【番外編:ワンマンCEO、家族連絡の効率化を思いつく】
政治劇ばっかりで退屈かなって(`・ω・´)
ノルマンディー、ルーアン本営。
羊皮紙の山と、各地へ送る早馬の手配に追われていたヘンリー二世は、
ふと天啓を受けたように顔を上げた。
「そうだ」
側近たちが一斉に手を止める。
ヘンリーは机の上に散らばった書簡を見渡した。
「手紙では届くまでに時間がかかる。その間に状況は変わり、
伝言を挟めば余計な解釈も加わる」
少し考える。
「ならば、全員へ同時に伝えればよいのではないか」
その発想自体は、間違っていなかった。
むしろ非常に合理的だった。
問題は。
それを思いついたのが「ヘンリー二世」だったことである。
こうして。
アンジュー家の情報共有を劇的に効率化するはずだった、
新たな連絡網が誕生した。
そして同時に。
歴史上もっとも不穏な家族チャットの運用が開始された。
◆
”ヘンリー二世がグループを作成しました”
”ヘンリー二世が アリエノール、リチャード、ジェフリー、ジョン を招待しました”
”全員が参加しました(※強制)”
【グループ名:家族連絡用(5)】
・ヘンリー二世
「今後、家族間の連絡はこれを使う。伝令では遅く、途中で誤解も生じる。
全員に同時に伝えれば効率的だ」
・アリエノール
「は?何これ( ゜д゜)」
・ジェフリー
「ぐるーぷ……らいん?(´・ω・`)」
・ジョン
「|゜Д゜)))コソーリ!!!!」
・リチャード
「抜ける( ˘ω˘ )」
・ヘンリー二世
「抜けるな」
・リチャード
「なんで(=_=)」
・ヘンリー二世
「家族だからだ」
・ジョン
「その理由でもう嫌な予感しかしないんですけど
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」
・アリエノール
「ていうか、なんでアンタが管理者なのよ(# ゜Д゜)」
・ヘンリー二世
「私が作ったからだ。当然だろう」
・ジェフリー
「最悪の権限設計(´-ω-`)」
・ヘンリー二世
「ジェフリー。父親に向かって口を慎め」
・ジェフリー
「客観的なシステム評価ですよ父上(・∀・)」
・アリエノール
「そうよ! 管理者がワンマン社長で、監査役もいなくて、
強制参加で退会不可って何そのブラック企業チャット!!(# ゜Д゜)」
・ヘンリー二世
「誰が退会不可と言った」
・リチャード
「じゃ抜ける( ˘ω˘ )」
・ヘンリー二世
「抜けるな」
・ジェフリー
「退会不可じゃん」
・ジョン
「退路がない(´;ω;`)」
・アリエノール
「しかもアンタね!
『誤解が生じるから全員に同時に伝える』じゃないのよ!」
・ヘンリー二世
「何がだ」
・アリエノール
「情報共有の速度が問題なんじゃなくて、アンタが投げてくる指示そのものが
大体無茶振りなの!!(# ゜Д゜)」
・ヘンリー二世
「お前はオールド・サラムで大人しくしていればよい」
・アリエノール
「だったらなんで招待したのよォォォッ!!ヽ(`Д´)ノ」
・ジェフリー
「母上正論(`・ω・´)b」
・リチャード
「草ψ(・∀・)ψ」
・ジョン
「草(^Д^)」
・ヘンリー二世
「ここは雑談をする場所ではない」
・アリエノール
「家族LINEで雑談禁止なの!?Σ(゜Д゜)」
・ジェフリー
「用途が完全に業務連絡ですね(´-ω-`)」
・リチャード
「通知切った( ˘ω˘ )」
・ヘンリー二世
「リチャード。通知を切るな」
・リチャード
「うるさいから嫌だ(=_=)」
・ヘンリー二世
「重要な連絡を見落とすだろう」
・リチャード
「重要なら手紙で寄越せ(#^ω^)」
・アリエノール
「LINE導入の意味が開始五分で消滅したわね(・∇・)」
・ジョン
「あの……僕これ、何を見ればいいんですか?(´・ω・`)」
・ジェフリー
「ジョン、右上の設定から通知オフにして、
そっと画面を伏せるんだ(`・ω・´)」
・ジョン
「なるほど!(`・ω・´)」
・ヘンリー二世
「弟に余計な知恵をつけるなジェフリー」
・ジェフリー
「生活防衛です(´-ω-`)」
・リチャード
「じゃ( ˘ω˘ )ノ」
・ヘンリー二世
「待て」
・リチャード
「何(# ゜Д゜)」
・ヘンリー二世
「今後の重要事項はすべてここで共有する。必ず確認しろ」
・リチャード
「嫌だ」
・ヘンリー二世
「決定事項だ」
・リチャード
「だが断る」
・アリエノール
「開始十分で『理解したけど従わない』が発生してるじゃないの(# ゜Д゜)」
・ジェフリー
「現在進行形で本編と同じことやってる(´・ω・`)」
・ジョン
「僕、退会ボタン押していいですか……?(´;ω;`)」
・ヘンリー二世
「駄目だ」
・ジョン
「聞く前から答えが決まってた。゜(゜´Д`゜)゜。」
・アリエノール
「ジョン、覚えておきなさい」
・ジョン
「はい(´;ω;`)」
・アリエノール
「この家では『相談』って言われても、
だいたい結論は先に決まってるわ(`・ω・´)」
・ジェフリー
「母上、それ僕も最近思ってました(`・ω・´)」
・リチャード
「知ってる( ˘ω˘ )」
・ヘンリー二世
「お前たちは、この便利な仕組みをなぜ素直に使えんのだ」
・アリエノール
「便利な仕組みを作った本人が一番使い方間違えてるからよ!!(# ゜Д゜)」
・ジェフリー
「運用設計の問題ですね」
・ジョン
「僕もう怖い通知来ないように祈って寝ます(´・ω・`)」
・リチャード
「通知切れば来ないぞ( ̄ー ̄)ニヤリ」
・ジョン
「兄上!!Σ(゜Д゜)」
・ヘンリー二世
「切るな」
・ジョン
「(´;ω;`)」
こうして。
家族間の誤解をなくし、情報共有を円滑にするために導入された
”アンジュー家グループLINE”は、運用開始から十数分で、
管理者への不満
通知拒否
退会希望
権限設計への批判
そして父親への不信
そのすべてを可視化することに成功した。
ある意味、
情報共有ツールとしては、極めて優秀だった。
※本作は、実在の人物・史実をもとにしたフィクションです。
人物の年齢、出来事の時期、当時の習慣や文化などは、史料によって諸説あるものも多く、物語として読みやすくするために一部再構成・創作を含みます。
できるだけ当時の空気を大切にしつつ、主人公は相変わらず世界史8点のまま進みます。
なお、主人公より作者の方がちょっとだけ世界史に詳しい……はずです。多分…?
「そこ違うかも?」という部分も、ゆるく楽しんでいただければ嬉しいです。




