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模擬試合


 俺は木刀を持って、貴族様の息子と向かい合っている。


「よし、二人共準備はいいか?

 基本的には体に当たる前に寸止めだが、油断するなよ。

 真剣でなくとも、当たれば怪我をするぞ」


 本当にこの父親二人は試合をさせたいらしい。


 貴族様と試合をして怪我なんかさせてしまったら、問題になってしまうのではないか?


 ヴォルは向かい合っている、アルフレートの顔を見る。


「あ、アルフレート様はよろしいのですか?」


 チラチラと父さん達の方を見ていたアルフレート様はこちらに視線を移す。

 さっきも父さん達を見ていたし、どうしたのだろう?


「何がですか?」


 何がですか、ってそりゃ


「怪我をするかもしれないんですよ……?」


 アルフレート様は俺の言葉を聞いてキョトンとした顔をした。


「ああ、僕のことを心配していただけているのですか?」

「え、ええ。もし何かあれば問題に……」


 アルフレート様はニコリとこちらに笑いかける。


「心配ありませんよ」

「……ええっと、それはどういう?」

「怪我しませんから大丈夫です」


 アルフレート様は子供らしい笑顔で笑っている。


「……俺と試合をしても負けるわけが無いってことですか?」

「はい!」


 なんの疑いもない純粋な笑顔だ。


 この辺境伯様の息子さんは俺と試合をしても一度も食らわない自信があるらしい。


「俺も多少は鍛えていますから……」

「お気遣いなく。私はいつも騎士達と訓練をしていますから、同じ年の君には負けませんよ」


 ……ほう。どうやら自分の実力に余程の自身があるらしい。

 だったら


「勝負してみましょうか」


 アルフレートは先程までのニコニコとした顔ではなく、真剣な目でヴォルを見ている。


「ええ」


 この方もきっと本気で剣を習っているのだろうな。

 そして今までに培ってきた力に自信を持っているのだろう。


「よし、二人とも準備はいいか」


 アルフレート様と話していると、父さんが声をかけてきた


「はい」

「ええ」


 アルフレートとヴォルはお互いに構え、睨みあっている。


 ああ、これは……


 ヴォルは懐かしい気持ちを抱いていた。


 この人生では父さんとしか稽古をしてこなかったが、まともに勝負できたことはない。

 それもそうだ、大人を相手するにはあまりにこの体は幼すぎる。

 この体に生まれ変わってからは初めて感じる気持ちかもしれない。


 自分と同じ力を持つかもしれない相手に勝負を挑むこの気持ち。





「はじめ!」


 構えがしっかりとしている。

 流石騎士に鍛えられてると言うべきか、隙がない。


 二人はお互いの隙を窺いながらジリジリと間合いを詰めていく。



 まずは相手の動きをみるか。


 ヴォルは構えていた剣を正中線からほんの少しずらした。



「やぁ!」


 瞬間、アルフレートは地面を踏みしめ、振り上げた剣をヴォルの頭目掛けて打ち込む。


 しかし、その剣はヴォルに触れることなく、下へと受け流される。

 相手の打ち込みに対して自らの剣を沿わせて軌道をずらす、静刃流の基本型だ。


 アルフレートはかわされた剣が地面にあたる間際、左足をさらに踏み込み、袈裟がけに切り上げた。


 うっ!


 ヴォルは狙っていた切り返しの反撃をやめ、すぐさま後ろへと飛び退く。


 反撃の隙を与えず攻め込んでくる。

 猛刃流か。

 思ったよりもキレのある動きだ。




少し離れた位置で見守る大人たち。


「どうだ?あの歳にしてはなかなかだろう?」

「ああ、驚いた。確かに8歳には見えないな」


 自慢げに胸を張り、鼻を鳴らす辺境伯。

 周りで見ている騎士達も心なしか、誇らしげに見ている。


 隣で見ていたローベルトは言葉に反して落ち着いた様子で見ていた。




再び離れた二人は剣を中段に構え直す。


 先ほどよりも間合いを詰めてきているな。

 俺の静刃流の動きを見て、先手が苦手だと考えたのだろう。


 だったら……


「はぁ!」

「——っ!」


 剣を中段に構えたまま、全力でアルフレートへと詰め寄る。


 予想外の動きだったのだろう。

 アルフレートは一瞬体を硬直させ、剣先がほんの僅かに上がる。


 ヴォルはその隙を見逃さずに、剣をアルフレートの刃の下に滑り込ませた。

 そのまま絡めるように巻き上げる。


 猛刃流の動きだ。


 剣はアルフレートの手を離れた。


「あっ」


 アルフレートは飛ばされた剣を思わず目で追う。


 俺はすかさず、喉元へと剣をピタリと当てた。


「……参りました」


 ヴォルは剣を下ろし、礼をする。


「ありがとうございました」

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