表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/28

送るヤツ

 公式には何の権限もない隠密捜査官の押収、いや窃盗により暴かれた犯罪計画は、すぐに侯爵に報告された。

 ヤバそうなので中身は見なかったが、事の大きさはコンシリアの嫌がらせの比じゃない。

 案件的に退学どころか極刑コースまである。


 まさか攻略キャラが犯罪者に堕ちるとは思わなかったよ。

 見たくなかった。

 天才設定暴走。ひどくない?


 鑑賞活動にも身が入らず、どんよりした気持ちで私が家に帰ると、遠方への護衛依頼でしばらく家を空けていた師匠が戻っていた。

 リクエストされた生姜焼き定食を食べながら、私は顛末を話した。


「なるほどねえ。爺ちゃんセンセってカプアの爺さんのことだったのか……」

「知ってるの?」

「知ってるってほどじゃないけど、依頼は何回か受けた。

 冒険者の間じゃ、手付金払わないし、採取してきた素材にケチつけて値切るので有名」

「最悪じゃん」

「でも、品質が良ければ割増しで払うからね。

 ラモナちゃんはトラブったことないよ?」

「へえ……」


 ああ、前世でもいた。ゴリゴリの成果主義者。全員性格悪かったけど。


「そんで爆破計画とやらだけど、多分そんなに大ごとにはならないと思うよ?」

「え? そうなの?」

「間違いなく書いてみただけ。

 爺さん、何やったらマズいかはちゃんと知ってる。とっくに実家とは絶縁してるけど一応元公爵だからね」

「嘘」


 教授、まさかの王家筋だった。


「でも、書くだけでも王宮爆破はさすがにマズくない?」

「そこはパトリツィアのお祖父ちゃん次第かな?

 まあ公爵家のメンツもあるから、ステファノ君も含めてすぐに捕まるようなことはないと思う。

 裏でキリキリ取り調べはされるだろうけどね」

「なるほど……」


 表向きはそのまま、裏で貴族的なキツいお咎めってパターンか。

 家名に傷がつかなければ、公爵家はむしろ歓迎って感じ?

 怖い怖い。関わらないようにしよう。


 師匠の予想通り、週が替わっても教授たちは捕まることはなかった。

 そして、こちらも予想通り侯爵様による非公式なお取り調べが行われることとなった。  

 ――私の家で。


 侯爵様が直々にやってきての依頼なので断れなかったの。関わりたくなかったのに!


「すまんな。他に思いつく場所がなくてな。

 相手は元公爵なので、私の屋敷に呼びつけて要らぬ勘ぐりをされるのを避けたいのだ。

 それに、今回教授の研究室に出向いたのは君の発案だと聞いた。

 ならば立ち会ってもよかろう。パティにはまだ早いが、君なら場を乱すこともないだろうからな」


 侯爵様は悪戯っぽく笑った。

 ……言い出しっぺは逃がさんってか?


「あ、それから茶菓子に芋ようかんを作ってくれるか?」

「……かしこまりました」


 お茶会なの?


 侯爵様にお出しするので、前日、私はいつもはやらない裏漉しを二回もして、滑らかな食感の芋ようかんを作った。

 当日は出かける師匠がたっぷり味見して絶賛した。

 解せん。


 裏漉しは力仕事だ。

 指定された日曜日、私はプルプルする腕をさすりながら一行を迎えた。


「忙ひいワヒを呼びつけるとは偉くなったもんじゃな、ランドルフォ。

 さっさと要件を言え」


 教授は着席するなり、不機嫌を隠そうともせずそう切り出した。


「まあまあ。久しぶりに会ったんですからゆっくり話しましょう」

「断る。そんな暇などない!」

「そうおっしゃらずに。ビアンカ君に無理を言って、私の好物の菓子も用意してもらいましたから。美味いですぞ?

 それに、先生の今後ためにも色々話をしていただいたほうがよろしいかと。 

 じゃあビアンカ君、早速だが茶の用意をお願いする」

「はい」


 お茶と芋ようかんを出すと、今度はステファノが難癖をつけだした。


「なんだこの貧相な物は?」

「聞いてなかった? 芋ようかんっていうお菓子だけど」

「これが菓子だと? しかも芋?

 はっ! さすが阿呆の食い物は違うな」


 人を怒らせることでも天才。


「あそ。じゃあ食べなくて結構」


 私はステファノの前の皿をサッと下げた。


「あっ」

「なによ、要らないんでしょ?」

「そんなことは言ってない。味見くらいしてやってもいい」

「お断り! あんたになんか絶対に食べさせない」

「なんだと?」

「うっさいこの爆っ、……」


 私はハッとして言葉を飲み込み、慌てて侯爵様を見た。


「なぜそこで黙る!バクとはなんだ⁉」


 わめくステファノを手で制して、侯爵様はふっと笑った。


「では、ビアンカ君がきっかけを作ってくれたところで本題に入ろうか。

 先日、私の元にこのようなものが届けられた」


 テーブルに「計画書」が置かれる。


「それはっ……!」

「ワヒは関係ない! ステハノが勝手に書いたやつじゃ!」


 絶句して青ざめる天才少年と速攻で弟子を売る歯抜け教授。

 ヘイヘイ、さっきまでの威勢はどこいったあ?


「いや、教授も関係ありますな。

 確かに書いたのはステファノ君のようだが、あなたも細かく注釈を書き込んでいるじゃないですか。

 しかし、子弟で王宮の爆破を計画していたとは!

 これは王に報告せざるを得ませんな」


 侯爵様はわざとらしくかぶりを振った。


「ほれは困る!

 第一爆破なんぞ計画ひとらん!」

「ではこの計画書は何だと?」

「それは単なる数値計算書です!

 爆破魔法を考える際、王都一大きな建造物を仮の対象に見立てただけです! 本当です、信じてください!」


 執筆者と特定されたステファノが必死の形相で割って入った。


「ふむ。では尋ねるが、そもそもなぜ大規模な爆発の計算をする必要があるのかね?」

「ま、魔法で大きなことを成し遂げられると証明するためです!

 今の魔法は、それを手段として実現しようとする目的が小さすぎるのです!  

 それじゃダメだ、志が低すぎる!」

「ならば街の廃屋の解体でも引き受ければよいではないか」

「そんなものは誰でもできます!

 王宮とか山とか、そういう無理だと思うようなものじゃないと意味がありません!

 大切なのは魔法の規模です。それを使えるなら目的は何でもいいのです!」


 ……ああ、わかっちゃった……。

 ボツ設定のステファノのプロフィールに書いた記憶がある。

 「手段のためなら目的を選ばない」。

 こいつバトル設定だわ。つまり爆破マニア……。

 うわあ。どうしよう。なんか対処できるかな……。


「……言い分はわかった。

 教授もそれで間違いないかね?」

「ふん。ほれでいいわい。

 疑いは晴れたな? ならワヒは帰る」

「いや、そう急ぎなさるな」


 立ち上がりかけた教授を侯爵様は穏やかな声で押しとどめた。


「さて、ステファノ君」

「はい」

「君の言うことは一理ある。確かに魔法はもっと重要な場面で使われていい」

「あ、ありがとうございます!」


 ステファノの顔がぱあっと輝く。


「うむ。そこで私が君たちの希望を叶えるためにささやかな助力をして差し上げよう」

「そこまでしていただけるんですか⁉」

「もちろんだとも」


 侯爵様は黒い笑みを浮かべた。


「ふたりには西部の鉱山で採掘をしてもらおう」

「え?」

「喜んでくれていいぞ?

 お望みの山を思う存分爆破して、現場の問題を解決してくれ」

「ワ、ワヒは行かんぞ! 行くならステハノだけじゃ!」

「ほう。そうなると、私はこの計画書を王に渡すことになりますが」

「くっ……」

「ああ、もちろんすぐにということではない。

 そうだな、夏休みがいいだろう。それなら仕事への影響もない。

 秋に君たちが戻ってきたら、無償で採掘を行ってくれた人物として国王陛下に報告せねばならんな。はっはっは!」


 実質鉱山送り。しかも夏の盛り。

 ……私の危惧など必要なかった。

 貴族っぽくない超体罰だけど、考えてみれば死刑にならないだけで十分だ。


 それに何より、上から野郎の呆然とするイケメンが最高!

 気分がいいので秋にボロボロになって戻ってきたら、研究室にボソボソの芋ようかんくらい差し入れてあげてもいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ