


「ふう、こんなもんかしら」


「すげぇ!」

「流石は一級冒険者様だな」

「『白氷』の名は伊達ではないな!」


 騎士たちが騒いでいるが、白氷?なんのことだ?


「全ての魔法威力はさることながら、無詠唱で、一瞬にしての魔法発動、更には三属性を同時に維持し続けるなんて……。流石は『白氷』の二つ名を冠するラウラ様、すごいです!」


 アルフレート様が無邪気な少年のようにはしゃいでいる。


「『白氷』だなんて、恥ずかしいわね」


 全員に絶賛され、母さんも照れたようにしている。


「一級冒険者でも持つ者の少ない二つ名を夫婦で持っているなんて、本当にすごいです!」


 『白氷』って母さんが持つ二つ名のことだったのか……。本で読んだ過去の英雄たちは、必ずと言っていい程二つ名持ちばかりだったが、まさか母さんたちまで持っていたなんてな。確か、ギルドから認められた冒険者が与えられるのだったかな。

 母さんの持つ特徴的な白髪に、得意魔法の氷で『白氷』か。じゃあ、父さんの二つ名ってどんなものだろう?


 それにしても、さっき母さんがやった一連の魔法はすごいな。

 威力、無詠唱、発動速度に関しての練度の高さ。それに複数属性の同時発動。

 複数属性を同時に発動する際には、体の中の魔力をそれぞれの属性に変換する、という過程を同時に行わなければならない。その難しさは例えるなら、右手と左手で複雑な異なった図形を同時に書くことを、寸分の狂い無く行わなければならないようなもの。更にはそのまま魔法の形成を行い、維持しなければならない。これができるのなら優秀な魔道士として認めて貰えるとも言われている。

 母さんはそれを三属性で行った上に、Ⅱ型魔法を二つとⅢ型魔法を一つだ。俺は未だに二属性の同時発動も成功していない。まだまだ修行が足りないな。


「俺が勝つに決まっているだろう!」

「目が見えなくとも、お前には負けんわ!」

「あ?じゃあやるか?」

「おお、やってやるわ」

「アルフ!木刀を貸せ!」

「ヴォル!木刀だ!」


 二人は未だに口論しており、ついには模擬試合を始めると言い出した。


 だったら最初っから自分たちで試合すればよかったのにな。


 俺たちから木刀を受け取った二人は距離をとって向き合っている。

 俺たちの時よりも大きく距離をとっている。


「ラウラ、合図を頼む」

「はあ、わかったわ。ローベルト、カール、怪我はしないようにね。……はじめ!」


 母さんの合図と同時に二人は地面を蹴って間合いを詰める。二人が立っていた地面は軽く抉れ、砂埃が舞っている。


 はやい!

 今まで見てきた父さんの動きよりも数段速く、前世では考えられない程の速度で動いていた。しっかりと見ていなければ目で追えない。

 魔物と戦うことで起こるレベルアップの効果か?


 カールは大上段から全力で振り下ろし、ローベルトは下段からカールの木刀めがけて振り上げている。


「はぁ!」

「おら!」


 カアァァンと鋭い音が響き、木刀がぶつかり合う。

 二人はお互いに相手の木刀を弾こうとするも、力が拮抗しているのか動かない。


 このままでは決着がつかないと思ったのか、ローベルトは腕の力を抜いた。

 力を入れたままのカールの木刀は地面へと向かうも、腕を返し、ローベルトの手を下から狙う。


 それを見たローベルトはすかさずカールの木刀の腹を柄尻で弾き、流れるように首を狙って横薙ぎに斬りつける。

 静刃流の動きだ。


「くっ!」


 カールは一歩引き、紙一重で剣を躱した。

 後ろに重心が寄っているカールに対し、前に体重が乗っているローベルト。

 ローベルトはそのまま猛刃流を使い攻め続ける。

 カールはそれを全て木刀で弾き、なんとか体勢を立て直している。


 徐々にカールも攻めに転じはじめた。


 カールが木刀を大きく弾くと、ローベルトの喉めがけて突き出す。


 ローベルトは喉元ギリギリまで引き寄せると、左足を軸に回転し突きを躱す。

 その勢いのまま、カールの右腕を木刀で打ち込む。ゴッっと鈍い音が響き、カールが距離をとった。


「……相変わらず、猛刃流と静刃流の切り替えがうまいな」

「お前こそ相変わらずの攻めだが、静刃流は実践レベルではないようだな」

「うるせえよ」


 ……なんという動きだ。

 二人を見ていたが、正直目で追うのがやっとだった。

 攻めは息つく暇もなく、父さんの静刃流は躱したと思った瞬間には木刀が相手の体に切迫している。


 アルフレートもあまりの攻防に息を呑んでいた。


 二人は再び中段に構え直した。


「次で決めるぞ」

「ああ、こっちもそのつもりだ」


 そういうと、二人の雰囲気がガラッと変わった。


 ……なんだ?二人を纏う空気?が変わったように見える。


「行くぞ!」

「おう!」


 二人が踏み込むと……姿が消えた。


「……は?」


 次に二人が見えた時、木刀同士がぶつかり砕け散っているのが見えた。


「ちいっ!」

「おら!」


 折れた木刀を捨て、お互いに殴りかかり……二人の頭を氷の塊が弾いた。


「がっ!」

「うお!」


「……え?」


 二人は軽く体が浮き、そのまま横向きに倒れた。

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