第6話 離散
「ようこそ」
女の声が響いた瞬間。
三人のスマホの画面が真っ黒になった。
「なんだよ!」
聖が電源ボタンを連打する。
「壊れた……?」
Ayaの声も震えている。
そして。
ゴォッ。
突然、広間に冷たい風が吹き抜けた。
バタン!!
入口の扉が勢いよく閉まる。
「!」
「おい!」
向が駆け寄る。
しかし。
「開かない!」
三人で押しても、びくともしない。
その時だった。
カサ……
カサ……
天井から音が聞こえる。
「まただ……」
向が顔を上げる。
暗闇。
何も見えない。
しかし。
「クスクス……」
笑い声。
「逃げるぞ!」
聖が叫んだ。
三人は走り出す。
だが。
廊下に出た瞬間。
どこからともなく白い霧が広がる。
「向!」
「Aya!」
「聖!」
互いの声は聞こえる。
しかし姿が見えない。
「どこだ!」
「こっち!」
「待って!」
その時。
向の目の前を、白い着物の女が横切った。
「!」
向が立ち止まる。
次の瞬間。
霧が晴れていた。
「……え?」
誰もいない。
「Aya!」
「聖!」
返事はない。
向は一人になっていた。
***
「向!」
Ayaは暗い部屋で目を覚ました。
「……どこ?」
見覚えのない和室。
窓の外は真っ暗。
「向!」
「聖!」
返事はない。
「うそ……」
すると。
廊下の奥から。
コン。
コン。
下駄の音。
誰かが歩いてくる。
「誰?」
足音は止まる。
障子の向こう。
長い髪の影が映っていた。
「……」
Ayaは息を止める。
しかし影は動かない。
「向……?」
勇気を出して障子を開く。
誰もいない。
ただ。
畳の上に一本。
白い糸が落ちていた。
***
「くそ!」
聖は階段の下にいた。
「マジかよ!」
懐中電灯を点ける。
薄暗い地下通路。
「二人とはぐれた……?」
すると。
奥から声。
「聖」
「!」
向の声だった。
「向!」
「どこだ!」
「こっちだ」
「早く」
聖は安心して走り出す。
だが。
途中で足を止めた。
「……待てよ」
向の声。
聞こえているのは前から。
しかし。
後ろからも。
「聖」
「こっちだ」
振り返る。
「!」
後ろにも向の声。
前にも向の声。
そして。
左右からも。
「聖」
「聖」
「こっち」
「早く」
「なんだよ……」
聖の顔から血の気が引く。
「誰なんだよ!!」
すると。
四方から。
クスクス……
女の笑い声。
***
一方。
向は出口を探していた。
「落ち着け……」
「まず二人を探さないと」
その時。
遠くからAyaの声。
「向!」
「助けて!」
「Aya!」
向は声の方へ走り出す。
しかし。
彼はまだ知らなかった。
その声が。
本当にAyaのものなのかを。
そして。
天井の梁の上。
逆さまになった女が。
三人を見下ろしながら。
嬉しそうに笑っていた。
「仲良く遊びましょう」




