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魔王が世界を支配できない理由  作者: トリミング中の噛み犬


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第4話 二度目の敗北と情報交換

 レベルが31になったロッキーくんは再び地球の口、苦難の洞窟に向かい1人で挑戦をします。地下1階に出る魔物はすでにロッキーくんの相手ではありません。一撃で粉砕して快進撃を続けます。


 ですが、地下2階でちょっとした罠に引っ掛かってしまいます。宝箱から得られる強力な武器や防具は過去の勇者によって回収されています。開いていない宝箱は、宝箱の形をした魔物しかいないのです。


 それを知らずに開けてしまったロッキーくんは宝箱の魔物と戦闘に入ります。


 しかし彼はレベル31の勇者、宝箱の魔物を圧倒して戦いを優位に進めます。このまま勝負が終わるかと思いきや、宝箱の魔物が苦し紛れに即死魔法を唱えます。


 運が悪くそれが効いてしまったロッキーくんが倒れてしまいます。始まりの島以来の全滅になりますね。


 この洞窟のいやらしいところは魔物の魔法は使用ができるというところ、良く考えられて造られた洞窟です。僕に気付いた宝箱の魔物ですが、どうやら知能は高いみたいでそのまま閉じて動かなくなりました。


 相手の力量を見極めるのも長生きをする秘訣、危害を加えないのであれば僕も何もしません。ロッキーくんの遺体を抱え上げると、教会の神父の下に連れていきます。


 そして僕がロッキーくんを蘇生させると、神父さんに後を任せて教会の檀上の裏に隠れます。


 こっそりとようすを見ると、ロッキーくんが地面に拳を叩き、悔しそうな顔をします。後から駆け付けてきた心配そうな顔をした武闘家3人娘が現れると、笑顔になって軽口を言っています。


 想定外の失敗は誰にだってあります。そこから学べば良いのです。仲間に心配をかけまいと笑顔になれる彼はリーダーとしても素質は十分にあります。


 その後、再びロッキーくんが苦難の洞窟に挑戦します。


 今度は道中にある宝箱は無視して進み、難なく地下3階に無事に辿り着きます。ここで左右に分かれた2つの道が現れます。運命の選択の時間です。


 この先は情報も無く、ヒントもありません。慎重なロッキーくんは長く悩むだろうと僕は思っていましたが、悩むようすは無く金貨を一枚取り出します。それを指で弾いて真上に飛ばすと、手の甲で受け止めもう1つの手で上から隠すように抑えます。


 ゆっくりと手をどかすと、金貨は表を示していました。すると、迷わず右の道を進んで行きます。


 人の人生は時に理不尽な選択に迫られることがあります。情報も判断材料も無い、そんな時は運に頼るのも案外悪くはありません。常日頃から熟慮に熟慮を重ね、自分で判断してきたロッキーくんのような勇者には運も味方します。


 あえて言いますが、普段から運頼みの人は大事な所で運から見放されます。過信するのは止めておきましょう。


 地下3階には灰色の鎧を着た手強い魔物が現れますが、最早ロッキーくんの相手ではありません。時々壁から聞こえてくる、引き返せー、という唸り声にも動じず先を進みます。


 そして最奥の行き止まりには開いた宝箱と閉じた宝箱が2つ並んでいます。ロッキーくんが少し嫌な顔をしますが、その気持ちは僕にも分かります。


 勇気を振り絞って閉じた宝箱を開けます。その瞬間、ロッキーくんが両手を上げて喜んでいます。宝箱から悪魔の像を手に取ると、飛び跳ねて全身で喜びを表現しています。


 誰も見られていないから、解放的な気持ちになったのでしょうが、僕がしっかりと見ています。これも骨拾いの醍醐味の1つでしょうか。


 こうして重要な道具の2つ目を手に入れたロッキーくんは、最後の重要な道具、不死鳥の卵の所在について情報を集めていきます。道行く先々で村の人達を助けながら、話を聞いて旅を続けていきます。


 そこで偶然にも違う勇者パーティーと出会い、情報交換の場を設けることになりました。僕もその裏で後輩と久しぶりに会話をします。


 後輩の顔は自信に溢れていて、僕の知らない間に立派な骨拾いに成長していました。後輩の担当する勇者パーティーはすでに重要な道具を3つ集め終わり、魔王ズンマの城に乗り込む段階まで進んでいました。


 しかし、先に挑んでいた勇者パーティーが解散した話を聞いて、方針を転換したようです。


 強力な武器や防具を揃えないと、魔王以前に護衛の6つ首の竜ですら突破できないことが分かったからです。各地の王の下に向かい、協力を仰いでいるそうですが反応は思わしくないようですね。


 今の商人の力は国と同じくらいに力を持っています。元々、勇者の支給も支援も商人達の出資で成り立っていましたし当然でしょう。


 今回の勇者同士の情報交換によって不死鳥の卵の在り処を知ったロッキーくんですが、商人達が強力な武器や防具を独占していることも知ってしまいます。


 ロッキーくんが情報交換をした勇者パーティーと別れると、明るい内から宿に泊まり、仲間と話し合いを始めました。何やら真剣な顔で話し合っているみたいです。


 翌日、宿を出たロッキーくん達は一路、始まりの島へ戻って行きます。


 そして酒場ダリィースを訪れると、武闘家の女の子を1人預け、代わりに遊び人の女の子を仲間にします。遊び人というだけあって、バニーガールのような格好です。


 僕は何をしているのか全く理解できていません。なぜこの時期に強くなった仲間を外し、レベル1の遊び人を仲間に入れたのでしょうか。


 仲間に入れると、すぐにピラミッドのある砂漠の手前の大きな町まで瞬間移動の魔法で飛んで行きます。僕は混乱しながらも、ロッキーくんの後を付けて行きます。


 ロッキーくんは町に到着しても足取りに迷いがありません。そのまま防具のお店に向かうと、きわどいみずぎ、を購入します。これは見た目が変わるだけで、特別な効果は何もありません。


 ですが、きわどいみずぎ、だけは昔より値段が値下がりして安くなっています。どういうことでしょうか……。


 そのきわどいみずぎを、遊び人の女の子に手渡すとすぐに装備させます。言っておきますけど、防具のお店の試着室でですよ。


 着替え終わった遊び人を引き連れると、町の中を意味も無く歩き回ります。日が落ちるまで続けると、疲れたのか宿に宿泊しました。


 皆が寝静まった頃に遊び人の女の子が、外へふらふらっと出て行きます。遊び人なのでお酒でも飲みに行くのでしょうか。念のために後を付けます。


 僕はロッキーくんの目的が分からないままです。不死鳥の卵の在り処が分かっている筈。なぜそこへ向かわないのか、僕には妙な焦りが生まれていました。


 もしかしたら勇者になるのを諦めたのかもと嫌なことばかりが頭に浮かびます。


 すると酒場に居た遊び人の女の子に声をかける商人らしき人物が現れます。何かを交渉すると、商人が女の子の肩を掴み一緒になって酒場を出ます。そして空き家となった場所に2人きりで入って行きます。


 勇者パーティーの中にはこう言った色恋沙汰も起こるものですが、それは仲間内であって一般の人を巻き込むことはありません。


 出歯亀をする趣味はありませんが、骨拾いとして小窓から中のようすを窺います。部屋の中は真っ暗で何も見えません。聞こえて来るのは商人の情けない声と、遊び人の甘い声だけ。


 話を聞いているとどうやら商人の男は裸になっているみたいで、僕も顔を渋くしてしまいます。


 すると部屋に明かりが灯され、辺りが見えるようになります。そこにはロッキーくんと武闘家の2人がベッドを囲うように立っていました。


 驚いた商人が慌てて服を着ようとしますが、武闘家の2人の女の子に止められます。遊び人の女の子がきわどいみずぎを布で隠すと、わざとらしく涙目になります。


 因みに言っておきますが、未遂であることを付け加えておきます。


 するとロッキーくんが、今まで見せたことのないようなあくどい顔で商人を脅し始めます。


 そこで僕はようやくロッキーくんの目的を理解しました。


 彼は初めから商人を狙っていたのです。この町は以前から勇者をムニュムニュという非合法な行為で誘い、お金をむしり取る場所でも有名でした。


 その情報を思い出したロッキーくんが、この美人局を思い付いたのでしょう。


 こんな回りくどい方法を取ったのも、商人はこの町の支配者で、住人の顔を良く知っています。そんな住人の協力を得ても、商人は見向きもしないでしょう。


 だって次の日にはムニュムニュしたことが町の人に知られる訳ですからね。支配者というのは面子を重んじるものなのです。


 そこでロッキーくんは遊び人を新たなに仲間にして、商人にムニュムニュを仕掛けたという訳です。


 外から見ていた僕は、ロッキーくんがただの清廉潔白な勇者ではないことに驚きます。ですが綺麗ごとばかりでは、勇者にはなれません。


 時には親からの言い付けを破って部屋の壁を破壊して脱出したり、カジノで全財産を失い、生まれ故郷の亡くなった幼馴染の形見のはねぼうしを売って資金を作ることも必要です。


 希代の勇者というのは綺麗な表も、汚い裏も知り尽くす者と言われていますが、まさにロッキーくんがそれだったのです。


 ちなみにこの商人は世界でも有数の豪商、この痴態を知られては一生の生き恥となります。


 ロッキーくんが出した痴態を世間に広めない条件は、商人が持つ強力な武器や防具の貸し出し、魔王が討伐された後は返却するという、あまりにも優しい条件でした。


 もちろん商人に選択肢はありません、二つ返事をすると解放されます。


 翌日、条件を飲んだ商人が、ロッキーくんに武器と防具を供与します。契約書にサインをすると、瞬間移動の魔法で始まりの島へ戻って、遊び人に多くの金貨を渡し別れると、再度、武闘家の女の子を迎えいれます。


 これで魔王の護衛である、6つ首の竜の討伐の目途は立ちました。


 そして最後の重要な道具、不死鳥の卵があるという巨大な山脈に向かいますが、入口が見当たりません。そこで教えてもらった通りに山脈の麓にある毒沼で悪魔の像を掲げると、入口の階段が山脈の麓から出現します。


 これが勇者にとって最後の洞窟、地上から天にも届く山の頂上に続くことで、天地の洞窟と呼ばれています。


 出現する魔物も6本足のライオンや、守備力の高い大きな赤い亀、6本腕を持った骸骨剣士など、尋常ではない強さを誇ります。


 ですが、強力な武器や防具を手に入れた彼らは、向かう所敵無しという状態です。特に、らいじんの杖を武闘家に持たせ、道具として使用することで複数の魔物に魔法攻撃ができることになったのが大きい。


 剛力の盾は装備できなくとも、使用すれば回復魔法と同じ効果が得られます。以前と見違えるような効率の良い戦い方になってきました。順調に歩みを進め、とうとう最上階へ到達します。


 洞窟の最上階に辿り着いたロッキーくんは、周囲の景色を見て圧倒されていました。


 巨大な山の山頂を平にしたような幻想的な草原が広がり、眼下には雲が漂い、遠くの地平線が丸くなって見えます。まるで天界に居るような錯覚に陥ります。


 僕もこの景色は大好きです。数年振りに来てもこの素晴らしい景色に変わりありません。


 そして山頂にある小さな祠には、鍵穴の付いた宝箱があります。その鍵穴に至宝の鍵を挿し込み捻るとと、カチャと言う音を立て宝箱が開きます。


 ロッキーくん達が緊張した面持ちで宝箱から不死鳥の卵を取り出します。武闘家の3人も嬉しそうに見つめ、ロッキーくんの周りではしゃぎ始めます。ロッキーくんも笑顔を抑えるような、ぎこちない顔で卵をじっと見つめています。


 やれやれ、本当は嬉しいのでしょうに、女の子が居る手前、男らしく見せようと見栄を張っているのでしょう。


 これで魔王ズンマと戦う準備はできましたが、僕としてはとうとう、ここまで来てしまったかという思いです。彼らにとっては長く苦しい旅に感じたでしょうが、本当の辛さは魔王との戦いにあります。


 3つ目の不死鳥の卵を手に入れたロッキーくん達は、教わった通りに南の凍り付いた島で卵を孵化させて、不死鳥を誕生させます。


 見る見る内に大きくなった不死鳥の背中に乗り込むと、空を自由に移動できるようになります。もちろん、僕も飛んでいる不死鳥の足を掴み、ばれないように一緒に移動をしています。


 さあ、これでようやく断崖絶壁に囲まれた魔王ズンマの城に向かうのかと思ったのですが、再び川の入り組んだ村へ向かいます。そしてまた村を拠点にして経験値が豊富な水銀の魔物狩りが始まりました。


 勇者同士の情報交換で、解散した勇者のレベルをロッキーくんは聞いていました。レベル40で装備は汎用品、魔王の護衛である6つ首の竜に勝てなかった。そのことを知って予め目標を決めていたのです。


 なら、その倍のレベルまで鍛え上げれば、必ず魔王に手が届く。


 ロッキーくんは仲間にそう言うと、仲間達も納得して協力します。僕も長年骨拾いを続けてきましたが、ここまで慎重な勇者を見たことがありません。本当に驚かせてくれる勇者です。


 また僕に時間ができました。その時間を使って報告書に目を通したいと思います。

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