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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

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デビューしたヤツ

 学園の門をくぐったら、ヤンキーがいた。

 だらしなく着崩した半袖のシャツ、右手に持った制服をバスタオルみたいに肩にかけて、鞄も待たず、薄汚れたブーツを引き摺るように、私の前をダルそうに歩いている。

 前世のマンガで見た不良アイコンがてんこ盛りだ。


 いたなあ、夏休みを境にそっちに行っちゃうヤツ。

 設定していないのに、この世界にも湧いちゃうのか。


 夏休み前まではこんなのはいなかった。中身ヤンキーのジョゼだって外見はちゃんと貴族令嬢してたし、男子はさらに美形だらけ。目の毒要素なんてなかったのに。


 この世界は現実であることはちゃんとわかってる。でもさ、私の作った乙女ゲー世界が壊されていく感じがして何気にキツい。


「はあ……」


 まあしょうがないんだけどさ。鑑賞派としては、新学期早々がっかりだよ。

 見ないように視線を落とし、校舎までの長い道を歩く。


「お? ビアンカじゃねーか!」


 突然降ってきた大声に、私はビクッとして顔を上げた。

 さっきの不良が私を見下ろしていた。

 ……おい。


「久しぶりだな!

 つーか、おめー全然成長してねえじゃねーか。

 食ってんのか? ちゃんと食わねーとおっぱいでかくなんねーぞ?」


 第一声がセクハラ。


「やめて」

「おー! そのイラついた感じもまんまだな!

 小魚食え小魚! ガハハハ!」

「誰だてめえ」


 父さん流に相手と口調を合わせて、私は静かにキレた。


「お? わかんねーのか?

 ま、そうかもな。俺も休み中に一皮剥けたからな。

 あ、剥けたっつってもチンポコのことじゃねーぞ、ガハハハ!」


 最低。


「俺だよ俺、ステファノ!」


 知ってるよ!

 でも知らない! 何なのそのキャラ!


「ごきげんよう」


 私は一言だけ告げて教室に向かったスタスタ歩き出した。

 ついて来んなよ?


「あ、おめーそっちか。俺はこっちだ」


 よし、あっち行け。


「んじゃ後でな! ヤマの話聞かせてやっから楽しみにしとけよ!」


 後でいらない。

 鉱山で何があったか知らないけど、最悪のキャラ変だ。


「ビアンカさん、おはようございます!」

「わっ!」


 後ろから声をかけられ、私はまたビクッとして振り返る。


「パトリツィア~、びっくりさせないでよ。おはよー」

「ビアンカさん、話し方」

「あ。失礼しました」


 まさかパトリツィアに言葉遣いを注意されるとは。

 擬態完成してる。


「で、ビアンカ。悪よね?悪が復活したのよね?」


 崩れた。でも、内緒話だからいいか。


「見てたの?」

「うん。また私の出番? 出番?」


 嬉しそうだね。悪が復活したのに。


「どうかなあ。バカになったけど悪いことは考えてなさそうだけどなあ」

「そうなの?」

「わかんないけど」

「じゃあ偵察だね!」


 なんでそうなる。


「潜入捜査しなきゃ。前みたいに」

「やらないよ? あと、あれは潜入じゃなくて突撃だから」

「えー? やろうよお」

「やだ」


 ひそひそ押し問答をしているうちに教室に着いたので、結論はお預けになった。

 絶対に行かないからね?


 ――捕まった。フラグ立てるんじゃなかった。


「そんでよ、ダーニの野郎がピーピー泣きながら走って来てよ、何だと思ったらケツにワームくっつけてやがんの。ワームの穴の上に座るとかバカかっつーの!」

「ケッケッケ! でもワシが思うに、一番バカはチェスコじゃな!

 何じゃ『赤いから食える』って。アダマンタイト化合物は毒じゃぞ?」

「いや親方、その前に鉱石は食えねえから!」

「そりゃそうじゃ! ケッケッケ……。

 あ、ステファ、ここでは教授と呼べ」

「あ、さーせん!」

「あのー、もういっすか? あーしら意味わかんねーっすけど」


 しびれを切らしたジョゼが割って入った。


 放課後、朝のことを忘れてクラスのみんなと近況報告しあってたら、ステファノが押しかけてきて、パトリツィアといっしょに拉致られた。途中でジョゼも。

 そんで、わけのわからないまま楽しい鉱山エピソードを聞かされているのだ。


「あ? そうだった。わりいワンコ、忘れてたわ」


 ジョゼはやっぱワンコだった。


「んじゃ、また金玉蹴られる前にこれだ!」


 スルースキルを発揮したパトリツィアは、今回は赤面することなく、テーブルにドンと出された石に黙って視線を移した。


「なんすか、これ?」

「ミスリル鉱石じゃな。

 奥で発破をかけたら、新しい鉱床にぶつかったんじゃ」

「すごいじゃないですか!」


 普通の異世界もの同様、この世界でもミスリルは「超貴重」設定だ。

 その鉱床の発見?

 大手柄だ。そりゃ前歯なんか簡単に治せるわけだ。

 白衣も新しくなってるし、もうちょっと磨いて若作りすればイケオジ枠に入りそうである。


「教授、なんかかっこよくなりましたね」

「はっ! お前の目は節穴か? 元からじゃ」


 元から変わらないのは態度の方だと思う。


「そうでしたね。なら、鉱床の発見で王様と謁見することになっても安心ですね」

「もう呼ばれたわい」


 教授が嫌そうな顔で言った。


「そうなんですか?」

「うむ。あの小僧、儂に伯爵をやるとか言い出しおった。

 けっ! 伯爵なんぞ誰がなるか。

 爵位が好きなら公爵辞めとらんわい!」


 それは私でもわかる。

 王様、自分から貴族を辞めた人をまた叙爵してどうすんのよ。


「その代わり、ランドルフォに言って研究費をぶんどってやった!」

「おめでとうございます」

「うむ。ほとんどは儂の力だが、お前たちがきっかけを作ったおかげでもある。

 この石はその礼だ」

「え? 私たちに?」


 まさかそういう話だとは思ってなかった。


「おお! わかんねーけど、センセ太っ腹だな!

 これ売っぱらったら冷蔵庫買えんのか?」

「500台くらい買えるな」

「なんだそれ、すげー!」


 ジョゼは大喜びだけど、どうしたらいいんだろう。

 パトリツィアは資料盗み出して報告しただけだし、私なんて最初にドアをノックしただけだ。ジョゼに至ってはほぼ無関係。


「貰っとけ」


 ステファノが明るい声で言った。


「まあ、鉱山送りは罰っちゃ罰だったけどよ、終わってみりゃいいことばっかだった。

 現場で発破ガンガンやって、データ取って、仲間もできて、鉱床も見つけて、そんで研究費も稼いだ。別に経歴に傷はついてねえしこの後にも影響はねえから、好きなことがやれる。

 そんでその好きなことも見つかった」

「そっか」

「うん。おめーらがいなかったら、俺たちは鉱山《やま》に行くことはなかった。それは確かだ。

 おめーらはそんなこと思っちゃいなかっただろうが、結果的に俺たちの人生を変えたっつうわけだな」


 ステファノは日焼けした顔でニカッと笑った。

 設定とは違ってワイルド系に振れ、体格もガッシリしてしてきている。半袖から覗く上腕二頭筋はかなり上質だ。


 敵は消えた。

 顔は元からだけど、性格も含め評価を上げざるを得ない。

 よかった。最悪じゃなかった。乙女ゲーのビジュ的にこれはこれでアリだ。


「ステッチ先輩、カッケーっす! 前と全然ちげーっす!」

「ったりめーだ! ウンコとワンコぐらいちげーんだよ!」


 評価は秒で下がった。


「ぷっ!」

「ぎゃはははは! なんすかそれ、ウケる!」


 パトリツィア、そういうので笑ってはいけません!


「そうだ、とっておきの情報を教えてやる。

 覚えとけ」


 ステファノはカッと目を見開いて叫んだ。


「硫化水素泉の中で屁ぇこいても絶対にバレねえ!」


 くっだらねえ……。


「りゅ? なんすかそれ?」

「あーそっからか。説明すっぞ……」


 お下品ズの話が終わりそうにないので、私はパトリツィアを促し、ミスリル鉱石を手に教授室から急いで退散した。

 ジョゼはともかく、未だピュアな侯爵令嬢に下品が感染るのは、絶対に阻止しなければならないからだ。

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