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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

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運ぶヤツ

 お米の大口注文の話は、侯爵様にお願いして、私の身元調査の時と同じルートで実家に届けてもらった。

 遠話機の実物も見た。ほんとに残っていてよかった。


 ジョゼの実父、食堂の大将ウーゴさんは、早速ごはんに合わせたメニューの開発に取りかかっている。

 私が持ち込んだ物ではボアの味噌漬けが合格した。

 納豆と塩辛は残念ながら不採用だった。まだレベルが高すぎるそうだ。


 ウーゴさんはレシピを買い取ると言ってくれたけど、味噌に漬けるだけなのでレシピも何もない。

 って言ったら、その他副菜も参考にさせてもらう分も含めてって、新メニューの試食券を30枚もくれた。そっちの方がずっと嬉しい。


 その後お邪魔した時には、改良途中のボアの味噌漬けを味見させてくれた。

 マジ美味しかった。これ以上何を改良するか想像できない。

 日替わり定食のホーンラビットの煮込みも一切臭みがなかった。

 やっぱしプロは違う。


 こうなるとお米の到着が待ち遠しくなる。

 送られてくるのは、王国最南部ナンチャーラの超早場米だ。

 初の大口注文だから、新米が間に合ってよかった。

 今使っているのは去年のお米だから、この世界の保存技術だとやっぱり味は落ちるんだよ。


 それに、個人的な理由だけど大将の新メニューはぜひ新米で味わいたい。

 私の素人料理に触発されてこの世界のプロが作る料理。もう楽しみしかない。


 畑の野菜は順調に育っていて、最初にオクラが収穫の頃合いになった。

 これを刻んで、かつおぶし――はないので自家製煮干しの出汁と醤油をかけて混ぜて、ごはんにかけて食べると美味しいんだよなあ、とか思っていたところにお米が届いた。


 実家に連絡してから2週間後のことだった。

 思ってたよりかなり早い。


「いやあ、野営6回はさすがにキツいわ!

 とりあえず風呂入ってちょっと寝る!」

「俺も!あ、姉ちゃん久しぶり!」


 ナンチャーラ領主のパウロ・ナンチャーラ男爵とその嫡男メダルド、つまり私の父と弟がそう言って浴室に駆け込んでゆく。


「水風呂なんだけど……」

「夏なんだからちょうどいいわよ。

 私はお湯につかるけどね」


 男爵夫人リディアがケラケラ笑った。


 そう。うちの家族は、総出で王都にお米を運んできたのだ。

 特急のため2週間のうち野営6回。

 なんというか……、バカなの?


「あ、そうだ! 馬はどうしたの? 全部知らない子だったんだけど」

「ああ、庭にいるのはファーゴさんから借りた子。ウチから王都まで大急ぎじゃかわいそうだからね。

 ウチの子は向こうの厩舎でのんびりしてるわよ。

 あ、ビアンカ何か書くものある?」

「ん? あるけど」


 私が紙とペンを渡すと、母さんは突然数字を書き込みはじめた。


「どうしたのよ急に」

「あのね、馬の借り賃の足しにしようと思って、ファーゴ領のギルドで王都まで荷物運ぶって言ったら、けっこう集まったのよ。

 帰りは荷台空になるでしょ?

 そこに南向けの荷物載せたら儲かるんじゃないかと思って」

「運送屋さんやるの?」

「そそ。もったいないでしょ?

 ええと、次の街まで荷物1キロ当たり仮に100リデルとすると……」


 なんか本気で計算はじめちゃった。

 母さんは父さんより数字に強い。

 領主補佐から貧乏男爵領の財政トップ(笑)に昇りつめたリケジョなのだ。

 前世を思い出す前に算数を教わったのも母さんからだ。


 つまりお金に厳しい。


「ダメです! 買いたかったら稼いできなさい!

 売れるものがない? お米があるでしょ!」


 って、古魔道具購入申請をほとんど却下してた。


 父さんは「だって売れねえんだもん」ってしょぼくれてた。


 でも、それはなんとかなるかもしれない。

 目利きのできない骨董好きはしょぼくれてていいけど。


 私は、入浴後軽く仮眠を取った臨時運送業者たちを歓迎会に招待した。

 場所は市場近くのちょいお高めのレストランだ。

「もったいない」って渋る母さんは、週一でつけているざっくり家計簿を見せて納得させた。

 師匠が下宿することは手紙で知らせてあったが、下宿費の金額を書き忘れていたらしく、ちょっと怒られた。


 みんなは2週間くらいは滞在するらしいので、師匠が早めに戻ってくればギリ会えるかもしれない。


 翌朝、隣のベッドで爆睡するメダルドと2階の両親を叩き起こし、手早く朝食を済ませた後、私と父さんはウーゴさんの食堂に向かった。

 お米は、いきなり100キロ持ってこられても困ると思うので、父さんがサンプルとして5キロの袋をひとつだけ担いで持っていくことにした。

 メダルドと母さんは二度寝に戻った。


 ウーゴさんは仕込み中だったので、サンプルを置き、納品の希望日を聞いて帰ろうとしたのだが、「もうすぐ終わるからちょっと待ってろ」と言うので店の隅のテーブルで待たせてもらうことにした。


 アンナちゃん画伯のオニ独創的な壁画を眺めていると、ウーゴさんがやってきた。


「悪いな、待たせちまって」

「いえいえ。紹介しますね。ウチの父のパウロ・ナンチャーラです」

「おう。じゃねえ、はい。えっと、男爵様にござりましては、ごきげんうるさく、じゃなくて、うるわしく?……ああもう!」


 逆ギレした!あと、エドガーの影が見えた!


「とにかく、こんなシケた店にわざわざありがとございやす!

 俺がこの店やってるウーゴっつうもんです!

 長え付き合いになると思うんでよろしく頼んます!」

「いや、こっちこそいっぱい買ってもらってありがてえ!

 貴族っつっても田舎で米作ってるだけだから、そのへんのおっさんだと思ってくれ。

 パウロだ。よろしくな!」


 父さん合わせた!GJ!


「ああ、良かった!

 貴族っつったらリベリオんとこしか知らねえからビビっちまった。

 旦那が話せるヤツで助かったぜ!」

「大将、リベリオさん子爵様だからね? 父さんより偉い」

「いいんだよ、そんな細けえことは。

 貴族は貴族。要は、話せるヤツかどうかだろ?」


 確かに。

 爵位で態度を変える貴族より大将の方がずっとかっこいいや。


「んで旦那、米だけどよ、今日の営業終わったら届けてもらうってのでどうだ?」

 それまでに倉庫開けとくからよ」

「おう、そんでいいぜ。

 そんときに色々注意事項とか伝えるわ」

「よっしゃ、頼んだ!

 金もそん時払うのでいいか?」

「問題ねえ」

「おう。あと、そん時に米用のメニュー試食してもらいてえから、できれば晩飯食わねえで来てくれ」

「おお! 楽しみにしとくわ!」


 ふたりはがっちり握手をして別れた。

 お見合いは大成功だ。


 そして早速試食会だ! ふおおお、上がる!


 私は家に戻りながら、父さんに大将の料理の腕を力説した。

 父さんが「味噌ってなんだ?」って言って、私はナンチャーラに和食材がなかったことを思い出したが、それならなおさら衝撃を受けること確実だ。


 私も、みんなが王都にいるうちに家で和食を作ってあげよう。


 うん。なんかいい感じに動き出したんじゃない?


 あとは試食会の後を気を付ければいいだけかな。

 そのまま宴会に突入しそうな予感がするんだよね。


 この前みたいなのはもう勘弁なので、納品の時には母さんにも同行をお願いしよう。

 酔っぱらいには容赦ないから、修羅場入りは鉄拳で未然に防いでくれると思う。

 あ、「連盟」はもう存在してない。ふたりとも覚えちゃいなかった。

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