表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第3章 メインキャラについて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/28

目指すヤツ

 ジョゼはそのままの勢いで「もう無理」に至ったあれこれを語った。

 自身が貴族とは何のかかわりもない下町の食堂の末娘だったこと。

 来店した下っ端神官に指摘され、「ライト」だと思っていたのが光魔法だとわかったこと。

 教会の勧めで貴族の養子となったこと。

 養子になった先の家族がいい人であること。

 妹がオニかわいいこと。


 私が書いたのは「食堂の娘、教会の庇護、貴族の養子」の3点だけ。

 設定が甘いせいでジョゼがひどい目に会っていたらいたたまれないけど、家族周りに問題はなさそうだ。

 養子に入った家でいじめられてもいないし、実家にもちょくちょく顔を出しているみたい。

 熱心な教会信者だったりしたら面倒なことになるところだが、元日本人らしく信仰心もない。

 ホッとした。


 ジョゼの話は続く。 


 貴族教育をなんとか乗り越え、期待を胸に入園したこと。

 思ってたのと違ったこと。

 学園の空気に全く馴染めないこと。

 キモいやつが絡んでくること。

 ぶん殴りたいのを我慢してること。

 ウザいやつが絡んでくること。

 蹴り入れたいのを我慢してること。


「――なるほどねえ。そりゃ居心地悪いよねえ」


 あっちこっちに脱線する話を聞き終え、師匠はうんうんと頷いた。


「でも、ジョゼちゃんは貴重な光魔法持ちでしょ?

 だったら、もうちょっと自由にしてもいいとラモナちゃんは思うなあ」

「マジすか?

 でもジブンが好きなようにやったら、そのせいで父ちゃんクビになったりしないっすか?」

「うーん。わかんないけど、ジョゼちゃんががんばっていればクビにはできないと思うよ?」

「おお! じゃあジブン、明日ガッコ行ってウザいの締めるっす」

「それはやめて」


 黙って聞いているつもりだったのだが、思わず口を挟んでしまった。


「えー? だってラモナちゃん姐さん好きにしていいって言ったっすよ?」

「うん。だけど『今よりもうちょっと』っても言ったよね。あと、『がんばれば』って」

「一回だけならオッケーっつうことっすよね?」

「違います!」

「マジすか⁉」


 師匠、大ウケしてるけど笑い事じゃないから。

 大雑把なアドバイスを真に受けた武闘派元ヤンは危険だ。


「ラモナちゃん姐さん、具体的に説明お願いします」

「りょーかい」


 師匠が目尻の涙を拭って補修を開始する。


「あのねジョゼちゃん、明日ぶん殴るとお父さんクビになっちゃうかもよ?」

「それはダメっす!」

「だよね?

 だから殴るのはジョゼちゃんがもっと学園で認められてからだね。

 貴族はね、格下が暴れるとすぐ潰されるの」

「ああそういうことっすか。新入りがイキってたらとりあえず潰すっすもんね。納得っす。

 つうことは、ジブン家は子爵なんで男爵のヤツからコツコツと潰していけば……、良くないっすね」

「だね。わかりやすいけど良くないね。気づけて偉い!」


 師匠が笑いをこらえながら身を乗りだし、ジョゼの頭を撫でる。

 褒めて伸ばす方針にしたみたいだ。


「でも、姐さん」

「ラモナちゃん」

「あ、ラモナちゃん姐さん、そんじゃジブンどうやってテッペン目指したらいいんすか?」

「テッペン?」

「え? 違うんすか?

 好きにするには学園のテッペン獲ればいいんすよね?」

「え……?」


 師匠はポカンとした後に大きく頷いた。


「うん! それで間違いない!

 そうだね、ジョゼちゃんが狙うのは学園のテッペンだ!そうしよう!

 よーし、ラモナちゃん気合入ってきた!

 いっしょに頑張ろうね!」

「はいっす!」


 なんかヒロインの目的が、イケメン攻略じゃなくて学園を牛耳ることになったよ。


 ノリノリの師匠がジョゼに作戦を伝授している。


「最強の武器欲しくない?」

「オニ欲しいっす!」

「だよね? ジョゼちゃんの最強の武器は光魔法!光魔法を極めればジョゼちゃんは学園最強になれるんだよ。だって誰にもマネできないでしょ?」


 ラモナプランは、暴力に訴えるのではなく光魔法の修行を優先させるようだ。

 さすが師匠。絶妙な誘導だ。

 そして思惑通り、「学園最強」の響きは元ヤンの心をわしづかみにした。


「かっけー……!

 やるっす! 最強になるっす! そんでガッコで成り上がるっす!」


 ヒロイン成り上がり伝説……。

 作者の想定とは全然違うけど、もうそれならそれでよし!

 ていうかそっちの方が見たい‼


 理解した。

 現実のパトリツィアもジョゼも、私が作った設定よりずっと魅力的で、この子たちにはテンプレ恋愛劇のキャラなんか役不足なのだ。


 観客ポジをやめるつもりはないけど、乙女ゲーじゃない、登場人物たちが自由に紡ぐ物語が楽しみになってきた。


 話はどんどん進んで、いつの間にかジョゼは来年Sクラス入りを目指すことになっていた。

 Sクラス以外の定員は30人。ジョゼは今Bクラスの真ん中くらいだとすると45人以上を追い抜かなければならない。なかなかのハードルである。

 そして家庭教師はなぜか私だ。


「ラモナちゃんも学園に入って付きっきりで教えようかな」とか言い出したのでさすがに止めたら、「じゃあビアンカちゃんが指導係ね」って押し付けられ、「学園では絡まないので」となんとか押し戻した妥協点だ。

 場所は私の家。どうせ納豆ご飯食べに来るのでまあできないことはない。

 一応Sクラスだから、試験で点を取る方法はわかる。


 週末にはパンツィーリ家と行ったり来たりするのが定着してしまったので、火曜と金曜の放課後をジョゼの個人授業の日とした。納豆ご飯は火曜日に決まった。

 ジョゼは毎日来たがったが、毎日友だちの家で夕食っていうのはダメに決まってる。

「妹ちゃんが寂しがるよ?」って言ったらハッとした顔で納得した。


 そんなわけで、ジョゼは学園では当面貴族キャラを続けることになった。

「好きにするのは父ちゃんクビになんないくらい強くなってからっす」とのこと。


 隠密悪役令嬢パトリツィアに続き、元ヤンヒロインまでお嬢様の猫をかぶることが決まった。


 ジョゼは納豆とお米をお土産に、上機嫌で帰っていった。

「うちの子に腐ったものを食べさせて!」と怒られるんじゃないかと思ったが、本人が絶対大丈夫と言い張るので折れた。


 ジョゼのお義父さんは子爵。

 話を聞く限り身分を笠に着るような人じゃないみたいだけど、ナンチャーラ男爵の娘としては、近々ご挨拶しておいた方がいいかもしれない。


 翌日、休み時間にBクラスまで行ってそれとなくジョゼの様子を確認したら、何ごともなかったかのように貴族令嬢を演じていた。

 私に気づいて小さく親指を立てたので、やる気は衰えていないようだ。

 学園では他人のフリをするという約束も忘れてない。

 私の方から近づくのはどうかと思うが、そこは初日ということで。


「キモいヤツ」と「ウザいヤツ」についても確認した。

 ジョゼは名前すら覚えていなかったが、想像通りゲームの主要キャラだったので見ただけで誰かわかった。


 キモいヤツはファビオ伯爵令息。確か名前はジャンニ。王子の取り巻きの偉そうな子供だ。

 噂の光魔法持ちを王子の一派に取り込みたいっぽい。

 ビビリ王子が積極的に指示するはずはないので、多分独断で動いている。


 ウザいヤツは攻略キャラのニコロ。

 父親は将軍で爵位は侯爵である。内政を仕切るパンツィーリ家と同格だ。


 ニコロは、まんまチャラ男のノリでジョゼをしつこくお茶に誘っていた。ゲームのシナリオ通りだ。

 設定通りなら、父親との確執からくるストレスをナンパで発散させていることになる。


 ジョゼの対応は両者とも完全無視だった。

 次の授業の教科書から目を離さない。


 これまでの反応と違ったのだろう。

 ふたりとも微妙な顔で退散していった。


 なんかちょっとスッキリした。

 自分が考えたキャラだけど、あいつら嫌いだわ私。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ