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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

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臭いヤツ

 師匠は結局護衛の依頼を受けた。

 これまでの実績によって教授からの信頼は厚く、十分な報酬を約束してくれたそうだ。

 追加で鉱山とその周辺の魔物情報の収集も依頼され、「また儲かっちゃう」とご機嫌だった。


 そういうわけで頻繁に教授のところに出入りするようになった師匠の話によると、教授とステファノは結構やる気を出しているらしい。

 開き直って「この際だからと山ごと爆破してやる」とか言っているんだってさ。


 うん、知らんけど頑張れ。

 おかげで絡まれることもすっかりなくなり、夏休みまでの2週間は穏やかに過ぎていった。


 そして師匠を伴って悪の組織が旅立ち、学園は長い夏休みに入った。

 夏休みは二ヶ月ある。

 地方の生徒たちが実家に戻るために、そのくらいの時間が必要なのだ。

 今回私は帰らないが、帰省するとすれば往復するだけで6週間取られる。

 ド田舎のナンチャーラ領が遠すぎるだけとも言えるが、Sクラスの常識人代表である辺境伯令息アレッサンドロ君の実家も距離だけなら似たようなものだ。

 彼は明後日帰省するらしい。


 「お尻きついよね」って言ったら激しく同意された。

 自前の高級馬車でもそうみたいだ。

 辺境あるあるで笑って、ちょっと仲良くなって、「アレって呼んで」って言われた。

 アレ君、道中お尻お大事に。


 さて、私は王都の夏を堪能しよう。

 とはいっても、基本働くんだけどね。

 種類を増やした畑はなんやかんやで手がかかるし、ナンチャーラ産品の売り込みも余裕がある今のうちにやっておきたい。

 侯爵家やジョゼの家で好評だから、可能性はあると思うんだよね。


 あ、ゲーム上の夏休みイベントはないはず。

 シナリオ上ではひとつあったんだけど、それは王子がヒロインを避暑地の別荘に招待するってやつ。現状ふたりの接点は全くないので起こる可能性は多分ない。

 あるとすれば王子の取り巻きモブのジャンニ・ファビオの凸だけど、ジョゼは完無視してるので大丈夫だろう。


 実はさ、最初犬Pが海のシーンを入れようと画策したんだよ。

 色んなタイプの水着と色んなタイプのおっぱい。

 乙女ゲーだぞ? 女子は大部分モブだぞ? しかも14歳だぞ? おかしいでしょ!

 会社の予算使ってキモ童貞の願望を叶えようとするんじゃねーよ!

 万一ボツ設定のどこかに一行でも書いていたら、この世界で起こったかもしれないと思うとゾッとする。

 アイス丸先生が断ってくれてほんとよかった。


 というわけで、私は安心して自分のことに集中できるわけだ。


 夏休み初日の今日は、ジョゼの実家に行く約束をしている。

 イベントっぽいけどただの営業活動だ。当然シナリオには書いていない。


 営業品目は米。ナンチャーラ領の主要産品。というか売るものがそれしかない。

 今回は、ごはんのお供を持参してナンチャーラ米の美味しさをアピールする作戦だ。

 もちろん勝算がないわけではない。

 ジョゼの義父、ランギーニ子爵が助っ人として同行してくれるのだ。

 納豆に続いてジョゼに託した塩辛も絶賛してくれた同志である。


 臭いものだけでは失敗する可能性もあるので、その他に自家製干物やら味噌漬けの肉やらもバスケットに詰めて、私は待ち合わせの場所に向かった。


 待ち合わせたのは下町の入口。少し待つとジョゼたちがやってきた。


「はじめまして!あなたがビアンカちゃんね?うちの子と仲良くしてくれてありがとうね!会いたかったわ!あ、私はこの子の母のヴァンナ。ヴァンナ・ランギーニよ、よろしくね!あのね、ビアンカちゃんにはぜひお礼を言いたかったのよ!あなたが教えてくれた納豆!あれすごいわね!食べていたらすっかり便秘が治ったのよ!びっくりするくらい調子がいいの!今日もね」

「ヴァンナ」


 いきなり駆け寄ってきて私の手を握り、怒涛の勢いで下ネタをぶっこんで来た子爵夫人を、追いついた男性が制した。

 ありがとう子爵様。「今日もね」の続きは聞きたくなかった。


「妻がすまない! ただ、私も含め、君に会うのをほんとに楽しみにしていたんだ!」

「いえ。お気になさらないでください。

 はじめまして、ビアンカ・ナンチャーラです」

「助かる!

 私はリベリオ・ランギーニだ。こちらこそ改めてよろしく!」


 子爵様はとってもフランクだった。

 夫人よりは落ち着いているけど、テンションが高い。

 なんというか、ジョゼの家族っぽい。


「母さん、すげーだろ?

 ビアっちに会うって言ったら勝手についてきた」


 ジョゼが耳打ちするので私はコクコク頷いた。

 その後、ジョゼの背中に隠れていた「オニかわいい妹」のアンナちゃんを紹介され、私たちは下町の通りを進んだ。

 アンナちゃんは確かにオニかわいかった。


「ジジイ、来たぞー!」


 そう言ってジョゼがずんずん食堂の中に入ってゆく。

 私たちも後に続く。

 間口もかなり広くパッと見100席近くあるから、なかなかの規模だ。


「おう、来たか!

 リベリオもいるな?

 お?ヴァンナも来たのか。久しぶりだな!」


 子爵家と平民だけど、呼び捨て。

 どうやら両家はだいぶ仲がいいらしい。いいね!


「よし、飲むぞ!

 今日は休みだからな、夜までいくぞ?」

「おい、ジジイ! よし飲むぞじゃねーんだよ!

 今日はビアっち連れてくるっつっただろ?」

「んなことわかってんだよ!」

「じゃあちゃんとやれよ!」

「うるせえな。

 あー、ビアっちだっけ?

 米は炊いてあんぞ。

 今日はツマミ教えてくれんだろ?

 レシピ買い取らせてくれ。美味かったらだけどな、ガハハハ!」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 こっちはこっちで濃いなあ。

 圧がすごいけど、営業マンだから負けてらんない。

 私は中身の詰まったバスケットをダン!とテーブルに置いた。

 それが試食会開始の合図だった。


 ――そして数時間後。

 私は勝った!


「ビアっち、米買うぞ!

 とりあえず100kgだな。

 明日届けてくれ!」

「ありがとうございます。ただ、実家から送るのでお届けは一か月後くらいになります」

「そうなのか! じゃあそんでいいや!」

「ジジイ、それ何回目だよ! ビアっち困ってんだろうが、この酔っぱらいが!」

「うるせえジョゼ!」


 現在、そのままなだれ込んだ両家総出の大宴会に巻き込まれている。


「だからねエルマちゃん、お通じには絶対納豆なのよ!見てよこのお肌!」

「いいじゃない! ヴァンナちゃん、売ってるとこ教えて!」

「あげるわよ! うちで作っているから!」

「姉ちゃん、兄ちゃんが俺の肉取ったー!」

「トト! 何やってんのよ! 返しなさい!」


 奥さんふたりはずっと便秘の話してるし、ジョゼの妹弟は喧嘩はじめるし、オニかわいいアンナちゃんは壁にクレヨンでお絵描きしてるし、もうカオス。


「ビアっち! 塩辛はもうねえのか?」

「塩辛最高! あはははは!」

「だよな! まさかリベリオが臭えもんがイケるとはな!」

「俺もウーゴがそうだとは思わなかった!」

「気が合うな! かんぱいっ!

 あ、いいこと考えた! 今日の記念に臭えもん同好会作らねえか?」

「いいね!

 メンツは俺とウーゴとビアっち君だから……なんかかっこいい名前ないか?」

 

 おっさんたちは謎の会を作ってるし、私がメンバーにされてるし。


「……んーと、全員目が赤っぽいから赤目会……、いや赤目連盟だな!」

「おお! 偉い感じがする! よし、赤目連盟にかんぱーい! あはははは!」


 ああもう……。

 私は心の中でシャーロック・ホームズさんに謝罪した。


 潮時である。

 私はシラフのジョゼにだけ挨拶し、終わる気配のない修羅場からそっと脱出した。

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