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片魂の王と転生少女  作者: 夢小物
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ドクンド主席監査官


 第38章


 「ご自分の家門の利益の為にいらしたのでしたら、どうぞお帰り下さい」とパールはキッパリ宣言した。


 ドクンド主席監査官は『ふっ』と笑い話し始める。

 「いいえ、エスカーション公爵家の為ではありません。私が考えている事と、パール様が行う事が一緒でしたら協力を申し出る所存です」


 「私の憶測ですが、パール様は水の再生をお考えではありませんか?パール様は、メゾンドオリザボシ帝国の事を良く勉強なさっているとお聞きしまして、そうではないかと思いここに来ました」


 (ドクンド主席監査官、意外に勘がいい、モモホラ様から少し聞いただけで、半分まで正解して来た)


 「はい、メゾンドオリザボシ帝国の水源は限られていますので、下水の再生を考えています」

 「それは公園内に限ってですか?」

 「国中に引かれれば、それに越したことはないでしょうけど、エスカーション公爵家でも3割だとすると厳しいですね‥‥」

 「国中ですか?それは、とても大きな構想ですね」

 「わたくしはまだ若年で、時間はかかりますが水源の事業は、国が進めるべき事業だと思っています」

 「その為に、魔法塔には水属性の魔術師が多く在籍していますが、その辺りはどのようにお考えですか?」

 「魔法塔は、地方の干ばつ地にも魔術師を派遣しているのですか?それは素晴らしい事ですね」

 「‥‥‥」

 「国家は、王都内だけでは無いと言う事です。では、こちらからも質問しますが、エスカーション公爵家の嫡男はファルセット様でよろしいのですか?聞く所によりますと、妹君は優秀な水性の魔術師だと伺いましたが‥‥」


 ドクンド主席監査官が初めてパールの言葉に反応し、唾を飲み込む音が聞こえてくる。

 

 「主席監査官、わたくしは属性では水属性が最優秀であると考えています。モモホラ様の土属性の魔術は素晴らしいですが、生活に直結している訳ではありません。大量の資源、魔石、魔力や兵器があっても、人は水なしでは生きて行けません。それは、人間の体は水で出来ているからです。戦場に置いて、敵の体の水分を奪い取ればそれで勝利できるはずです」


 「パール様は、その様な事が‥‥」

 「しません!し、出来ませんけど、エスカーション公爵家門の方は可能ではないですか?」

 「‥‥‥」

 「パール様は、どこまでご存じか知りませんが、我が家門ではそのような事はあり得ません」

 「そう願っています」


◇◇◇◇◇◇


 ドアがノックされ、カメールがゆっくりと登場する。その後ろにはモンスールがお茶やお菓子を乗せたワゴンを押している。


 「ちょうといいです、どうぞ、これからわたくしが考えている浄化の仕組みを説明します」


 3人は『え?いいの?』と言う顔で互いを牽制しているが、パールは、静かに立ち上がり説明用のホワイトボードの前に立つ。


 ドクンド主席監査官は、落ち着き、席に着きパールの説明を聞く体制に入った。


 「では、説明を始めます。ドクンド主席監査官に手の内をお見せするのは、ドクンド主席監査官がこの国に忠誠を誓っていらっしゃると信用しているのと、後で収支が合わないと言われない為です。実は、公園の湖は、素晴らしい湖で汚水をもう一度あの湖に戻しても、綺麗な水になって供給されます。理屈は簡単で、湖の底に多くの魔石が蓄積しているからです」


 「わたくしの予測ですが、この場所に執着していたポリアンナ公爵家は、何世代か前は、膨大な魔力持ちだったのではないでしょうか?」


 「なぜ、そう思われるのですか?」

 「不自然に魔石が多い事、それも砂に交じり、湖に沈み、この地に残っているからです。すごく大昔の事で、王宮に入れないわたくしには調べる事は出来ませんが、この地で何があったのかは想像できます」


 遂に、ドクンド主席監査官がお茶に手を伸ばし、糖分補給の為にお菓子を口に入れた。


 「ポリアンナ公爵家は、国王陛下と同じくらいの魔力持ちが大勢いた名家でした。生まれて間もない子供も、遠い血縁でさえも誇れる魔力持ちの集団だった記録されています」


 「簒奪ですか?」

 「はい、しかし、その前に、我が家門がこの地で始末しましたと我が家門に記録が残っています」

 「そうですか、それでは現在のポリアンナ公爵家は‥‥?」

 「偽物でしょう。当時の事は皇族後継者にしか伝わらないので、内容は私にもわかりませんが、当時は、偽物でもいた方が良かったのかもしれませんね‥‥」


 「それでは、これは、わたくしからの提案です。実は、この公園予定地には多くの魔石が存在しています。それを利用して、地方にこの湖のようなダムを建設するのはどうでしょうか?汚水をもう一度、そのダムに戻すのです。この件はモモホラ様には言っていません。王妃になってから彼にはもう一件、違う提案をする予定ですから‥‥」


 「パール様は本当に優秀な方ですね」


 「そうですか、王妃になってからの足固めの事業と思って頂いて結構です。それで、ドクンド主席監査官は、今回発掘されたステッキについてはどう思われますか?やはり、ポリアンナ公爵家の狙いはステッキだったのでしょうか?」


 「陛下の側近として、お答えする事は出来ません」

 「そうですね、わかりました。所で、モモホラ様の要求は通りそうですか?」

 「はい、陛下に相談してからの返事になりますが、パール様の計画を実行に移す為にも必要だと認められるとおもいます」

 

◇◇◇◇◇◇


 ドクンド主席監査官が退出した後、3人はどっと疲れた。モンスールはお茶菓子を片付け、カメールは、しばらくホワイドボードを眺めている。


 「カメール、離宮の建設を急ぐ必要がありますね」


 カメールは振り返り、「そうですね」と呟き、自分の執務席に移って計画を練り直し廷るようだ。


 「設計図は明日までに完成させますから、人足たちの手配を始めて下さい。この際、基礎工事は、恩を売ったモモホラ様にお願いしましょう。その方が早く出来上がるので、彼を使いましょう」


 「モモホラ様は協力して下さりますかね?」モンスールは聞く、

 「大丈夫よ、もたもたしていたら、今度は、ソーラー様のヨロピン7公爵家が土地の求めに来て、近衛兵の詰め所や、訓練所などの建設ができなくなると脅せば大丈夫です」


 「そ、それは、大変、効き目がありそうですね‥‥」


 翌日、パールは、設計図の最終確認をして、カメールを待っていると、モモホラ様から快諾を頂いたと報告があった。その日からキナグリ公爵家の伝手で土魔法の使い手を集め、離宮と同時に近衛兵の為の建物の基礎をこっそりと始めた。


 こっそり行うには理由があり、他の公爵家、魔法塔に知られたくなかったので、日中の工事は、モモホラ様たちは参加を見送り、夜からのこっそり基礎工事に参加した。


 「昼間は、街中のカフェでのんびり過ごしたのですか?」

 「カフェにはいたけど、随時、連絡が来ていたからのんびりではないよ。それでも2、3時間はカフェテラスで時間を潰したからね。アリバイ工作は大丈夫だとは思うよ」


 「では、これからが本番ですね。よろしくお願いします」

 「僕の工事が終わった後は、資材の搬入もするの?」

 「はい、そうです。工事はひっそり行う為に、搬入は今後も夜に行います」

 「それは、なんだか‥‥わからないが、名案なのか?」


 「名案ですよ、モモホラ様、モモホラ様の門屋敷に、いきなりドクンド主席監査官がいらしたと想像して下さい。おもてなしは大変でしたよ!!」


 「ハハハハハ、そうだね、大変そうだね。誰にも気付かれず、事が進む方が良いかもね‥‥」


 パールの苦労を労うように、イチトスとメイド達は、夜中の工事現場でも明かりを灯し、お茶や軽食に気を使い、せっせと働いていた。


 休暇が半分過ぎた頃、大掛かりな基礎と資材の搬入が終了し、人足たちの昼間の工事が始まると報告を受け、これで少しゆっくりできると思った頃、ヨロピン7公爵が訪ねて来た。


 (あ~~やはり、来ましたね)

 


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