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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

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蹴られるヤツ

 月曜日の学園は先週と変わらなかった。


 ステファノは入園初日でクラスを離脱し、最初からいないようなものなので、変人教授と何をやってたかなんて誰も知らない。

 私は何も言わないし、擬態中のパトリツィアも隠密案件を口にしないから、話が漏れることもない。


 何も起こらなかった。

 それが結論だ。

 他の攻略キャラたちもいつも通り私の目を楽しませてくれた。


 放課後、私たちは家でプリンを食べながらくつろいでいた。

 この世界には最初からプリンがあった。ゲームのパーティーシーンのスチルにプリンが描かれていたせいだと思う。他の中世じゃない小道具もちょくちょく見かける。

 まあ、今さら前世知識チートとかやるつもりもないので問題ない。


 プリンを完成させるのには思ったより時間がかかった。

 当たり前のように師匠にリクエストされたんだけど、前世では買ってくるものだったからね。

 でもご褒美に、冷蔵庫に私用の棚が一段できたのでやった甲斐はあったよ。


「プリンはやっぱ冷えてた方がいいよなあ。

 ウチも冷蔵庫買わねえかなあ。でも父ちゃん下っ端だからなあ……。

 もうステっち先輩にもタカれねえしなあ……」


 ジョゼがブツブツ言うのを聞いてパトリツィアが得意そうに頷く。


「だよね! やっぱり私の思った通り悪だった!」

「なにそれ?」

「え? 違うの?」

「いや、あーしが言ってんのは、あーし今日ステっち先輩の金玉蹴ったから、当分行けねえなってことなんだけど」

「キン……!」


 初心なパトリツィアが真っ赤になるが、単語問題は一旦置いておく。

 それより何が起こった?

 ヒーラー活動を始めてから、ジョゼは暴力禁止を厳守しているから恐らく反撃。

 まさか、自暴自棄になったステファノがジョゼを襲ったとか⁉


「ジョゼ、何があったか詳しく!」


 ことと次第によっては、今度は公式に訴える!


「いや、そんな大したことじゃねえって。

 なんかステっち先輩が『ビアンカと会うのをやめろ』とか言ってくっからさ。

 そんで拒否ったら壁ドン? してきてまだギャーギャー言うから、あーしもアタマに来て蹴った。そんで逃げた」

「あ、そういう感じか……。

 うん。ジョゼ、よくやった。偉い!」

「そうか?」

「あははは、ステっち馬鹿だねえ。天才だったんじゃないの?」


 ソファでだらけていた師匠が足をバタバタさせる。


「ほんとに。芋ようかんごときで何やってんだか……」

「ビアンカちゃん、それ違うよ?」

「え?」

「きっと、ステっち、今回の鉱山送りビアンカちゃんのせいだと思ってるよ?」

「マジ?」

「マジマジ。『あいつさえ来なければ……』とか、そういう感じ。

 ま、これ以上何かしたら完全にアウトだから、危ないことはないと思うけど」

「げえ……。

 じゃあ、ジョゼは完全にとばっちりじゃん。

 ごめん、ジョゼ!」

「ん? よくわかんねえけどオッケ!

 んで、鉱山送りって何?」

「そう、それ!私が活躍したの!」


 ようやく戻ってきた話題に、パトリツィアが勢いよく食いついた。


 パトリツィアは語った。

 たっぷり脚色され、教授は悪の組織のボスとなっていた。

 ステファノはその幹部だ。

 パトリツィアはカスミ張りの大活躍だった。

 最後にエドガーみたいな侯爵様がふたりを叩き斬った。


「お嬢、かっけー……」


 ジョゼが真に受けそうだったのでお説教半分に訂正した。ふたりとも死んでなかったでしょ?

 けど、正直実際より面白かった。

 もし鉱山から帰ってきても私に絡んでくるようなら、この話を吟遊詩人に流してもいい。

 タイトルは「隠密令嬢パトリツィア」。

 「お嬢、盛りすぎ!」って言いながらジョゼも笑っているので、普通に流行りそうな気がする。


 わいわい騒いで一日は終わった。悪の幹部がいないだけでほんと平和だ。

 寝る前に例の呆然フェイスを思い出してまた笑った。


 ――それが悪かったのだろうか。

 次の日の昼休み、ステファノが教室に来た。


「おい、ラモナ・フレスカを紹介しろ」


 挨拶もなしにいきなりこれだ。

 当然私も喧嘩腰になる。


「は? いきなり何言ってんの?

 ギルドに行きなさいよ」

「行ったに決まっているだろう?

 そのギルドが、次に顔を見せるのはいつか分からないなどとふざけたこというので、連絡体制の不備を指摘してやった」

「何やってんの?」

「出来ていないのだから当然だろう?

 そうしたら、急ぐならお前の家に行けとか言い出した。

 あんな胸糞の悪い場所になど行きたくないから、ここに来たわけだ。

 阿呆の顔など見たくもないがしかたがないからな。

 わかったか」

「わかるか! 帰れ!」

「なんだと?」


 今度こそ手が出そうになったところに大きな咳払いが響いた。


「ステファノ・コンカート、何をしている!」


 見るとSクラス担任のグランディ教授がステファノをにらんでいた。


「ここは君の教室ではない。授業時間だ。出て行きたまえ。

 カプア教授はそんなことも教えていないのかね」

「そのカプア先生の指示で僕はここに来たのだが?」

「聞いていないな。

 私の生徒に用事があるなら、手順を踏んで私の許可を取るように伝えなさい。

 もう一度言う。出ていきなさい!」


 ほとんどステファノを知らない他の生徒も非難の視線を向ける。


「チッ!」


 ステファノは舌打ちをして教室を出ていった。


「ビアンカ君。

 事情を聞くから放課後教授室に来なさい。

 では、授業をはじめる」


 はーい。


 放課後、事実だけ簡潔に説明し、私は短時間で解放された。

 そりゃそうでしょ。

 ただ言葉遣いだけ注意された。

 一応謝ったけど、アレを前にしてそれは無理だって。完全に敵だからね。


 その足で家に帰って、師匠に愚痴をこぼしまくった。

 話を聞いてくれた師匠は、やれやれと首を振った。


「なんかさあ、ステっちと会うと必ず喧嘩してるよねえ。

 ビアンカちゃん、そんなキャラだっけ?」

「普段はそんなことないけど、アレがいちいち人の神経を逆なでするようなことばっかし言うんだもん。ほんとムカつく」

「それってさ、ステっち、実はビアンカちゃんのこと好きなんじゃない?

 天才でもお子様だから、そういう言い方になっちゃうとか」

「勘弁してよぉ……」

「どうする? 急に告白とかされたら」

「死んじゃう!」

「あははは……」


 私たちがじゃれていると、ドアが乱暴にノックされた。


「あれ? 誰だろ?」

「ビアンカ・ナンチャーラ。開けろ!」


 てめえ、いい加減にしろよ⁉

 どんだけ焦ってんのよ。


 よし、今回こそぶん殴ろう!

 勢いよく立ち上がる私を師匠が止めた。


「ラモナちゃんが出るよ。

 ラモナちゃんに用事なんでしょ?

 ビアンカちゃんだと話が進まないからね」

「絶対に中に入れないでね!」


 「りょーかい」と軽く笑って師匠が玄関に向かう。


 入ってこないかハラハラしていると、話はあっけなく終わったようで、師匠が普通の顔で戻ってきた。


「何だった?」

「ん?鉱山までの護衛を依頼されただけ。

 話を聞きに教授のところまで来てくれって。

 それ聞くだけなのに、なんでこじれるかな?」

「……ごめん……」

「気をつけましょー」

「はい……。

 で、受けるの?」

「そりゃ冒険者だからね。報酬が良ければ受けるよ?

 カプアの爺さん、別に嫌いじゃないしね」

「そっか……」

「まあ、話を聞いてからだね」


 そうだね、私が口を出すことじゃない。


「それよりごはんまだ? ラモナちゃんお腹空いたんだけど」

「作る。ボアのグリルにする」

「ソースは?」

「オレンジソース」

「やたっ!それ好き!」


 嬉しそうに万歳する師匠に癒され、私は気を取り直して調理に取りかかった

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