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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

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勝つヤツ

 放課後の教室。

 第2ラウンドの口火を切ったのはマルコだった。


「お前たちの茶会は中止だ」

「は? 何勝手に決めてんの?

 殿下はそのお茶会のおかげで前向きになったんだよ?」


 マルコは反応せず、冷静な声で続ける。


「その代わり、私が茶会を開く」

「何それ。ただの自己顕示じゃん」

「違う。

 そちらには下位貴族が参加しているからだ」

「ねえ、学園では差別禁止って知ってる?」

「無論承知しているとも。

 だが、王族である殿下が誰とでも親しくしていいという意味ではない。

 中止は差別ではなく、王家の権威を守るためだ。

 それでよろしいですね、殿下」


 頑なな視線が王子に向けられる。

 だが、王子は首を縦に振らなかった。


「えっと、マルコはそう言うけど、爵位で参加する人を選ぶのは学則違反だよね?」

「それは建前です」

「建前ならそれが正しいでしょ?」

「それはそうですが……」

「僕は人と話すのが苦手だったけど、お茶会のおかげで少し話せるようになった。

 アレッサンドロ君とリコ君は親切だし、ブルーナさんは優しくしてくれる。パトリツィアだって昔みたいに怖くない」


 あの、もうひとりいませんでした?


「私よりそちらを選ぶと?」


 マルコの声が固くなる。


「そうじゃなくて!

 もちろんマルコたちともお茶会したい。

 だから、どっちもやるのはどうかな?

 そうすれば、あ、なんでもない」

「……だよな! そうすればもっと食えるよな!」


 あ、キレた。


「お前のその食い意地のために、俺がどれだけ苦労してきたかわかってるか⁉

 もう一回茶会を増やしたらその分太るだけだろうが!」

「で、でも、運動してるし」

「毎日せっせと歩いてやっと現状維持じゃねえか!

 じゃあ倍歩くのか? そんな時間どこにあんだよ!

 わかれ !食うな! お前はな、食えば食っただけ太るんだよ!」


 わお! 全部言っちゃったよ。

 みんなもう知ってるけど、ほんとだったら大問題だよ?

 珍しく自己主張した王子は、かわいそうに完全に縮こまってる。


 でも、考えてみれば、マルコも犬Pの被害者なんだよね。 

 アレが「コメディ設定を」とか言い出さなければ、子豚の食欲管理なんかしてない。

 私も同じ被害者なので申し訳ないとは思わないけど、同情はする。

 あと、怒る顔もいい。


「あーあ、かっこ悪ーい」


 ピリピリした空気を、ニコロの間延びした声が弛緩させる。


「じゃあ、辞めればよかったじゃん。

 他に候補はいっぱいいたんだし。

 でも、君は絶対にその場所を明け渡さなかったよね?

 なんで?

 殿下は迷惑だと思っているのに」

「……任務を投げ出すわけにはいかないからだ」

「うっそー。

 殿下のためにって頑張ってる自分が好きだからでしょ?

 殿下の側近って自慢できるもんね」

「そんなことはない!」

「あるよ。君は自分のために殿下にまとわりついてるだけ。

 殿下の気持ちなんかちっとも考えちゃいない」


 ……え?

 今なんて言った?

 私はニコロの言葉を反芻し、衝撃に体を震わせた。


 それ、私が書いたセリフ!

 ゲームではマルコじゃなくて悪役令嬢に言うんだけど、そんなことはどうでもいい!

 ニコロがシナリオと一字一句同じセリフを喋った! それが大事!


 どうしよう、嬉しい!

 これ! 私が見たかったのこれ!

 設定がぐちゃぐちゃになってて諦めたけど、まさかここで見られるとは!


 ――脳内狂喜乱舞はしばらく続いて、我に返ったらマルコとニコロの言い争いは軍と騎士団の話にまで膨らんでいた。


 その傍で、王子がポツンと置き去りにされている。


 どう収拾つけるんだろうって思ってたら、ブルーナさんがすっと王子に近づき、世間話のように話しかけた。


「殿下、先日お話したお芝居にはいつ参りましょうか」

「なんだ貴様!入ってくるな!」


 気づいたマルコが叫ぶ。


「問題でも?

 おふたりは殿下とは関係ない話をされているのではないのですか?」

「関係あるに決まっているだろう!」

「いや、ブルーナちゃんの言う通りだね」


 怒鳴るマルコにニコロがかぶせる。


「そうだよね、今は軍も騎士団も関係ないよね。

 ありがとね。

 じゃあ、せっかくだからブルーナちゃんの意見も聞こうかな」


 そんで巻き込む。


「意見、ですか?」

「うん。僕とマルコの話聞いてたでしょ?

 どう思った?僕の言ってること間違ってる?」

「いえ。ニコロ様のご指摘の通りだと思います。

 マルコ様が殿下のお傍にいるのは、護衛のため以外にも、ご自分のプライドを守るためというのは的を射ていると思いました」

「聞いた? ブルーナちゃんもこう言ってるでしょ?

 君は少し恥を知ったほうがいいよ」

「ぐっ……」


 マルコは何も言い返せずにうつむく。

 ニコロが勝ち誇った笑みを浮かべる。


「それからニコロ様も何か勘違いなさっているようですので、念のため確認させて下さい」


 だが、ブルーナさんの話はまだ終わっていなかった。


「アドルフォ殿下、殿下はマルコ様のことを迷惑だと思っておいでですか?」

「ううん、思ってない」

「だそうです。

 ニコロ様も恥をお知りになって、自分の勝手な思い込みを押し付けるのをやめたらいかがでしょう?」

「……」


 一瞬頬を引きつらせて、ニコロは急に話を変えた。


「……あははは!いいね、ブルーナちゃん。

 僕にそこまで言った女の子は君が初めてだよ。

 マジで好きになっちゃいそう。

 どう? 僕と付き合わない?」

「お申し出は光栄ですが、私には婚約者がおります」

「そうなの?乗り換えちゃいなよ。玉の輿だよ?」


 その言葉に、ブルーナさんは小首を傾げた。


「玉の輿、ですか。

 ちなみに、私の婚約者の実家の売り上げは年22億リデルです。

 玉の輿ということはそれ以上の収入がお有りなのですね?」

「え?」

「私は、嫁いだらそれを10倍にしますので将来的には220億になります」


 ニコロの頬が再び引きつった。


「……ははは、ブルーナちゃん冗談うまいね。

 僕も冗談だから安心して?」

「承知しました」

「うん。じゃあ、オチがついたところで僕は帰るよ。

 あ、マルコは無視してね。触ると面倒だから。

 まったね~」


 ニコロは超速で逃げた。

 わかる。論破され、逆襲で家格まで持ち出して口説きに入ったのに、あそこまで完璧に返り討ちにされたら、もう逃げるしかないよね。


 まあ、ギリギリだったけど、最後までキャラをキープしたのは偉いと思う。

 さすが本編設定。


 キープに失敗して真っ白になっているマルコの横で、ブルーナさんが平常運転を続ける。


「殿下、申し訳ありません。話が途中になってしまいました。

 有象無象はいなくなりましたので、観劇のお話しを致しましょう」

「あ、うん」


 隣の有象無象の抜け殻を気にしながらも、ブルーナさんの圧に屈した王子は、劇場に行く段取りを決めた。


「では当日よろしくお願いいたします」


 そう言ってブルーナさんはマルコに視線を向けた。


「マルコ様は万一に備え、扉の外で警備をお願いします」

「……」

「マルコ様、聞いておいでですか?」


 抜け殻がのろのろと視線を上げた

 

「殿下と私は観劇に参りますので、当日は扉の外で警備をお願いします」 

「……観劇?」

「あなたは殿下の護衛ですよね? 学園外こそ重要なのではありませんか?」

「……承知した」

「詳細は殿下にお伺いください。

 では、失礼致します」


 ブルーナさんは優雅に一礼するとスタスタと教室を後にした。

 ほどなく王子も、少し顔色を取り戻したマルコたち派閥メンバーに囲まれて帰っていった。


 マルコとニコロの戦いは終わった。

 勝者はブルーナさんだった。


 私しか知らなかった彼女の力は、ついに皆の知るところとなった。


 今後の貴賓席の確保は盤石だろう。

 王子は外出することになり、お茶会も継続されるだろう。


「なんかすごいもの見ちゃった……」


 アレ君派の女子がぼそっとつぶやいた。

 手も足も出なかったパトリツィアを含め、教室に残っていた全員が黙って頷いた。

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