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気の使い方

「何しやがる、ラウラ!」

「いいところだったのに!」


 ラウラは二人を見て溜め息をついていた。



「何がいいとことなのよ。これ以上やったら怪我をするでしょう?」

「む……」

「まあ、多少はな……」

「……多少?」


 二人は母さんに睨まれて、目を逸らした。


「腕の一本や二本……」

「まあ、そのくらいなら……なあ?」

「それのどこが多少なのかしら?」


 腕って……。そんなレベルで戦おうとしていたのか?


 始めてみた二人の本気に俺は引いていた。

 回復魔法なんてものがあるからこその思考なのだろうな。


「こんなところで『気』まで使うなんて。本当に成長してないのね」

「お前こそ、あの魔法を頭に当てることないだろう!」


 カールは抗議しているが、あまり痛そうにはしていない。


「『気』を使っているんだから、あの程度で怪我するはずも無いでしょう?」


 『気』?

 昔、父さんに聞いたことがあったけれど、周りを感じ取るためのものじゃなかったのか?

 あのいきなり見えなくなったスピードと、母さんの魔法を頭に受けても痛いで済んだ頑丈さはその力だったのか?



「すごいなぁ!あれが一級冒険者パーティーの戦いか!」

「いやぁー、いいものが見れた!」

「久しぶりに辺境伯様の本気が見れたな!」


 周りで見ていた騎士たちは、父さんたちの戦いに興奮したように息巻いていた。

 あの様子だと、騎士よりも辺境伯様の方が強いみたいだ。それが当然なのかな?



 父さんと辺境伯様は母さんに呆れられながらも怒られているようだった。その3人の姿が板についており、日常茶飯事で行われていたことなのだろうと見て取れる。

 あんな戦いがいつも通りって、一級冒険者は想像していたよりも人外だったらしい。これも全部レベルアップの影響なのだろうな。


 逆に考えれば、それほどの力を持っていなければこの世界の魔物達と渡り合えないということ。だとすれば俺ももっと力をつけなければならないな。


 母さんの説教が落ち着いたタイミングで俺は3人に近づいていった。


「父さん、さっきのが『気』なの?」

「ん?ああ、そうか。ヴォルにはまだ気配を感知できるってことしか教えていなかったな」

「うん。二人の纏う空気?が変わったと思ったら、段違いに強くなってた」

「おお!『纏い』を感じることができたのか!流石は俺の息子だ、センスがあるな!」

「ほほう、やるじゃないかヴォルター君」


 辺境伯様にも褒められたので、軽くお辞儀をしておいた。

 最初に感じていた緊張は今までの辺境伯様を見ていたら、ほとんど感じなくなってしまったな。偉い貴族様と言うよりは、父さんの悪友といった印象が大きい。


「アルフはどうだった?」


 辺境伯様は俺の隣に立っていたアルフレート様に質問する。


「はい。魔力ではない、何かを感じました」

「はは!流石は俺の息子だな!」

「アルフレート君にもやはり才能があるようだな」


 憧れの人に褒めてもらえたのが嬉しいのか、顔が高揚し笑顔を浮かべている。


「そろそろかと思っていたが、ヴォルは『気』を扱うための修行に入ろう」

「え!本当!?」

「ああ、体力もついてきたし、体の使い方にも剣士として様になってきた。年齢としては大分早すぎる気もするが十分だろう」

「ローベルト。大分って、早すぎるんじゃないかしら?普通なら早くても成人してからじゃない」


 この世界の成人は15歳。義務教育なんかも存在していないからか、身体がしっかりとして、仕事ができるようになる頃には成人として扱われるようになるみたいだ。

 それに比べて俺はまだ8歳。確かに大分というよりはかなり早すぎるだろう。

 だが、それだけ父さんに俺の力を認められたということだ。自然とガッツポーズをしてしまった。


「ヴォルはすでにそれだけの力を持っているんだ。なに、この世界にはこの時期から『気』の修行を始める子だっているさ。俺だってかなり早い時期から使えるようになっていたしな」

「まあ、あなたが言うのならいいけれど」


 辺境伯様は二人の会話を聞いて何か考えている様子だった。


「……アルフ」

「はい、何でしょうお父上」

「お前も『気』の修行を始めよう」

「!本当ですか!」

「ああ、約束では10歳までは剣の修行のみと考えていたが、どうやらあまり悠長にはしていられないようだ」


 辺境伯様は父さんの方を見て、ニヤリと笑っている。


「それにお前も俺が想定していた以上に早く成長している。始めるにはいい頃合いだろう」

「あ、ありがとうございます!」


 余程嬉しいのだろう。笑顔を通り越して泣きそうになっている。


「ほほう。これまた同時期に始めるとはな」

「あまり余裕をこいていると痛い目を見るぞ、ローベルト」


 父さんと辺境伯様はニヤニヤと笑みを浮かべてマウントの取り合いをしようとしていた。


「もう、子供達を競争道具に使わないの」


 ラウラも呆れたようにしている。


「ほほ、話がついたようですし、そろそろ家に入られてはどうでしょうか?もうすぐ昼食の準備も終わりますぞ」


 頃合いを見てクロードが話かけてきた。先程まで姿が見えなかったのは昼食の準備を進めていたからだろう。

 そういえば夢中になっていたけれど、昼飯まだ食べてなかったな。道理でお腹が空くわけだ。


「そうだなクロード。ありがとう」

「俺とアルフも世話になっていいか?騎士たちは……流石に人数が多いから外で食事をさせよう」

「ほほ、もちろんでございます、カール様」

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