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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

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来ちゃったやつ

 出発時間まではそれぞれ勝手に過ごした。

 父さんは久しぶりの王都をブラブラしに行って、昼過ぎに起きたメダルドは馬のブラッシング、母さんは昨日の計算の続きをして途中で寝落ちした。


 夕方に父さんが戻ってきて、市場で買ったお菓子をつまみながら、領の様子を聞いた。

 予想通り変化なし。知り合いもみんな、貧乏で元気みたいだ。

 日が落ちた頃、家族全員で大将の店に向かった。

 貴族街を荷車をガラガラ引いて行くのはなんか面白かった。


 大将の店に着いたのは午後7時半だった。

 食堂の営業時間は午後7時まで。

 酒場を除き、下町のお店は閉店が早い。


 店の前では大将が待っていた。


「おう、パウロの旦那。持ってきてもらってわりーな。

 倉庫は裏だ。ついてきてくれ」

「わかった」


 荷車がギリギリ通れる脇道を通って店の裏に回る。

 倉庫には従業員のお兄さんが待機していて、3人でリレーしてお米の袋をどんどん倉庫に運んでいく。10キロの袋が10個だから作業はすぐに終わった。


「よし、終わり。ってまだ残ってんじゃねえか。何だそれは?」

「あ、これか? これは精米機ってもんだ。これがねえと白い米にはなんねえんだよ。

 まあ元の茶色いやつもそれはそれで美味えけど、白米の方が受けはいい」


 忘れてたけど、米食が根付いていない所に大量のお米を大量に売るのだから、精米機は必須だ。

 馴染みのないお米メニューが最初から一気に売れるとは思えない。

 白米の状態で夏の倉庫に積みっ放しにしてたら、売り物にならなくなっちゃうもんね。


 店に戻り、保管や炊き方の注意点を伝えた後、父さんはサンプルの玄米を使って魔導精米機の使い方を実演した。

 玄米を放り込んでスイッチを入れるだけなので手間はかからない。

 使う時間は短いし動力は普通の魔石で十分なので、魔石代がかさむこともない。


「なんだ、簡単じぇねえか。

 そんでこれいくらすんだ? 高えんじゃねえだろうな?」

「金なんか取んねえよ。米を美味く食ってもらうのに必要だから勝手に持ってきただけだ」

「そうか! やっぱ食いもん扱うやつはそうでねえとな!

 気に入った! 米100キロ追加だ!」

「毎度!」

「このバカ!」


 黙って見ていた母さんがバカ領主の頭をひっぱたいた。


「毎度じゃないから!

 大将も、ありがたいけど勢いで大量発注しないで。

 売れ行き見てからで十分でしょ!」

「……だな」

「おう……」


 怒られてやんの。


「で、大将。

 あたし晩ごはん食べさせてくれるって聞いたんだけど、まだなの?」

「お、おう! そうだった。待っててくれ、すぐ準備すっから!」


 大将は逃げるように厨房に駆け込んでいって、少しするとそこから味噌の焦げる香ばしい匂いが流れてきた。

 みんなじっと奥の厨房の方を見ている。


「これは腹が減るな」

「だよね」


 全く同じ感想に振り返ると、いるはずのない人物が立っていた。


「やあビアンカ君。来ちゃったよ」


 いや、来ちゃったって、肉食女子じゃないんだから……。


「……侯爵様、なぜここに……?」

「パウロ殿、それは昼間にあなたがいきなり来て熱弁をふるったからだな。

 ナンチャーラの採れたばかり米と達人が作る料理。

 私は家族が領に帰っていて侘しいやもめ暮らし。

 来ないはずがないではないか!」


 開き直った。


 えーと、つまり昼間に父さんが侯爵様のところに押しかけて、盛り話をした結果だと。

 バカ領主……。


 我に返った母さんが慌てて膝を折ろうとするのを制して、侯爵様は当たり前のように着席した。

 その隣に当たり前のようにコルリさんも座る。もう慣れた。


「出来たぞ! お、追加か?

 問題ねえ、たんまり仕込んだからな!」


 大将が大皿を運んできて、あっさり参加を認める。

 まあいっか。

 家にちょくちょく食べに来るから、その延長だと思えばいい。


 よし、食べるぞ!

 テキトー両親もすぐに慣れるだろう。

 美味いものの前に身分なんて関係ない。


「あー、こっちから一押しのボアの味噌漬け焼き、青牛のくず肉の煮込み、魚の塩焼き、アラは塩汁にした。そんで茄子と鶏の辛味炒めにセロリの甘酢漬け。

 あと上級者向けのおかずもあっけど、そっちは後からだな。

 ま、好きなだけ食って感想聞かせてくれ!

 俺と弟子も隣で食ってっけど、気ぃ遣う必要はねえからな。

 米は行きわたったな。

 んじゃ、神様あんがとさん!」


 雑なお祈りと同時に、並んだ大皿に一斉に手が伸びた。


 前世で言えば多国籍料理っぽいけど、全て大将がごはん用に開発・改良したオリジナル。

 普通の魚の塩焼きでさえ、塩が少し強めで、ふわっと昆布の香りまでする。

 特に味噌漬け! 何が入ってるかわかんないけど、お肉の周りについている焦げた味噌だけでごはん3杯はいける!


 これじゃあおかわりが止まるわけがない。

 給仕係のお弟子さんの食べる暇がないので、私はセルフサービスを提案した。


 初動を見た大将は、「足りねえな」って言ってごはんもおかずも追加で作りに行った。

 最終的に食べたごはんの合計は一升を軽く超えてると思う。


「いやあ、美味かった! ありがとう!

 げふっ、おっと失礼」


 侯爵様がお腹をさすりながら言った。


「いや、作る方はそう言ってもらえんのが一番の褒美だからな」


 大将がニカっと笑ってサムズアップする。


「そんで食い終わったところで改めて訊きてえんだけどよ、店で出すとすればどれがいいと思う?

 最初だからとりあえず2品くれえに絞ろうと思ってんだが」


 そうだった、こっちが目的だった。


「味噌漬け! あれは外せねえだろ?」

「賛成だな」

「匂いだけでみんな注文すると思うわ」

「あれは卑怯ですね」


 大人4名のお墨付きを得て、ボア味噌漬けがイチ抜け。

 2位は票が割れて、父さんとメダルドが牛煮込み、コルリさんと母さんが魚の塩焼き、侯爵様が鶏、私はコアファン獲得狙いで納豆+塩辛+アラ汁のセットを推薦した。

 まずほぼハヤシライスの牛煮込みは冬に取っておくことが決まり、魚か鶏かの二択になったが、メインが男性客ということで無難な鶏に決まった。

 魚は安く入った時に日替わりで出すそうだ。


「ビアっちは渋すぎでとんがり過ぎだな」


 ビアンカ案は検討すらされなかった。 

 知ってるし。言ってみただけだし。


 新作は翌日食堂デビューし、一週間が過ぎるころには常連さんの中で人気メニューとなった。

 予想通りボア味噌漬けは中毒者を生んだようだ。コルリさんとか。

 それに引っ張られて、従来のメニューとごはんを合わせる人も現れはじめて、ナンチャーラ米は王都で小さな一歩を踏み出した。


 日本と違って行列に並ぶような文化じゃないので爆発的に拡がるということにはならないだろうけど、ブームは一瞬で去るから、こういう地道な感じがいいと思う。


 今回納めたお米は20日ほどでなくなる計算らしく、大将とは一ヶ月あたり250kgの定期購入契約を結べた。


 値段は母さんが交渉して、玄米100kg当たり3万3千リデルで決着。

 米高の前世から見ればすごく安く思えるけど、領の値段の3倍だ。運送費を引いても十分利益が出る。

 小麦より安いので食堂の利益も増えるし、父さんも大将もいい取引だって喜んでいた。


 それから、侯爵様は大将に侯爵家の料理人の指導を頼んだ。

 「お願い」だけど、後から正体を知ってさすがにビビった大将に断れるわけはない。

 うん、そうやって絡めとられていくんだよ。経験者だから知ってる。

 悪いことにはならないのは保証するけど、無茶振りからは逃げられないから。

 頑張ってください。

 苦情があれば、私じゃなくバカ領主までお願いします。

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