茉莉花
拍手お礼小話の加筆修正&再掲載です。
光視点の、仕事中の実にどうでもいい一コマです。
青柳がチラチラとこちらを──正しくは、私の隣にいるサキムニを見ている。
それは周囲の同僚も同じ。
皆、時折手を止めてはこちらを伺って来るのだ。
かくいう私も、ついつい彼を盗み見てしまう、呆れ顔で。
サキムニは机に突っ伏し、熟睡していた。仕事中であるのに、だ。
ビーストや所有者の違反行動を取り締まる我が保安課に、そもそも寝る暇などない。
実働部隊の私たちは日々外を走り回っているか、もしくはオフィスに待機して有事に備えている。
そして支援部隊の方々も、何かと多忙だ。
外部からの通信こそほぼ皆無であるものの、営業部等との連携は多い。それに問題行動を起こした、あるいは起こす可能性のあるビーストの行動管理等も行ってくれている。
それなのにサキムニのアホウサギは、机に頬を寄せて眠り呆けていた。
全く緊張感のないその寝顔に、青柳ですら怒っていいのか戸惑っているようだ。
机そのものが、カンパニー・ウィッカを兼ねた精密機械であるため、あまり涎を垂らさらない方がいいと思うんだけどな。
「……これで、いいんですぅ……」
藪から棒に、サキムニが呟いた。先ほどの、私の心の声が聞こえたとでも?
しかし顔を覗き込むも、相変わらず幸せそうに寝ているだけだった。
なんだ、寝言か。
それにしてもハッキリした寝言だな……等と思っていると、寝言にはまだまだ続きがあった。
「……これが、僕のポリシーなんです。頭は人間用のシャンプー、耳はウサギ用のシャンプーで洗うって。それが最も毛並みがふわふわになる、ベストな条件なんですよぉ。香りはそうですね……ジャスミンがお気に入り、かな……」
勤務中に、何言っちゃってんの、この子。
ちらりと青柳を伺うと、疲れた顔でゴーサインを出してきた。
「見ていて、かえってこっちが痛々しい。やれ」
「了解です」
一つうなずき、サキムニの片耳を引っ張る。
寝言で自慢するだけあって、確かにふわふわな毛並みだ。
なんと素晴らしい触り心地だろう。
だが、それとこれとは別。引っ張り寄せた耳に顔を近づけ、叱りつける。
「こらぁ! サキ、いい加減起きなさい!」
途端に彼は、跳ね起きた。
「すいません! コンディショナーもお願いします!」
しかしその際にも、洗髪へのこだわりを叫んでいた。
昨日、美容室にでも行ったのか?
いや、この子の場合はトリミングになるのだろうか?




