五話 統合された世界たち
遅れて本気ですみません
回収者の探索は終わらない。
次に訪れたのは石畳と煉瓦の街、蒸気と魔法が融合した独特な世界感であった。
大気汚染で暗くなった空と海だが、街と人々の生存圏だけは不自然に青々とした空が広がっている。
まるで空を透明な筒で区切っているかのようだ。
しばらく街を散策していると建物の影から二人の全身鎧を引き連れた華美な装いの男が出てきてこちらに向いた、男は一瞬驚いたように見えたが、顔を引き締めこちらに近づいてきた。
「これはこれは、禁忌の強奪者様ではないですか」
この男と自身は会った事があったようだ、しかし記憶を掘り返しても思い出せない、男は服装こそ華美であるが顔は印象に残るものではなく身長も体格もよく見るいわゆる普通である。
強いて特徴を挙げるとすれば、数ある世界を見てきた回収者を以てして普通と言わせる普遍性である。
どの技術体系の世界でもこの男は普通の外見と見れてしまうそんな男であった。
そこまで観察し思い至ったそんな人間は一人しかいないと、男の名前はタブロ・ヒイラギ、自称【世界間転移補助的旅行斡旋商会】と長ったらしく言いにくい旅行屋の会長である。
「そちらも下見ですかな?」
続けてタブロは問うてくる、それに小さく頷き話しを促した。
「では情報交換といきましょうか」
タブロの話しを一通り聞いた結果をまとめるとこうだ。
今回の騒動で統合された世界は全部で二十四であり、世界を持たない者も確認されているようだ。
本人からすれば異世界転移みたいなものであろうか?まぁ置いておこう、タブロは既に二十二の世界を下見していたようである、仕事が早いのは職業柄だろう、それにしても早いが。
二十二の世界の殆どが独自の文明を持っているようだ。
しかし大きさはこの世界と大差のないものばかりであるという事も判明した、ならばこれ以上の調査は無駄である。
ちなみに自身からは何も提供しなかった、何故ならばタブロは話し終えた途端にどの世界が旅行に向くのか、どういう旅行が出来るのかと延々と説明し始めたからである。
話す労力も話を遮る努力も無意味であると思いその場を去った。
○○
揺らめく陽炎のように姿がブレて回収者は姿を消した。
「……行ったか」
揺らめきが完全に消えた頃、小さく息を吐きながらタブロはそう呟いた。
「今の者は一体何者なのですか?」
全身鎧の片割れから聞こえる不釣合いな少女の声が困ったようにタブロに尋ねる。
この少女は三年前から旅行屋で働く護衛の一人で名前をルリアと言う、整った容姿と金糸のような長い髪を持つスレンダーな女性だ、ただし鎧やローブを脱ぐことを頑なに嫌がる変人であるが。
「彼、いや彼女?あぁもういい、奴は回収者という現象だ」
「……現象ですか?人のように見えましたが」
タブロの答えにルリアは首を傾げる、彼女から見た回収者は全身鎧の人型に見えた為だった。
彼女は知らない回収者の存在は禁忌を犯した世界の者かその場に居合わせたものしか知らないのだ。
「奴は見た者によって姿を変える、生きる災害だ千の禁忌を率いる禁忌の守護者であり、英雄の敵だ。」
「英雄の敵……悪い存在って事ですか?」
ルリアは率直に感じたことを口にする、物語において英雄の敵は悪者であり魔王でありドラゴンやモンスターの様に強力で凶悪な存在だからだ。
「いや、あれは現象だ雨が降ると地面が濡れるのと同じで禁忌に手を出した英雄から国から世界から禁忌を奪う、ある意味では世界から禁忌を取り払う掃除屋のようなものだ。」
タブロはそう言うとポケットから木製のドアノブを取り出し虚空で回す。
「さぁ行くぞ今回の世界はあと二つだ。」
まるで扉のように開かれたゲートを潜りながらルリアは質問する。
「このドアノブも十分チートですよね、これは狙われないのですか?」
それを聞いたタブロは一瞬目を丸くしてガハハと笑いながらルリアに応えたのだ。
「この魔法道具はチートと呼ぶにはおこがましいよ、もし転移系の禁止道具なら想像上の場所にも行けちまう、理想のリゾートや希少鉱石で出来た山だってな!」
タブロはそう言うと視界の端に映ったクラゲに苦笑するのだった。
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