Ⅱ型魔法
◇◆◇
「ピィー」
いつものように修行を始めようと外に出るとコクヨウが家の中から飛んで来た。
「おう、どうしたコクヨウ」
コクヨウを召喚してから二年ほどが経過した。俺は母さんに言われた通り、あれからもずっとⅠ型魔法の練習をし続けていた。
もちろんただ永遠と玉を打ち続けていたわけではない。魔法の形を矢のように飛ばしてみたり、大きさをできる限り大きくしたり小さくしたりと、魔力操作に磨きをかけていた。おかげでⅠ型魔法なら無詠唱でも発動することができるようになった。
一度母さんにⅡ型魔法は練習しないのかと聞いてみたことがあったが、難しい魔法ばかり練習していると魔力操作の訓練を蔑ろにしてしまう魔導士が多いらしい。剣道をはじめて少し経つと素振りを適当に流してしまう人と同じだな。
「さあ、ヴォル。Ⅱ型魔法の修行を始めるわよ」
そして今日、ついにⅡ型魔法を習う。
「うん!」
「まあ、といってもあの岩を貫通できるほどの魔力操作ができれば今日中には習得できるわよ」
「え、そうなの?」
Ⅱ型魔法を習うための条件は岩を貫通する水球を放てる様になることだった。魔法は魔力をより多く、より圧縮して放つことで威力が上がる。ただ魔力をたくさん込めても魔法が大きくなるだけで威力自体はそこまで上がらず、この絶妙な魔力操作がとても難しいのだ。
二年経ってやっと貫通させることができたが、母さんのように地面にめり込ませることはできない。さすがは母さんだよな。
「ええ、どんな魔法がⅡ型魔法なのかを理解すればすぐに発動できるわ」
Ⅱ型魔法はたしか形成した魔法を長時間維持できる、だったよな。
「例えばこの魔法、土壁」
母さんの前にちょうど体を隠す大きさの土の壁が現れた。
「この壁は魔力を流し続ける限り形を維持し続けるわ。けれど」
母さんが手を下げると土の壁がボロボロと崩れてしまった。
「魔力を注ぐのをやめると崩れてしまう。基本的には身を守るためか、敵を足止めするために使うことが多いわね」
守ったり足止めにするのはわかるが、攻撃としては使わないのか?
「攻撃系のⅡ型魔法ってないの?」
「そうね、あるにはあるけれどあまり実用的ではないって感じね。剣や槍のような形をつくって振るうことはできるけれど、その武器には切れ味がなくただの魔法としての効果しかない。だったらⅠ型魔法で放って当てたほうが効率がいいわ」
「そっか」
なるほど、たしかに魔法で武器を形成して振り回すのならば飛ばして当てたほうが使いやすい。
「武器に魔法を付加させて戦う、みたいなことはできるの?」
ならば、剣自体に魔法の力を加えれば威力も増すし、戦い方に幅がでるのではないだろうか。
「ええ、できるわ。武器に魔法を纏わせたまま、戦闘に用いる方法はⅡ型魔法に分類されるわ。剣の斬撃に加えて、火魔法でのダメージを与える、といったような使い方ができるわ。けれど、そもそもⅡ型魔法を長時間維持したまま、魔物と渡り合えるほどの剣術を習得している人なんてほんの一握り。一級冒険者でもどちらかの道に特化した冒険者しかいないわ」
ああ、そうか。そもそも魔法と剣術を両方とも戦闘で使えるほどに鍛え上げた人がいないのか。
けれど、この神様にもらった魔法の才能と、前世で鍛え上げた剣術を使えばできるのではないだろうか……?まあ、まずは俺がⅡ型魔法を使えるようにならなければ元も子もない話だけれど。
「それじゃあ、早速発動してみましょう。水の壁の方が発動しやすいわよね」
「うん、水壁でやってみるよ」
Ⅱ型の魔法であってもⅠ型の魔法とさほど変わらない。ただ魔力を流し続けて形を維持するだけだ。
「水壁」
ヴォルの前に体を隠す程の大きさの水の壁が出来上がった。
あとはこれを維持し続ければ。
「え?」
母さんが無詠唱で放った水球が俺の水壁を貫通して顔の横を通り過ぎた。
「あ、危ないじゃないか!」
「当てないから大丈夫よ」
母さんは微笑んでいるが、放たれた水球が地面にめり込んでいる。あれに当たったら多分顔吹っ飛ぶよな。
「今度は私の水壁に水球を打ってみて」
「う、うん」
俺の放った水球は母の作った壁に止められてしまい、貫通することはなかった。
「そっか、これも魔力を込めて圧縮するほど防御力が上がるんだね」
「ええ、けれどその分消費し続ける魔力も大きくなるわ。だから必要最低限なサイズの壁を作り出さなければすぐに魔力切れを起こすわよ」
確かに、防御するたびに体と同じサイズの壁を出し続けていたらすぐにぶっ倒れてしまいそうだ。
「じゃあ、Ⅱ型魔法の質を高める修行を始めましょうか」
「うん!」




