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召喚獣

◇◆◇


 魔法を発動できるようになってから数週間が経過した。

 あれから他の二属性に関しても微風、砂礫を発動することができた。発動するまでの時間から得意属性を考えてみると、水→風→火→土ではないかと母さんに言われた。かといって土属性が不得意というわけでもなく、いわゆるオールラウンダーというものらしい。神様のおかげかと思ったがどうやら母さんもオールラウンダーなのでそれを受け継いだのかな。さすがは母さんだ。


「水球!」


 今は全属性のⅠ型魔法を練習している。魔法をスムーズに発動できる様になるまでは基本の繰り返しってことだな。素振りをしているようなものだ。基本の練習はどこまでいっても終わりは無いからな。

 ヴォルが放った水球は岩に向かって飛んでいったが、貫通すること無く消滅した。

 母さんが最初に見せてくれた水球は岩を貫通した上に、地面にもめり込んでいったよな。うーん。


「母さんってどのくらいの効率で魔法に変換できているの?」


 魔力から魔法へと変換する際、必ず無駄に放出してしまう魔力が存在する。その分だけ、たくさんの魔力を無駄に消費してしまっている。


「そうね、大体は九割、調子がいいときはほぼ全てかしら」

「す、すごいね」


 俺はいま体感的には四割から五割といった程度だ。


「基本を練習していれば段々と慣れていくわ。魔力の効率を上げれば打てる魔法の量が多くなることはもちろん、発動までの時間が早くなる。魔力の操作力が上がれば魔法に込める魔力量、つまりは威力を上げ、更にはⅡ型、Ⅲ型の魔法を発動できるようになるわ」

「うん、頑張るよ」


 ということで、これからはひたすらⅠ型魔法の練習だ。なんだか前世の父さんと試合をさせてもらえなかったあの頃を思い出すな。


「風球!」


 先程放った水球よりは少し発動するまでの時間がかかっているのを感じる。


「ふう」

「魔力は使い切ったかしら」

「う、うん」


 この魔力切れの感覚は何度やっても慣れない。


「そうしたら今日の修行は終わりにしましょうか」


 母さんは少し何かを考えているようだが、どうしたのだろう。


「だいぶ魔法の発動に慣れてきたわね。そろそろ、召喚魔法ができるかしら」

「おお!召喚魔法!」


 ついに俺の召喚獣を出せるのか!前世の男一人暮らしではペットは無理だったけど、実は飼ってみたかったんだよな。


「まあ、今日は魔力を使い切ってしまったから召喚魔法は明日ね。今日中にどんな召喚獣にしたいかのイメージを作っておいてね」

「え、イメージで召喚獣が決まるの?」

「ええ、召喚獣はその人の望む形となって現れるわ。例えば私なんかは、ガルム」


 母さんの腰につけていた双円錐形のガラス細工のようなものが光を放ち、母さんの横に3メートルを超えるほどの大きさの狼が現れた。母さんの髪と同じ純白の毛並みに鋭い目つき。


「か、かっこいい」


 狼は喉を鳴らして母さんにかまってもらいそうにすり寄る。


「この子はガルム。私の召喚獣よ。多くの魔導士は常に召喚獣を出した状態で暮らすことが多いけれど、この子は体が大きくてね。出しっぱなしにはできないから、この召喚獣を入れておくことができる魔道具の中にしまっているのよ」

「召喚獣を入れておく魔道具?」

「そう、魔道具に関しては知っているわよね」


 ああ、確かダンジョンと呼ばれる魔物の巣窟からまれに出てくるもので、人間の技術では再現できないものばかりなんだったっけ。ダンジョンは神様の恩恵とも言われているけれど、多分あれだな、暇つぶしだろうな。


「うん、ダンジョンから出てくる道具だよね」

「ええ、これもその一つ。少量の魔力を消費するだけで召喚獣の出し入れができるようになるのよ」


 こんな狼がどうやって小さい道具の中に入ってるんだよ、神様よ。


「私は魔力は高いけれど、体を動かすことに関してはからっきし。この子は戦うときには前衛で守ってくれて、疲れたときには私を乗せて移動してくれるわ。まさに私の弱点を補ってくれる存在なの」


 弱点を補う存在か。俺の弱点、か。


「まあ、今日は一日あなただけの召喚獣を考えてみて」




 次の日、母さんから召喚獣の作り出し方を教わった。あとは自分のイメージ通りに召喚するだけだ。


「イメージはできたのね」

「うん」

「じゃあ、さっき教えた手順で召喚してみて」


 召喚獣を作り出すには想像した獣を強くイメージしながら、魔力を全力で放出し続ける。その時に獣をよりイメージできる言葉を唱えると、より安定して発動できるらしい。もうひとりの自分を作り出すようなものらしい。


「いきます!」


 俺は目をつむって集中を始めた。イメージをより強く、全力で魔力を放出する。


「空を駆ける獣」


 放出していた魔力が集まり出し、形作っていく。


「……できた」


 俺の前には、鋭い眼光に立派なくちばしと爪、大きな純黒の羽を持った鷹が現れた。

 イメージした通りだ。めっちゃかっこいい。やっぱり飼うならこういうやつがいい。それが男心ってもんだろう。

 俺が手を伸ばすと大きな翼を広げて飛び乗ってきた。


「空を飛ぶ召喚獣ね、いいわね。あなたの魔力ならいつかは乗れるようになるかもしれないわね」

「え、乗れないことってあるの?」

「ええ、召喚獣の強さや大きさは魔力量に伴って成長していくの。一般的な魔導士の魔力量程度では大体は1メートルほどが限界ね。ガルムのように3メートルを超えるようなのは滅多にいないわ」


 そうか、空を飛べるって簡単に考えていたがそういうわけでもないのか。


「名前はどうするの?」


 うーん、鷹の名前か。この子の特徴は真っ黒な大きな翼だよな。黒鷹、単純だけどコクヨウなんてどうだろう。


「お前の名前はコクヨウだ」


 コクヨウは気に入ったのか、頭を擦り寄せてくる。


「よし、魔力量をさっさと上げて一緒に空を飛ぼうな、相棒!」


 黒鷹はピィーと鳴き声を上げ、大きな黒い翼をはためかす。

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